水曜日の晩、ある部屋に数人が集まって植物の話に興じた。自分が育てている植物、育てたい植物、あるいは枯らしてしまった植物、そんな話だ。
「2週間前にアロエをもらったんだけど、もう枯れそう」と誰かが言った。
「枯れようがない植物も枯らしてしまう世界へようこそ」。別の人がそう応じる。
部屋に集まるといっても、コロナ禍での外出自粛を破っているわけではない。なにしろ植物を愛するような人たちだ。反抗的なタイプではない。これは、2020年春にローンチされ、最近話題になっている新しいアプリ、「Clubhouse」の中での出来事だ。
Clubhouseは、Paul Davison氏とRohan Seth氏が立ち上げた音声ベースのソーシャルプラットフォームだ。まだベータ版の段階で、限定的に公開されている。「room(ルーム)」に入って(あるいは、roomを作成して)、あるトピックの話を聞いたり、それに参加したりできる。スタートアップとしてのアイデアの売り込み方や、これからの結婚について、さらにはClubhouseにもう飽きてきたかどうかなどのトピックまである。roomには大抵、パネルディスカッションのように、スピーカーとモデレーターがいる。会話はリアルタイムで進むので、話題についてその場で他の人が意見をはさむこともでき、自分から手を挙げて議論に加わることもできる。
「世界中の人と一緒に教室にいるようなもの」と話すNatasha Scruggsさんは、ミズーリ州カンザス・シティ在住の弁護士で、数週間前からClubhouseを使っている。
Clubhouseは、ソーシャルディスタンスの確保と外出の自粛が新しい生活様式となった今の時代に、人々が互いにつながりたいと願う気持ちが形になった最新のSNSだと言える。だが、「Zoom」をはじめとするビデオ会議サービスが万人向けに広まった一方で、Clubhouseの最大の魅力はその比較的閉鎖的な性質と、有名人を引き込めるところにある。
それが常に良い方向で機能してきたわけではない。Clubhouseは2020年夏の間、The New York TimesのTaylor Lorenz記者にまつわる顛末でニュースの見出しを飾った。同氏の発言が発端となって、シリコンバレーの文化と、それをメディアがどう取り上げるかについて議論が巻き起こったのだ。そこから、会話に出てくるハラスメントや問題発言、例えば陰謀論や反メディア感情などをClubhouseがどう扱うかという、もっと深刻な問題が浮き彫りになった。
Clubhouseは、有名人が参加していることでも注目を集めている。俳優のJared Letoさん、Tiffany Haddishさん、映画監督のAva DuVernayさんなど、数多くの著名人が参加しているからだ。そうなると、ネット上でいやおうなく話題になるようなスキャンダラスな話題も付いてまわる。俳優Tom Hanksさんの息子のChetさんが、ジャマイカなまりの英語を話すという不可解な癖について非難されたとか、そういう話だ。
ミュージカル「ハミルトン」の一節を借りるなら、Clubhouseはまさに、「そういうことが起こる部屋(The Room Where It Happens)」なのだ。
Clubhouseは、音声ベースのアプリとして初めてというわけではない。Twitterにも、ユーザーが音声クリップを投稿できる仕組みはある。にもかかわらず、Clubhouseが今のような注目を集めているのには、複数の理由がありそうだ。そのひとつが、Clubhouseに感じられる閉鎖的な性質だろう。
「この閉鎖性は、当初から狙ったものではないだろう」。アナリスト企業、Altimeterの創業者でありシニアフェローを務めるCharlene Li氏は、こう語っている。
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