AppleはiPhone 12シリーズを10月23日より販売開始した。例年から1カ月遅れ、第1弾となるiPhone 12は6.1インチ有機ELディスプレイ、新しいデザイン、5G対応、より明るく改善された広角カメラ、省電力性と処理能力を高次元で両立させる「Apple Silicon」A14 Bionic、高速ワイヤレス充電とアクセサリ活用の新しいインターフェイスMagSafeといった特徴がある。
また同時に発売されたiPhone 12 Pro。こちらはより高品質の有機ELディスプレイ、望遠カメラを含む3つのカメラシステム、ARでの空間把握や暗所オートフォーカスの高速化を実現する。iPhone 12と同じサイズのボディ、ディスプレイで、より高級感ある光沢豊かなステンレススチールが採用されている。
おそらく日本のiPhoneユーザーの多くは、よりサイズが小さなiPhone 12 miniの登場を待っているかもしれない。筆者もその一人だった。しかし、iPhone 12に触れてみて、持った瞬間「あ、これか」という納得感があった。そんなデザインを中心に、iPhone 12を見ていきたい。
iPhone 12は、新しいデザインで登場した。それまで丸みを帯びていた側面は垂直に7.4mm立ち上がり、フラットでシンプルな「板」のデザインへと変更された。
ボディカラーに染められたガラスの背面、その色とマッチしたアルミニウムのフレームは、滑らかな表面加工が施され、サラサラとした質感を感じ、指紋はつきにくくなっている。抗菌加工のそれとは異なるが、指紋がベタベタついてしまう光沢あるステンレスのiPhone 12 Proよりも、日々使うものとして適した加工だと感じた。
「全く新しいデザイン」と表現するのを躊躇するのは、メタルフレームと前面・背面がガラスになっているデザインが、iPhone 4・iPhone 4sで、側面が垂直に立ち上がっているのが、iPhone 5、iPhone 5s、初代iPhone SEで採用されたデザインだったからだ。
さらに加えて言えば、iPad Pro、iPad Airも、側面は丸みを帯びない、キリッとエッジが立った板状のデザインを採用している。その点で言えば、Appleのモバイルデバイスは、MacBookシリーズ以外、同じ意匠に統一されたことになる。
こうした板状のデバイスに行き着いてしまうと、デザインとしてこのままの進化はやりようがなくなる。出っ張りをなくす、薄くする、といった流れになっていくのではないだろうか。もちろん、薄すぎても持ちにくくなるかもしれないが。
iPhone 12を、同じディスプレイサイズを持つiPhone 11の後継モデルと位置付けると、新デザインとともに際立つのがその軽さだ。
iPhone 11は194gと重量級であったのに対し、iPhone 12は162gしかない。32g、実に16%の軽量化を実現しているのだ。ちなみに同じ画面サイズのiPhone 12 Proの187gと比べても25g軽く作られており、この2台を持ち比べてみても、iPhone 12の軽さは歴然としている。
同じ画面サイズを維持しながら、有機ELディスプレイである「Super Retina XDR」を採用したことで、軽量化に寄与している。ディスプレイそのものも薄くできることはもちろんだが、同じ17時間のビデオ再生というスペック上のゴールを実現する場合、ディスプレイの省電力化で搭載するバッテリーを減らすことができる。
結果として小型薄型化もその価値となる。iPhone 12の寸法とiPhone 11との比較は、
- 高さ146.7mm(-4.2mm)
- 幅71.5mm(-4.2mm)
- 厚さ7.4mm(-0.9mm)
前述の軽さと相まって、iPhone 12 miniを待っている人も、iPhone 12の握り心地に「これで良いかもしれない」と感じる人も少なくないはずだ。
iPhone 12 miniは5.4インチディスプレイで、厚さは同じだが幅は64.2mmしかなく、iPhone 12より7.3mm、iPhone 11と比べると11.5mm小さい。1cm以上も小型なのだ。もちろん小さなiPhoneを持 っていた人にとっては、世界で最も小さな5G対応スマートフォンは魅力的だ。
しかしスマートフォンで普段から映像視聴をしたり、メールやメッセージなどほぼ全てのコミュニケーションが集約される場合、画面サイズに余裕があり、バッテリー持続時間も2時間ながりiPhone 12のメリットも捨てがたい。
iPhone 12シリーズは、スマートフォンにおける大きな問題点の改善に取り組んだ。それは画面が割れてしまうという点だ。
毎日持ち歩き出先で頻繁にポケットや鞄から取り出して使うスマートフォンは、常に落下の危険性に晒されています。Appleは毎年、割れにくいガラスの搭載に努めていましたが、その甲斐なく毎年、ガラスが割れたiPhoneを量産してしまっていた。
そこで、ガラス素材から離れよう、というのが今回のiPhone 12の前面に「セラミックシールド」だ。この素材、厳密には、ガラスではない。
セラミックは多結晶の物質で、陶器を見ればわかるように不透明の物質だ。これを適切な材料と適切な温度、時間で焼くことで、透明な多結晶物質を作り出すことができるという。
Appleは2019年に、米国向け先端製造業ファンドを通じて、長年カバーガラスを供給してきたコーニングに25億ドルを投資している。
その成果として、これまでのガラスより硬い新素材であるセラミックシールドの実現を得た。
加えて、新しいエッジの立ったデザインも、前面のセラミックシールドを保護する改良が加えられている。iPhone 6以降、iPhone 11までのデザインは、丸みを帯びたメタルフレームの丸みを引き継いで、ガラスが盛り上がる3Dデザインとなっていた。そのため、ガラスのエッジが露出した状態で、角から割れてしまっていた。
iPhone 12では、メタルフレームとガラスの高さが完全に一致しており、角から落ちてもフレームが地面に当たる。セラミックシールドとデザインの改良によって、対落下性能4倍を実現しているのだ。
確かに割れにくいかもしれないセラミックシールド。しかし表面のコーティングの関係から、より硬い物質、例えばiPhone背面のカメラ部分などをこすり合わせると、傷はついてしまう。高価なカバーガラスまでは必要ないもしれないが、フィルムは貼っておいた方が良いかもしれない。
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