クボタビジョン・インクは5月18日、ヒトを対象に、眼に光を用いた刺激を与えるアクティブスティミュレーションを用いた卓上デバイスでの効果検証を行なった結果、眼軸長(角膜から網膜までの長さ)が対照眼と比較して短縮したと発表した。
それに伴い、近視領域での需要を見込み、ウェアラブル近視デバイスの開発を加速させるという。
同社によると、2050年には世界の約半数の人が近視に陥ると予測されているという。特に、日本を含む、中国、香港、台湾、韓国、シンガポールといった東アジアの国々で近視が急激に増加。ソウルでは、19歳の男性の96.5%が近視というデータも示されているという。
また、2019年3月に文部科学省が発表した学校保健統計調査によると、小学生〜高校生の裸眼視力における1.0以上の割合が過去最低と発表されている。近視の進行により、緑内障視野障害、白内障、網膜剥離、黄斑変性などの疾患を合併するリスクが高まることも知られており、強度近視患者の増加は、大きな社会課題のひとつだが、未だ日本において、薬事承認を受けた治療法はない。
なお、近視は屈折性近視、軸性近視、偽近視、核性近視などに区分されるが、その多くは軸性近視と診断され、眼軸の伸展によりおこるとされている。眼軸長が伸びると、眼球の中で焦点が網膜より手前に位置づけられるために、遠くが見えにくくなる。
同社は、21〜32歳の被験者12名(アジア人7名、白人4名、ヒスパニック1名、男性9名・女性3名、球面屈折異常 -3.5D〜0.0D)に対し、アクティブスティミュレーションを用いた試作機の卓上デバイスにて、眼軸に与える影響を検証した結果、対照眼と比較し眼軸長の短縮を確認した。
通常眼軸長は、年齢と共に伸びるもしくは、成長が止まるものであり、人工的な光により眼軸長が対照眼と比較して短くなるということは、世界でも前例がないという。
同社では、このテクノロジーを「クボタメガネ・テクノロジー」とし、今後ウェアラブル近視デバイスの開発を加速する方針。なお、同件の詳細なデータに関しては、論文にて発表予定。
今後は、クボタメガネ・テクノロジーをスマートメガネ、スマートコンタクトレンズに応用し、実用化を目指す。クボタメガネについては、2020年後半に実証試験を終え、2020年内にプロトタイプを完成させることを目標とする。スマートコンタクトレンズの開発タイムラインについては、現段階では公表できないという。
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