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「自販機」を日本から世界へ--サントリービバレッジソリューション森氏の想いと挑戦

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2020年10月30日 09時00分
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 大企業のなかで新規事業の創出やイノベーションに挑む「社内起業家(イントレプレナー)」たち。彼らの多くに共通しているのは、社内だけでなく社外でもアクティブに活動し、社内の横のつながりや幅広い人脈、あるいは課題を見つける観察眼やその解決につなげられる柔軟な発想力を持っていることだ。

 この連載では、そんな大企業内で活躍するイントレプレナーにインタビューするとともに、その人が尊敬する他社のイントレプレナーを紹介してもらい、リレー形式で話を聞いていく。第1回目は、サントリービバレッジソリューション事業推進本部の森新氏に話を聞いた。

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サントリービバレッジソリューション事業推進本部の森新氏

優秀な“小売店”の「自販機」で世界市場を目指す

——まずは、森さんの自己紹介をお願いできますでしょうか。

 1988年生まれ、32歳の森新です。四国生まれで、大学は北海道でした。理系だったので、PCにずっと触れているような仕事に就くのかと思いきや、いろいろな出会いがあって、サントリーに入社しました。消費財という、お客様に寄り添いながら生きていく世界にすごく魅力を感じたのと、社員の人たちが元気で、いい会社やなと。

 最初はサンリーブという会社に出向して、1年間は小売店様への営業を、サントリーフーズに帰任後は2年半ほど卸様の担当をしました。それから親会社のサントリー食品インターナショナルの人事部へ突然異動することになり、働き方改革、組合交渉、人事制度改定などを3年間経験しました。その後、新規事業の社内公募があって、入社前からどうしてもやりたいことがあったので手を上げ、今いるサントリービバレッジソリューションに来ました。

——プライベートで活動されていることなどもあれば教えてください。

スノーボードはDVDに登場するほどの腕前
スノーボードはDVDに登場するほどの腕前

 無類のスノーボード好きで、10年間ずっと続けています。たまたまですが、プロも一緒にでている大会でベスト8になった事もあります。実は、出演しているスノーボードのDVDも2本ほど販売しています……。私、トコトン業務効率を上げるのが好きで、なぜそうしているかというと、冬の金曜日を休むためなんです(笑)。休みを取れる週は木曜日の夜に帰宅したら、スノーボードの板を担いで、そのまま北海道に飛んで金〜日を過ごして帰ってくるっていう。もう10年くらいそういう生活をしてますね。

 それ以外の空いてる時間もひたすら何かをやっています。執筆や講演活動をメイン事業にしている合同会社新(あらた)っていう自分の会社で、本も2冊出版しまして、全部で約15万部ぐらい売り上げています。大きな会社の経営をしてみたいという夢があるのですが、かといってこの年齢でサントリーの経営をやれるわけもないですから、まずは自分で会社を立てて経営の勉強しようと。

——本業以外でもアクティブに活動されているのですね。ちなみに、サントリービバレッジソリューションでは今どのようなお仕事をされているのでしょうか。

 まず、サントリービバレッジソリューションのビジネスの話をすると、自動販売機を使った飲料の販売が主体となっています。その会社のアセット、お客様との関係性など、あらゆるものを駆使して新しいサービスを作り、お客様に新しい価値をご提供するのが私の仕事で、今一番注力しているのが飲料の自販機です。自販機の付加価値を上げていくということですね。

 飲料の自販機は、20年以上大きな変化もなく今のままの姿があることもあり、かなりコモディティ化していて、どのメーカーの自販機も外から見たらお客様目線では大きな差を見つけることが難しいのではと私は思っています。ここにサントリーならではのサービスを付加して、「自動販売機はやっぱりサントリーがいいよね」と思ってもらい、法人のお客様や個人のお客様に選んでいただく、そのためのサービスを作っています。

——私は位置情報ゲームの「ドラゴンクエストウォーク」が大好きなので、ゲームとコラボしているサントリーの自販機を見かけたら、喜んで近づいてます(笑)。

 実は私も、そのような販促のサービスにもに関わっています。でも、そういうことなんですよね。お客様の心にあるマインドシェアというか、他よりちょっとだけ身近で、触れやすいっていうだけで全然違ってくる瞬間があるんだなと信じています。

