本田技研工業(ホンダ)は、世界で初めて型式認定を取得した自動運転装置搭載の新型「LEGEND(レジェンド)」を、3月5日に発売すると発表した。
レジェンドは、ホンダが発売するラグジュアリーセダン。今回発表した自動運転装置搭載グレードの「LEGEND Hybrid EX・Honda SENSING Elite」は、リース専用車種として販売する。価格は1100万円で、100台の限定生産とする。
このレジェンドが搭載する「HONDA SENSING Elite」は、これまでホンダ車が搭載してきた安全運転支援システム「Honda SENSING」の発展版となるもの。衝突軽減ブレーキやクルーズコントロールといった従来の機能に加え、限定領域で自動運転を実現する「レベル3」の自動運転機能を持つ。
自動運転のレベルは、1から5までの5段階に分類されている。このうち、システムが主体となるものはレベル3以上で、レベル1とレベル2の機能はドライバーが主体、システムは運転操作のサポートという立ち位置となっている。
これまでも、高速道路走行時や渋滞時におけるハンズオフ機能は他社の製品で実用化されていたが、これは自動運転レベル2までの段階に留まっていた。レベル2以下では、運転操作や周囲監視を全てシステムに任せることはできない。そのため、ハンズオフ機能が作動している最中でも、ドライバーはナビの注視のような「余所見」をすると、交通違反となってしまう。
一方、今回レジェンドが実現した自動運転レベル3では、一部の領域に限られるが、システムが自動運転操作を実行している間は、自動運転中にナビ画面の注視や画面での映像視聴といった、ドライバーの「余所見」が可能となる。自動運転を実現するHonda SENSING Eliteは、国土交通省より自動運行装置として型式指定を取得しており、これは世界初の事例となる。
Honda SENSING Eliteでは、ハンズオフ機能、トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)、緊急時停車支援機能といった機能を搭載している。
ハンズオフ機能は、高速道路や自動車専用道において、渋滞追従機能付のクルーズコントロール(ACC)と、車線維持支援システム(LKAS)が作動している際に、一定の条件を満たすと利用できる機能だ。ドライバーがハンドルから手を離した状態でも、システムが設定速度と車線を維持。自車より速度が低い前走車がいた場合に、自動で車線を変更し追い越す機能も持つ。
そして、このシステムの一番の特徴と言えるのが、トラフィックジャムパイロットだ。ハンズオフ機能付きのACC・LKASにより走行中に渋滞に遭遇した際に、ドライバーに代わってシステムが運転を引き継ぐ。この間はシステムが主体となって運転操作するため、ドライバーはナビ画面の注視や映像視聴などが可能となる。渋滞から抜け出た後は、自動運転機能は終了。ドライバーに運転操作を引き継ぐことになる。
自動運転操作を終了する際には、ドライバーは一旦ハンドルを握る必要がある。システムは自動運転を終了することを、メーターパネルやハンドル、ナビ画面上部の表示灯にて通知。反応が無い場合にはシートベルトを引っ張るなどして、ドライバーに操作を要求する。
それでもなおドライバーが操作を引き継がない場合、システムはドライバーに異常が発生したと判断。緊急時停車支援機能が作動する。周囲にハザードとホーンで注意喚起を発しつつ、左車線へ車両を寄せて減速、停車。自動的にコールセンターへと接続する。
なお、通常時のACC・LKAS機能と、渋滞時のトラフィックジャムパイロットは、ともに手放しでの運転を実現する機能だが、前者は自動運転レベル3としての機能に含まれない。そのため、このハンズオフ機能が作動している場合でも、前者の状況下ではナビ画面の注視やスマートフォンの操作といった行為は違反となる。
このシステムの開発に携わった、本田技術研究所 先進技術研究所 エグゼクティブチーフエンジニアの杉本洋一氏は、「レベル2と3の間には、乗り越える必要がある大変大きな壁がある」と説明する。
国土交通省では、レベル3以上の自動運転車両が満たすべき安全性について、「合理的に予見される防止可能な人身事故が生じない」こと、つまり自動運転車が自ら事故を引き起こさないことを求めている。杉本氏はこれを「自動運転を実現するための最大のチャレンジ」とする。
これを実現するため、新型レジェンドでは、車両周辺を監視するためのセンサーとして、ミリ波レーダーやLiDAR、カメラと3種類を搭載。冗長性を高めている。また、センサーによる周囲状況や、高精度地図、全球測位衛星システム(GNSS)による位置情報、ドライバー状態などを総合的に判断し、車両を制御する自動運転システム構成とすることで、安全性を高めている。
杉本氏は、今回のレジェンドは技術進化の象徴であるとし、今後はこの技術と知見を運転支援システムの領域へ活用することで、運転支援技術のさらなる普及拡大と技術向上を目指すと語った。
一方、自動運転機能については、最初はコストがかさみ搭載車種が限られてしまうと説明。しかし杉本氏は、衝突軽減ブレーキの同社初採用から広い普及まで約15年掛かったことを例に挙げ、レベル3の自動運転技術は将来必ず必要となるもので、普及するにつれコストは下がっていくだろうと述べた。
なお、自動運転技術の普及具合に関する質問に対しては、10年か20年後には普通の自動車へも搭載されてほしいと個人的な考えを語った杉本氏だが、「社会がどう受け入れるか、一人一人のお客様がどう受け入れるかを見ながら、今後の事業展開を検討していきたい」と、詳細な年度目標については明言を避けた。
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