今日は社交的な1日だった。Facebookでは200人の友達が誕生日のメッセージを投稿してくれたし、猫が予備のトイレットペーパーを引き裂いてしまう動画もTwitterで数十回リツイートされた。Instagramに投稿した最新の自撮り写真には、たくさんの褒め言葉をもらったので、いつもよりも誇らしげに気取って歩く。それでも、孤独感としか言いようのない心の痛みを感じずにはいられない。
ほぼあらゆるものがインターネットでつながるようになった現代でも、このように感じるのは矛盾のように思えるかもしれない。だが、事実は明白だ。常にバーチャルでつながっていると、孤独感が増幅されるのは、よくあることなのだ。
「インターネット関連のテクノロジーは、外の世界とつながっている感覚を巧妙に与える」。そう語るのは、スタンフォード大学の精神科医で、心理学とテクノロジーの交わりに関する書籍を執筆したElias Aboujaoude博士だ。Aboujaoude博士によると、実際には、ソーシャルメディアの無数のつながりに費やされる時間とエネルギーは、より根強く、心から支えてくれる、本当に親しい関係を犠牲にして成り立っている可能性があるという。
もちろん、孤独感という、最も普遍的な人間の一種のありようは、私たちがフォロワー数を比較できるようになるずっと前から存在していた。小説家のThomas Wolfeは、「孤独というものは、これまでもずっと、そして常に、あらゆる人の中心にあり、避けられない体験である」と書いている。だが、研究によると、より多くの人がその影響を受けるようになっており、孤独感の蔓延について警告する者もいるという。少なくとも1人の科学者が、その苦しみを和らげる錠剤の開発に取り組んでいる。
私たちが孤独を感じるのは、テクノロジーだけのせいではない。気質やメンタルヘルスのほか、遠く離れた場所への移住や転職、離婚、愛する人の死など、孤立を引き起こす出来事も非常に大きな要因になっている。さらに、因果関係と相関関係の問題もある。つまり、私たちが孤独を感じるのはオンラインで長い時間を過ごしているせいなのか、それとも、孤独を強く感じるようになったので、オンラインで長い時間を過ごしているのか、ということだ。
しかし、専門家によると、私たちのテクノロジーとの関わり方が孤独な体験を形作っていることは否定できないという。テクノロジーは、外の世界とつながっているという幻想を生み出すだけではない。その関わり方に無限の可能性があることによって、孤独への耐性が低下する一方、つながりの数や速さ、頻度に対する期待を高めてしまう。
ユタ州オグデンにあるウィーバー州立大学の歴史学教授で、感情の歴史を専門とするSusan Matt氏は、次のように述べている。「私たちの文化では、成功したければ、膨大な人脈が必要という考えが強いられるようになった。こうした考え方が出てきたことで、1人でいる体験がさらにつらいものになっている。私たちの祖父母や曾祖父母は、Facebookで平均338人の友達を得ることなど考えてもいなかった」
Matt氏は、ウィーバー州立大学でコンピューティング教授を務めるLuke Fernandez氏との共著で2019年に出版された書籍「Bored, Lonely, Angry, Stupid: Changing Feelings about Technology, from the Telegraph to Twitter(感情とコミュニケーション技術の変容:電信の時代からソーシャルメディアまで)」において、テクノロジーと感情のつながりを考察している。手紙や日記、回顧録を調べたところ、Facebookが存在しない時代に生きた私たちの先祖たちも、持つべき友人の数に対する期待は控えめだったが、孤独を感じていたことが分かった。また、彼らは孤独感について、人間である限り避けられないものだと考えていた。
私たちの先祖は、Instagramにうってつけの休暇の写真や、ただただ可愛いばかりの子供たちについての投稿を見せつけられることもなかった。多くの調査で明らかになっていることだが、ソーシャルメディアは、うつや劣等感、孤立感などの感情を引き起こす。巧妙に加工され、編集された他人の生活と自分の生活を比べるようになるからだ。
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