松村太郎のiPhone 12レビュー--星空もきれいに、iPhone 11から変わったこと

 前回に続くiPhone 12レビュー。今回は、iPhone 12のカメラ機能についてお伝えしたい。まずはじめに断っておくと、iPhone 12のカメラを評価するには、もう少し時間が必要だ。11月13日に発売されるiPhone 12 Pro Maxには、他のiPhone 12シリーズとは異なるカメラが搭載されているからだ。これについては、改めてレビューすることにしたい。

 
 

 テクノロジーの進化は段階を経て、少しずつその成熟が進んでいくことが多いが、iPhone 11のカメラはコンピュテーショナルフォトグラフィーの強化によって、「非線形」という表現がふさわしい進化を遂げた。特に「次世代のスマートHDR」によって、シャッターを押した瞬間、複雑なテクニックを用いて合成しなければ得られなかった、明暗のレンジが広く、色再現豊かな写真が得られるようになった。

 iPhone 12シリーズのカメラ性能は、iPhone史上最大の進化と言える。その理由について、作例を伴いながら、じっくり考えていこう。

カメラシステム

 iPhone 12には、超広角と広角の1200万画素カメラが備わる。これはiPhone 12 miniでも共通だ。iPhone 12Proにはこれに加え、1200万画素の望遠カメラが備わり、広角カメラの2倍ズームできる。さらに、LiDARスキャナは、暗いところでのオートフォーカスに用いられる。ちなみにiPhone 12Pro Maxは、この望遠カメラが更に拡大されており、広角カメラのセンサーサイズ拡大、センサーシフト式の手ぶれ補正が加わる。Pro Maxは全く別のカメラ、と認識すべき理由だ。


 iPhoneは複数のカメラを束ねた『カメラシステム』を標榜する。広角カメラで構えると、写真の周辺視野が表示されることに気づくはずだ。これは超広角カメラも動作していることを表しており、写真を撮ってから、写っている範囲の外側の被写体も写真に収めたいという、普通の写真ではあり得なかった編集も、一定期間内であれば簡単にこなすことができる。

 しかしそれだけではない。メインで選択していないカメラは、光やトーンなど、被写体分析など、写真を的確に撮影するための情報収集を行うべく、動作し続ける。これが、Appleが「カメラシステム」と言っている理由だ。1つよりも2つ、2つよりも3つのカメラを搭載している方が、単に広角カメラで写真を撮る場合であっても、より良い分析を活用した結果を得ることができる。

光学的な進化

 iPhoneのカメラは、複数カメラで構成されるカメラシステムと、Aシリーズチップによる強力な演算能力を生かしたコンピュテーショナルフォトグラフィーの強化によって、非線形の進化を実現している。

 シャッターを押した瞬間の画像処理で良い写真を作り上げており、カメラ専用機でiPhoneと同等の演算能力を内包することは、もはや現実的ではなくなった。A12 Bionic頃から、Intel Coreシリーズのプロセッサと同等の処理性能を持つようになり、GPUや画像処理プロセッサ、機械学習処理を行うNeural Engineなども強化が続いているからだ。

 しかし、カメラの優位性は、光学的な部分にある。より大きなセンサーサイズ、より明るいレンズ、より望遠が効くレンズなど、ミラーレス一眼は光学性能で大きくスマートフォンと差別化できる。そうした光の入力なくして、高画質化には限界がある。そのこともAppleは分かっている。

 だからこそ、iPhone 12の広角カメラには、これまでのF1.8より明るい、F1.6のレンズを組み合わせた。一般に、F値が小さくなると、よりたくさんの光をセンサーに届けることができる。同じシャッタースピードであればより明るく写り、同じ明るさに映したければ、シャッタースピードを高めることができる。

 このことは、まず暗所性能の向上に寄与する。暗いところでもシャッタースピードを落とさなくて済むため、手ぶれしにくくなるからだ。実際、大手町で夜撮影したビル群は、ナイトモードなしで十分な明るさを映し出すことができたし、神田の商店街でも、より大きなサイズのセンサーを搭載したカメラのように、鮮やかな発色の看板を写し取ることができた。

 
 

 明るいレンズはコンピュテーショナルフォトグラフィーの強化にも有効だ。プロセッサ側で必要な枚数に限りがあり、1秒間に1000枚もいらないかもしれないが、1秒間に60枚の画像が得られる明るさの範囲が拡がることは価値がある。

 またF値が小さくなると、レンズ自体のボケ身を大きく採ることができる。手元にある近い被写体にピントを合わせたとき、背景iPhone 12の広角レンズ自体の背景ボケを見ることができる。ただし、小さなレンズのことだ。そのボケ味自体に美しさを期待しない方が良い。なんとなく、散らかってしまっている印象だったからだ。

 
 

 その点、iPhone 12シリーズにはポートレートモードがある。背景を美しくぼかしたかったら、ポートレートモードを使った方が良い結果が得られる。

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