スマートフォンネイティブが見ている世界

コロナ禍で子どものスマホやゲーム利用時間が増加--視力低下をどう防ぐ?

 コロナ禍でスマホやゲーム機などのデジタル機器の接触時間が長くなり、それにともなって視力が低下する子どもが増えているそうだ。

 子どもを持つ母親を対象としたロート製薬の「コロナ禍における子どもの目の調査」(2020年10月)によると、コロナ禍において子どもについて気になることは、「運動能力の低下」(47.9%)、「視力の低下」(34.5%)などとなり、「学習能力の低下」(26.5%)を上回っている。

 新型コロナウイルス感染症の流行前、2020年1月頃と比較すると、18.6%が「視力が悪くなっている」と診断を受けたり、感じると回答。さらに小学生以上の子どもを持つ方では24.4%となんと約4分の1が「視力が悪くなっている」と診断を受けたり、感じると回答した。

 また、2020年1月頃と比較して、「デジタル機器接触時間が長くなった」と回答した方は55.2%と半数以上に。「動画配信サービス等を見る時間が増えた(31.4%)」、「家にいる時間が増えた(30.1%)」が主な背景となっている。学年が上がるにつれてこの傾向は顕著になり、小学生以上の子どもを持つ方はなんと60.8%が「長くなった」と回答。小学生以上では「5時間以上長くなった」は8.8%、「3時間以上長くなった」も18.5%おり、視聴時間が大幅に増加していることがわかる。

 デジタル機器の利用時間が増加し、近い距離のものを見る時間が長くなったことが、近視の子どもが増えた要因の1つと考えられている。子どもの視力低下に対して、家庭ではどのように対策をすればいいのだろうか。

デジタル機器対策は「20-20-20」

 文部科学省の「新型コロナウイルス感染症対策等について」(2020年10月)によると、2019年度は学校保健統計調査において裸眼視力1.0未満が、小学校で34.57%、中学校で57.47%、高等学校で67.64%など、過去最多となっている。小中学校は視力が大幅に低下する時期となっているのだ。

 日本では、健康診断で児童生徒の裸眼視力のみを測定するため、近視か遠視かなどのデータは存在せず、対策も取られていない状態だ。そこで現在、医療関係者の協力のもと、視力の実態を把握する調査を実施すると同時に、対策を検討している最中だ。

 近視は「近業」と呼ばれる30センチ以内の近い距離のものを見る時間が長くなると進行すると言われている。前述の調査でも分かる通り、今の子どもたちは在宅時間が長くなり、スマホ、タブレット、ゲーム機などデジタル機器に接する時間が増えることで、近い距離のものを見る時間は長くなってしまっている。

 対策として、米眼科学会は「20-20-20」ルールを推奨している。20分間継続して近くを見たあとは、20フィート、つまりおよそ6メートル以上離れたものを20秒間眺めるというルールだ。意識して遠くを見る習慣づけをすることで、視力低下の促進が防げる可能性があるのだ。

 ゲームやYouTube、SNSなどだけでなく、オンライン授業や学習コンテンツなどでデジタル機器を利用する機会もあり、現代の子どもたちがデジタル機器に触れる時間をなくすことは難しい。しかし、デジタルコンテンツの見方を変えることで目の疲れを軽減できる可能性はある。

 たとえばスマホやタブレット、ゲーム機などを利用する際、テレビ画面に映して視聴するという方法だ。テレビで居間で見ることには、子どもが視聴しているコンテンツを保護者が把握しやすくなるというメリットもある。

太陽光で視力低下の進行は防げる可能性

 眼科の国際ジャーナルに、コロナ禍で世界的に近視の増加に拍車がかかる可能性があるという警鐘が掲載されており、この問題は世界的な問題となっている。世界の近視研究においては、外で過ごす時間が減ったことが、近視急増の最大の原因という研究がある。太陽光に含まれるバイオレットライトが近視の予防、進行抑制に働くという研究も進んでいる。

 実際、台湾で行われた研究では、週に11時間以上、明るさ1000ルクス以上の光を浴びることで近視の発症が抑えられることが分かっている。台湾で、10年ほど前から小学校で2時間、屋外で過ごすようにしたところ、視力0.8未満の小学生が5%減ったという。太陽光をしっかり浴びることは、子どもの心身の健康に役立つとともに、近視の進行を防ぐ効果も期待できるのだ。

 「コロナ禍で外遊びがしづらい」という話はよく聞く。しかし、屋外で運動することは感染のリスクは低いとされており、制限もされていない。たとえば人の少ない時間帯に、外でサッカーの練習やランニング、キャッチボール、縄跳びなどをすることは問題ないのではないか。

 子どもの視力低下を防ぐためには、デジタルコンテンツの見方を変えたり、視聴時間を制限すること。子どもの日常に上手に屋外での運動を取り入れるようにすることが大切ではないだろうか。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]