スイスのチューリッヒ大学(UZH)とオランダのデルフト工科大学(TU Delft)の研究チームは、クアッドコプターのローターが1つ壊れても、衝突や墜落させずに飛行継続させる技術を開発した。2種類の搭載カメラからの映像を利用することで、機体の位置を正確に把握し、飛ばし続けられるという。
4つのローターを回転させて飛行するクアッドコプター型ドローンは、あるローターを回すモーターが故障したり、衝突などでローターが破損したりして正常な揚力を得られなくなると、安定せず「バレリーナのように」(UZH)高速回転を始めてしまう。そうなると、制御不能のまま衝突や墜落に至って危険だ。GPSを利用して機体の位置が検出できれば制御は可能だが、GPSに頼れない状況は多く、根本的な解決にならない。
研究チームは、ドローンに2種類の異なるカメラを搭載。それらからの映像を解析することで、周囲と機体との相対位置関係を把握する技術を開発した。これにより、4つあるうち3つのローターしか正常に回転しなくなったマルチコプターでも、回転は止められないものの、ある程度の安定性を維持したまま飛行継続させられる。GPSの信号が得られない環境でも、自律飛行が可能だ。
搭載するカメラの1つは、1秒間に複数回といったように、一定の時間間隔で画像を取得していく通常のカメラ。もう1つのカメラは、各画素の捉えた光に変化が生じたときだけ機能するカメラで、研究チームは「イベントカメラ」と呼んでいる。両カメラからのデータを組み合わせて解析するアルゴリズムを開発したことで、高速回転中も周囲に対する機体の位置を適切に取得し、飛行を継続できたという。
ドローンが高速回転してしまうと、撮影や運搬といった本来の目的は果たせなくなる。しかし、そのような場合でも、この技術を使えば衝突や墜落を回避して安全な場所に着陸させられるので、リスクを下げられるだろう。
研究の紹介ビデオ(出典:UZH/YouTube)
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