「SNSは10代のメンタルヘルスに悪影響」は本当なのか(前編) - (page 2)

Katie Collins (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2021年02月11日 07時30分

 「われわれのフォーカスグループ研究に参加した人たちによって、メンタルヘルスと情緒に関してソーシャルメディアにはプラス面もマイナス面もあることが明らかにされた」とCrenna-Jennings氏は話している。残念ながら、このことはほとんどの報道で紹介されていなかった。

 この研究と、研究コミュニティーからの反応をめぐる騒動は、ソーシャルメディアの利用がメンタルヘルスに及ぼす影響を理解することの難しさと、センセーショナルな、そして過度に単純化された見出しの結論に飛びつくことの危険性を改めて浮き彫りにするものだった。ケンブリッジ大学の研究フェローで、青少年とそのテクノロジーの利用について研究しているAmy Orben氏がTwitterで説明したように、この科学分野はまだ歴史が浅い。そして、研究のひとつひとつが構成ブロックであり、それを段階的に加えていくことでこのテーマの理解が進むのだという。

 そうした構成ブロックから、現状について複雑なイメージが浮かび上がっている。2019年8月、学術誌「Clinical Psychological Science」で発表された研究では、思春期の初期から中期までにデジタルテクノロジーを利用することと、メンタルヘルスとを関連付ける根拠はほとんどないとされた。そのわずか3カ月前には、別の学術誌「米国科学アカデミー紀要」で発表された研究によって、ソーシャルメディアの利用はティーンエイジャーの間で人生の満足度を測る良い指標にはならないと述べられたばかりだった。一方、「Nature」で発表された2020年の研究では、幸福感に対するソーシャルメディアの影響は、同じ10代といっても個人差があると指摘されている。

 同じく2020年に、アメリカ経済学会によって発表された研究は、ティーンエイジャーだけを対象にしたものではないが、異なる結論を示していた。米国の中間選挙が始まる前の4週間、Facebookへのアクセスを停止したところ、参加者の「主観的な幸福感は上がった」のだという。

 Crenna-Jennings氏も、その応答のなかで、EPIの研究がソーシャルメディアの利用とメンタルヘルスの関係を完全に説明しているわけではないと認め、こう語っている。「われわれの研究結果では、ソーシャルメディアと若者のメンタルヘルスとの関係について洞察を与えているが、分かっていないことはまだまだ多い。その関係の複雑さを完全に理解するには、もっと多くの研究が実施されなければならないと呼びかけている」

 そこに予想される関連性を突きとめたいと考えるのには、もっともな理由がある。例えば、過去3年の間に思春期のメンタルヘルスをめぐる障害の増加が記録されていることも、その理由のひとつだ。英国の国家統計局によると、若い女性の27%はメンタルヘルスの障害を抱えている可能性があると推定されている。だが、Wykes氏によると、ソーシャルメディアがメンタルヘルスの障害の増加について因果関係を有しているという証明は、かなり難航しそうだという。

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