私たちは脱出ゲームの空間に立っていた。ひとりがターゲットに向けてブロックを誘導しようと、壁の向こうで操作盤の前にいるもうひとりと相談する。この世界には筆者のほかに米CNETの同僚であるJoan Solsman記者もいるが、現実ではもう何カ月も会っていない。おもしろくも奇妙な感覚で、たぶん現実の脱出ゲームでやったのと同じようなことをやっている。実際、没入型の劇場や脱出ゲームの仮想現実(VR)もあるが、Facebookが作っているのは独自のびっくりハウスのようなものだ。それが「Facebook Horizon」という、カラフルで創造的、見た限り広大に広がるこの世界なのだ。競合するのは、Microsoftの「AltspaceVR」や「VRChat」「Rec Room」だろう。無料だが、「Oculus Quest」および「Oculus Rift」専用で、招待制のベータ版について申請を受け付けている。そして、まだ疑問点がたくさんある。
私たちが初めてFacebook Horizonを体験したのは、1年前の「Oculus Connect」開催時のことだ。Disneyっぽい明るい世界で、プライバシーと安全性がどう確保されるのかという点は不明だった。それから1年間でいろいろなことが変わってきた。誰もが、あらゆる形態が登場してきた仮想現実アプリを使うようになり、「フォートナイト」や「どうぶつの森」シリーズ、「Roblox」などのゲームでも独自のVR世界が広がっている。とはいえ、FacebookがHorizonで目指すことはほとんど変わっていない。
Facebookの年次AR/VRカンファレンスが近く開催される。名称がOculus Connectから「Facebook Connect」に変わり、同社はVR事業の目標を練り直しているようだ。Facebook Horizonがその中心になっているらしく、不思議にも今までFacebookのVRに存在しなかったソーシャルなハブのような役目を果たすことになる。「Facebook Spaces」や「Oculus Rooms」「Oculus Venues」などのソーシャルアプリも登場してきたが、Facebook Horizonはもっと構想の大きいソリューションになる可能性がある。
Facebook Horizonの責任者はAltspaceVRの創業者で、雰囲気も似ている。マンガのようなアバターを作成し、「ロビー」つまりハブの世界に飛び込める。だが、「Minecraft」やRobloxのような雰囲気もある。何かを作って共有できる機能は、明らかにゲームプレイと体験の創出のために作られており、この機能によって、テーマ別にエリアが分けられた遊園地のような雰囲気がFacebook Horizonにもたらされる可能性がある。
短時間の体験だったが、Facebook Horizonの世界の中にある創作ツールで作った空間をいくつか見ることができた。最初に体験したのは「Balloon Bash」という風船射撃ゲームで、迷路のようなマップを走り回りながらターゲットを狙い撃つ。次に入ったのが、「Interdimensional」という脱出ゲームのような世界で、ここでは時間制限のあるパズルで競った。実に楽しいゲームで、Facebook Horizonがマルチプレーヤーの競う世界になれることを、もっと強く実感できた。
その次には、創作ツールを使う空間に集まったのだが、何とも奇妙なことになってしまった。Facebook Horizonは比較的簡単ですぐにできる創作ツールを目指しており、私たちは広大な建築スペースで雪だるまを作ろうとした。Facebook Horizonで特に面白いのは、この創作モードになるとオブジェクト(およびアバター)を拡縮させられることだ。私たちは神のように大きくなったり、アリのように小さくなったりしながら、モデルを作っては、小さくなってその中に入ったりしてみた。遠近感がおかしくなってしまった。
雪だるまを作り、自分のアバターにひっつかませて踊り回った。その操作をつかむまでが少し難しく、ツールが妙に複雑に感じられることも時々あった。加えて、バグもいくつかあった。アバターを編集しようとするとロビーにはじき出されるとか、Facebook Horizonの中で友だちになろうとするとアプリを終了して再起動する必要が生じるといったバグだ。奇妙な動作だった。
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