来週の「CES 2021」がオンラインのみの開催となったことで特に残念なのは、Googleの派手なブースがないことだろう。「Googleアシスタント」関連の多種多様な発表に興味を持ったかどうかはともかく、Googleが手がける演出には抗しがたい魅力があった。
Googleはここ数年、2019年のテーマパークの乗り物風や2020年の脱出ゲーム風など、CESで最も目を引くブースを展開してきた。CESに大規模ブースを構えるサムスンやLGなど他社とは異なり、Googleはラスベガスコンベンションセンター前の駐車場に、大抵は巨大な「アトラクション」を設置することを選んだ。それ以降は、駐車場が人気のブース設置場所になった。
Googleのブースは主として、Googleアシスタントの長所を売り込み、重要性を強調するものだった。その背景には、「Echo」シリーズのスマートスピーカーのおかげで先んじたAmazonの「Alexa」から、Googleがシェアを取り戻そうと躍起になっていた事情がある。GoogleとGoogleアシスタントは、過去のCESでデジタルアシスタントをめぐって争いを繰り広げる競合たちの一角だった。派手なブースが設置され、パートナー各社は、それぞれのアシスタントが新しいテレビや車、その他のガジェットに組み込まれると発表した。
だが、継続する新型コロナウイルスのパンデミックに対応してCESがオンライン開催となり、CES常連の最大手企業の多くは出展を控えている。広報担当者によると、GoogleはCESでパートナー会議を予定しているが、大きく目立つようなものはないという。Googleだけではない。主催団体の全米民生技術協会(CTA)によると、オンライン開催のCES 2021への出展企業は約1000社で、2020年の4分の1を下回る見込みだという。
それでは、これまでGoogleがどのようなものを出展してきたか、その一端を振り返ってみよう。
Googleアシスタントを宣伝しようとするGoogleの目論見は、Googleアシスタントを利用しなければ脱出が不可能なエスケープルーム(まさに囚われのオーディエンスだ)を設置したCES 2020でピークに達したようだ。Googleはこの年、ラスベガスコンベンションセンターの駐車場に2階建てのびっくりハウスを建て、存在感を示した。このびっくりハウスには、CES開催期間を通じて長蛇の列ができた。
エスケープルームの設定はこうだ。参加者は投資家たち(いかにもシリコンバレーらしい設定だ)と一緒に夕食を楽しもうとしているが、その投資家らがある料理(ベーコンとブリュッセル産ブッラータ・ディ・ブファラのリゾットブリトー)をご馳走してほしいと言い出す。そこで、参加者はいつものようにGoogleアシスタントを使って、市場へ行き、オーブンを予熱して、夕食用の音楽をかける。
体験には、車の中でGoogleアシスタントを使うことも含まれていた。
これは、GoogleがCESに初出展して以来の人気を博した。このわずか1年前には、BMWが同じ駐車場で来場者にドリフト体験を楽しんでもらっているように、この展示会はクレージーなアトラクションでも知られる。そこにGoogleは、冗談のような乗り物アトラクションを通じて自社版の「イッツ・ア・スモールワールド」を持ち込み、どの出展企業よりも注目を集めていたかもしれない。
ただし、Googleの姿勢は真面目すぎた。アトラクションに乗り込むと、Googleアシスタントは歓迎の挨拶として、この仕掛けが「乗り物でもあり、マーケティング行為でもあります。お互い正直にいきましょう」と紹介した。とはいえ、この楽しい乗り物は、展示会の開幕に合わせて発表されたGoogleアシスタントの通訳モードをアピールするものでもあった。
2019年は、Googleがその存在を知らしめることにもなった。Googleアシスタントを起動するウェイクワードの1つである「Hey Google」の広告を、コンベンションセンターの主要出入口の付近や、会場と大通り「ストリップ」のカジノの多くを結ぶモノレールを含め、ラスベガスの至る所に掲出していたからだ。
Googleはこの年の展示会で、多くのサービスを発表した。これにはたとえば、レノボが作った新たなスマート置き時計や、デバイスメーカーが製品にGoogleアシスタントを組み込みやすくなる新たなプラットフォームなどが挙げられる。
Googleは、大規模なブースの展開に乗り出そうとしていた。その一環として、Googleアシスタントが搭載されたさまざまなデバイスを複数の部屋で展示し、最後は3階から、らせん状の滑り台で下りられる構造になっていた。今考えると、乗り物アトラクションに負けないくらい奇妙にも思えるが、当時は話題を集めた。
巨大なブースは重層的な造りになっており、内部にも小型ブースが数多く設置されていた。電話ボックスの形をしたブースに入ると、それぞれが小さなアートプロジェクトとして、音楽の再生からトリビアクイズの回答まで、Googleアシスタントの機能を体験できた。
この年は、GoogleがCESで初めて大々的な展示をした年になった。
この年の展示会では比較的目立たない存在だったが、それも理解できる。この年は、GoogleがGoogleアシスタントを搭載した最初のデバイスであるスマートスピーカー「Google Home」を発表して最初のCESだった。Googleは大規模な展示を行う代わりに、提携関連の発表が注目を集めるようにして、AmazonのAlexaに対抗する取り組みを加速させていく意向を示した。Belkin、ヒュンダイ(現代自動車)、Fiat Chrysler Automobiles(FCA)、NVIDIAなどの企業が揃ってGoogleアシスタントをサポートすることを発表した。
当時のGoogleアシスタントは今よりも新奇な存在で、プロジェクトに近いものだった。今では「Android」スマートフォンやますます人気上昇中のスマートスピーカーに組み込まれ、当時に比べてはるかに普及している。Googleアシスタントはより重要な役割を持つ製品となった。仮にCESが対面のイベントであり続けたなら(この状況下ではひどいアイデアだろうが)、Googleはまた注目を集める催しをやってのけたことだろう。
CES 2021では、Googleの新たな試みが見られるだろう。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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