「これについてテストを実施した信頼性の高い科学研究はほとんどなく、あったとしてもほとんど、または全く実効性が認められない」。Wykes氏はそう述べ、研究には多くのサンプルが必要だと指摘している。
BBCラジオの看板番組のひとつ、「Woman's Hour」は、10代の少女とソーシャルメディアに関する研究に番組枠を設けて放送した。心理学者や第三者の研究者、10代の少女を番組に呼ぶ代わりにBBCが選んだのは、45歳の男性著述家Matt Haig氏だった。自身が直接経験したメンタルヘルス障害についての著書はあるものの、10代の少女としてデジタル時代を実際に過ごした直接の経験は、もちろんない。
そのHaig氏が、10代前半の少女のメンタルヘルス障害とソーシャルメディアの利用との関係について堂々と語ったのだが、それは科学的な根拠に基づく話ではなく、たまたま知っていた何人かの少女を自ら観察した結果だった。
「私が知っていて関わりのある10代の少女たちは、年齢が12、13、14歳だったが、一定のメンタルヘルス障害を呈した。ソーシャルメディアの利用が増えたことが、偶然または間接的に関係していた」、とHaig氏は語り、のちにソーシャルメディアは「その頃の年齢グループでは中毒性物質にも等しい」と付け加えている。
Haig氏がここで話したことは、因果関係ではない。メンタルヘルス障害がソーシャルメディアの利用によって引き起こされると証明されたわけではないからだ。その2つが並行して起こったというだけで、科学的に有意な関連性はなく、相関関係と呼ぶべきものである。この問題を議論するときに陥りやすい落とし穴であり、親がどのくらい気をつけるべきかについて広く見られる混乱の原因にもなっている。
10代の少女に関するHaig氏の漠然とした一般論は、Woman's Hourの番組としての不備も露わにする結果となった。この問題を議論するのに、10代の少女を呼ばなかった、少なくともスマートフォンとソーシャルメディアの通知音がいつも身近にある環境で育ったという経験の持ち主を呼ばなかったからである。この件に関して、BBCの担当者からコメントは得られなかった。
後編に続く。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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