自動で車線変更、渋滞時は動画視聴も--世界初のレベル3自動運転車「レジェンド」に試乗 - (page 2)

手放しで車線変更、渋滞では動画視聴も合法な自動運転

 いよいよ試乗だ。高速道路へ入り、自動運転機能を体験する。

レジェンドの運転席
レジェンドの運転席

 ちなみに、Honda SENSING Eliteの自動運転に対応するのは、高速道路などの自動車専用道に限られる。首都高速の都心環状線のような一部の区間は非対応となっているが、それでも対応路線は全国の高速道路、自動車専用道の約9割に上る。なお、対応する道路は、ホンダのウェブサイトで公開している。

 まずは、自動運転レベル2にあたる、ハンズオフ機能を体験。渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)と車線維持支援システム(LKAS)が作動中、一定の条件を満たすことで使用できる。

 高速道路上で、ハンドルにあるACCのスイッチを押し、速度を設定すると、クルーズコントロールが機能する。システムが問題無いと判断すれば、ハンズオフ機能が作動し、手放し状態で運転できる。この際、メーターパネルには、車線や他の車など、周囲の状況が表示されている。

ハンズフリー機能を使用して走行している状態
ハンズフリー機能を使用して走行している状態
メーターパネルには、周囲の車両や車線などの情報が表示されている
メーターパネルには、周囲の車両や車線などの情報が表示されている

 また、ハンズオフ機能で走行中、自動で車線を変更する機能も有する。ハンドルのスイッチを押すことで作動し、前方に設定した速度よりも遅い車を検知した場合に、周囲の状況をシステムが確認し、自動で追い越し車線へ移る。もちろん、前走車を追い越した後の走行車線への復帰も自動だ。

自動で車線を変更する機能も有する
自動で車線を変更する機能も有する

 先述したように、これらのハンズオフ機能は、自動運転レベル2にあたる機能。あくまでシステムは支援の立ち位置で、運転操作に関する責任はドライバーにある。いくらHonda SENSING Eliteが高機能だとはいえ、この状況下で余所見をすると違反となってしまう。

 さて、Honda SENSING Eliteの真骨頂ともいえる自動運転レベル3の機能、「トラフィックジャムパイロット」の体験だ。

 ハンズオフ機能を使用して走行中、渋滞に遭遇した。時速30キロ以下となり、前後に車がいる状態になると、メーターに通知が。これでトラフィックジャムパイロットが作動したことがわかる。この状態では、運転操作の責任はドライバーからシステムに移り、ドライバーは余所見をすることが可能となる。

トラフィックジャムパイロットが作動している状態。ナビ画面での動画鑑賞が可能となる
トラフィックジャムパイロットが作動している状態。ナビ画面での動画鑑賞が可能となる

 ただし、法律上は余所見が可能だが、ホンダでは、すぐに運転操作に移れない行為は推奨していない。たとえば、スマートフォンの操作や読書など。居眠りはもってのほかだ。自動運転レベル3は、限定領域下での自動運転のため、システムから操作要求があった場合には、すぐに運転操作ができる体勢が必要なためだ。

 そのため、ホンダが自動運転中に可能なこととして挙げているのは、ナビ画面での動画視聴。また、目的地設定といったナビ操作も可能だ。

 渋滞を抜け、時速50キロを超えると、トラフィックジャムパイロット機能が終了し、システムが運転操作を求める。この際、メーターパネルやナビ画面には操作要求画面が表示されるほか、ハンドルやナビ画面上部などではオレンジ色の表示灯が点灯。通知音とあわせ、視覚・聴覚で訴える設計としている。

 最初の通知で操作を引き継がない場合、さらに警告音が鳴るほか、画面表示もより強い表現へ変わる。さらにシートベルトを数回引く操作で、ドライバーに注意をうながす。

 また、万が一これでも操作が引き継がれない場合には、システムはドライバーに異常が発生したと判断。緊急時停車支援機能が作動する。周囲にハザードとホーンで注意喚起を発しつつ、左車線へ車両を寄せて減速、停車。自動的にコールセンターへと接続する。

 トラフィックジャムパイロットが作動する際、自動運転レベル2から3の状態へと切り替わるのだが、この際には表示と音で知らせるのみで、スムーズに遷移する印象を受けた。一方、トラフィックジャムパイロットが終了した際には、ドライバーはハンドルを握る必要がある。その後に状況が許せば再びハンズオフ機能が作動するわけだが、トラフィックジャムパイロット作動時のように、何もせずにスムーズに、というわけにはいかない。ホンダの担当者によると、運転操作を引き継いだことを明確にするため、あえてこの手順を組み込んだのだという。

 現状のHonda SENSING Eliteは、高機能だが万能ではない。たとえば、ハンズオフ機能での走行中、車線の判別が難しい場所に遭遇したが、ここではハンズオフ機能が解除されてしまった。いくら複数のセンサーや高精度3D地図データ、GNSSを活用していようと、完全に人間の外界認識を代替しえるものではないのだ。

 とはいえ、Honda SENSING Eliteに不安があるわけでもない。国土交通省では、レベル3以上の自動運転車両が満たすべき安全性として、「合理的に予見される防止可能な人身事故が生じない」、つまり自動運転車が自ら事故を引き起こさないことを求めている。さまざまなセンサーを搭載し、さらに全国の高速道路130万キロを実走して開発したレジェンドの安全性は折り紙付きだ。もちろんシステムを過信すべきではないが、システムの作動中における安全性は、従来車よりも高いのだ。特に、渋滞という、退屈で、かつ注意散漫となりやすいシーンを自動運転に任せることで、防げたであろう事故の発生を予防することができる。

レベル2へ知見を活かし技術の普及を目指す

 自動運転に対応していない現行のレジェンドの価格は、およそ725万円。一方で、今回試乗した自動運転対応のレジェンドは、メンテナンスリースと形態が異なるが、価格は約1100万円。通常仕様車よりも400万円弱の差が付いている。Honda SENSING Eliteの開発に携わった、本田技術研究所 先進技術研究所 エグゼクティブチーフエンジニアの杉本洋一氏は、「レベル3の実現には冗長設計が必要」とし、センサーや電源などの二重系化によるコスト増加が避けられないと説明する。

先進的なレジェンドだが、リースでの販売価格は1100万円
先進的なレジェンドだが、リースでの販売価格は1100万円

 ただし、同社が2003年に世界で初めて量産車に搭載した追突軽減ブレーキは、当初は高価格だったものの、現在は同社の軽自動車にも採用されるほど、普及が進んでいる。将来的に採用車種が増えれば、コスト削減が実現でき、多くの車種への採用が期待できる。

 また、自動運転に関する技術開発は、従来のHonda SENSINGへも活かされる。「レベル2と3には大きな壁がある」(杉本氏)というが、車両周辺を監視して一連の制御を担う高度なシステムの開発で得た知見を、自動運転レベル3が求められないシステムへ活かすことで、レベル2の領域でも機能の拡張が実現できるという。

 「Safety for Everyone」をグローバルスローガンに掲げるホンダ。杉本氏は「この技術を普及拡大して、交通事故ゼロ社会を実現したい。そして全ての人に自由な移動の喜びを提供したい」とし、今回の技術の進化・普及を目指す考えを示した。

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