Appleは、人気ゲーム「フォートナイト」の開発元Epic Gamesとの間で始まる裁判において、特に著名な幹部らを証人に立てる計画だ。最高経営責任者(CEO)のTim Cook氏、ソフトウェア部門を統括するCraig Federighi氏、AppleフェローのPhil Schiller氏に加えて、詐欺対策、支払処理の管理、「iPhone」向けアプリの開発者ツール開発に携わる従業員たちが証言するという。Appleは、証人全員が直接法廷に赴くとしている。
Appleは米国時間3月19日遅くに証人リストを提出し、その後に出した声明で次のように述べた。「当社の上級幹部らは、『App Store』が過去12年間にわたってイノベーションや世界経済、顧客体験に及ぼしてきた非常に好ましい影響を法廷で話すことを楽しみにしている。Epicは売り上げを増やすためだけに意図して契約違反を犯したのであり、そのためにApp Storeから同社の製品が削除される結果となったことが、この裁判で明らかになるとわれわれは確信している」
Epic側は、CEOのTim Sweeney氏をはじめとする幹部らを証人に立てて、同社のビジネスモデル、財務業績、「Epic Games Store」について説明する予定だ。また、Appleで「iOS」ソフトウェアの責任者を務めていたScott Forstall氏を呼び、モバイルデバイスとPCの違いや、App Storeのポリシーと慣行の歴史について証言してもらうとしている。
Appleが暫定的な証人リストを提出したことで、5月3日に始まる裁判に向けた両社の準備は最終段階に入った。両社はスマートフォンにおけるアプリストアの仕組みや、ユーザーがゲームなどのアプリでアイテムを購入した場合に誰がどの程度の利益を得るかをめぐり、法廷や公の場で争っている。
この対立は、ゲーマーが「フォートナイト」のキャラクターに使用できる新たなダンススタイル「エモート」や、バーチャル兵器の新しいスキンを購入した場合に、誰がいくらの利益を得るのかをめぐる、企業同士のスラップファイト(平手打ちの応酬)のように見える。Epicはこれを、独立を勝ち取るための闘いと考えており、Appleはアプリストアの仕組みの未来をめぐる対立と考えている。
Appleはアプリ開発者に同社の決済処理システムを使うことを義務付けており、ゲーム内で購入できる新しいキャラクター衣装などのすべてに対して最大30%の手数料を徴収している。EpicのSweeney氏はこの点を不公平だとしている。同氏はAppleへの書簡や、その後のAppleに対するEpicの訴訟の中で、開発者自身が決済処理の方法を選ぶことができて然るべきだと主張している。Sweeney氏は、Appleへの手数料を回避することができれば、その分の資金は割引として自社のユーザーに還元するか、次のヒット作の開発資金として開発者に提供できるとして、割引については実際に行った。
2020年8月、Epicが「iPhone」とGoogleの「Android」OSを搭載したデバイス上で「フォートナイト」アプリの隠しコードを有効にしたことで、この争いが激化した。この隠しコードにより、ユーザーは利用する決済処理システムを選べるようになり、Epicのシステムを利用すれば割引が適用された。AppleとGoogleは直ちに同ゲームを各アプリストアから削除し、これを受けてEpicはAppleとGoogleが市場における独占的地位を濫用しているとして訴訟を提起した。
世界中の政治家や規制当局は、AppleやGoogleなどの巨大IT企業による独占的な慣行と言われる行為を抑制するために、調査を開始したり規則を検討したりする傾向を強めている。これまでのところ成果は少ないが、今回の訴訟の結果は、判決が下る前に和解しない限り、問題への対処に取り組む各国政府のアプローチの仕方を変える可能性がある。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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