パナソニックは3月2日、真空断熱材とIoTを融合した保冷ボックス「VIXELL(ビクセル)」のレンタルサービス事業を開始すると発表した。スズケングループと協働で、医薬品やワクチンなどの定温輸送において、レンタル受付、予冷、指定先までの配送、回収までフルフィルメントサービスを提供する。サービス開始は4月。同日から申し込みを受け付けている。
VIXELLは、保冷ボックスの断熱層に継ぎ目のない一体成形の真空断熱筐体(VIC:Vacuum Insulated Case)を採用。冷気漏れを抑えた高断熱構造により、-75度±15度を最長18日間維持できる。一般的な真空断熱パネルと異なり、アルミフィルムを使用しておらず、通信用電波や磁界が透過できるため、VICには、非接触給電技術を用いた無線真空度センサーユニットを内蔵。専用の検査台にボックスを乗せるだけで真空状態を読み取れる。
これにより、断熱性能の良否を確認することが可能。さらに、ボックス内に温度やGPSなどのセンサーを設置すれば、開封することなくボックス内の状態も監視できる。
一体成形の真空断熱筐体は、パナソニックが60年以上に渡り培った冷蔵庫のものづくり技術をいかしているとのこと。筐体の中にはウレタン材料を使った芯材を開発し、強度を確保。緩衝構造により、落下しても箱が壊れにくい。
フルフィルメントサービス開始の背景には、コロナワクチンの接種体制をめぐる動向がある。超低温輸送が求められる新型コロナワクチンは、接種シミュレーションや医療現場の意見を取り入れ、接種体制が多様化。このニーズに応えるボックスやサービスの提供が求められている。
VIXELLは、VICの底面に無線真空度センサーを内蔵。さらにその中に保冷剤を6面に配置した蓄熱ユニットを入れる構造。真空状態は、専用の性能検査台にのせると非接触でVICに給電され、真空度データを受信することでわかる。
保冷ボックスは、8リットルサイズのSタイプと、26リットルサイズのLサイズを用意し、蓄熱ユニットは、ー75度±15度、ー20度以下、2~8度、15~25度の4タイプを用意。第1弾となるフルフィルメントサービスでは、2~8度のものを提供する。
「ファイザー製ワクチンが輸送に求められる温度に対応したラインアップを用意している。Sタイプであれば1000人分、Lタイプであれば5000人分のワクチン配送が可能になる」とパナソニック アプライアンス社事業開発センターシステムデザイン部主幹技師の小島真弥氏は説明する。
すでに保管輸送に使いたいなど、ワクチン関連企業などのからの問い合わせも入っているとのこと。常に正常な状態で使えるボックスを提供するため、販売ではなくレンタルの形をとっており、今後もレンタルにて提供する計画。この事業において、5年後に100億円を目指すとしている。
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