——森さんにとっての自販機の魅力って、どのようなところにあるのでしょう。

 それを話し出すと、3時間ぐらいかかっちゃいますね(笑)。私は入社当初から自販機ビジネスをずっとやりたいと言っていたんです。世界中が少子高齢化に突入するのはもう目に見えていて、とりわけ日本はその最先端にいますが、先進国は構造的にこの少子高齢化に絶対に突入していく。そうなった時に、労働人口が足りなくなるわけです。

 そんな中で自販機は、人手がかからない“小売店”という意味では最も優秀で、さらに日本の自販機は利用できる決済方法も多様です。交通系電子マネーやバーコード決済などのほかに、現金も使える。さらには一部の自販機は通信端末を搭載しておりIOT化までできている。この「IOT&決済マシン」ってとても価値があって、世界の課題に対して先手を打っている日本のサービスとして魅力を感じているんです。

 もっと言うと、自販機って3歳、4歳の子どもでも使い方がわかるんですよね。最近は料理の宅配アプリが流行っていますが、これを3歳児や高齢者が簡単に使えますかというと、実際には難しい。それに対して自販機はもはや誰でも使える、社会的な蛇口みたいなものになっているんじゃないかと。

 新型コロナウイルスをきっかけに、キャッシュレスの波は日本にとどまらず世界中で進んでいくでしょう。今は現金が自販機の中にずっと置かれているため盗難懸念等の治安の問題で街中に設置しにくい海外でも、キャッシュレスの自販機にすれば解決できるかもしれません。なので、自販機大国である日本でお客様に価値を提供し続けて、その対価として収益を継続的に得られる構造をしっかり作りきれれば、いつか世界にもチャレンジできると私は思っています。

 自販機ビジネスは、今は厳しい状況ですが、これを自分たちの世代でV字回復させて、世界のお客様にも自販機文化を提供していく。そういうことをやっていきたいと個人的に思っています。

自販機の“空いたボタン”で弁当を注文できる「宅弁」

——これまでどういった新規事業に取り組まれてきたのか、教えてください。

 2018年に、自販機からお弁当を注文できる「宅弁(たくべん)」というサービスを若手メンバーで考えて、ビジネス特許まで取ってローンチしました(現在は別プロジェクトに統合中)。このチャレンジも自販機の付加価値アップを目的としたものです。先ほどもお伝えしたように、自販機は決済機能があるし、データ通信の機能も搭載しているので、職場にある自販機は公用のスマートフォンみたいな、実質みんなで使える発注端末でもあるんですよね。

自販機からお弁当を注文できる「宅弁(たくべん)」
自販機からお弁当を注文できる「宅弁(たくべん)」

 その部分に着目して、自販機のボタンを押して注文したら、近くの飲食店に情報を即時に連携して配達してもらう、というサービスを作ったわけです。

——料理宅配アプリの自販機版のような感じですね。

 まさしく、私らは「法人版 料理宅配アプリボタン」って呼んでいたのですが、料理の宅配アプリだと、1人当たりの配送料が数百円かかります。でも、宅弁では職場全員でまとめて注文するので、1人あたりの配送料はずっと安くすみます。それと、職場で勤務時間中にスマートフォンを操作して注文するのは気が引ける方もいらっしゃる。その点、自販機だと職場公認のツールみたいなものでもあるので注文しやすいという声もありました。

——宅弁を思いついたきっかけは何だったのでしょうか。

 自販機は機種を表すときに「30セレ36ボタン」というような言い方をします。これは、ボタンが36個あって、商品は30種類入れられる、という意味です。こういう36個のボタンがあるのに30種類しか商品が入らない機種はけっこうあるんです。

——6個のボタンが浮いちゃいますね。

 おっしゃる通りです。マンションのインターフォンから呼び出すと、いくつかの部屋で同時にピンポン鳴るみたいな、そういう不思議な構造になってるんですね。入社当時からこの構造に対して自分も不思議に思っていて、なぜフルフルに使い切れてないんだろうと。

 お客様に何か新しい価値を提供したいと考えていたときに、その空いてるボタンと自販機がもつ決済機能を活用できないか、というのがまず1つ目の着眼点でした。もう1つは、自販機が考え方を変えるとお客様にとっての小売店になりうるということ。小売店として、飲料だけじゃなく食べ物も買えるようにしたい、というニーズは実際にお客様の声として多数ありましたから、お弁当を即日配送するサービスに自販機を利用してみようと考えました。

——実際のところ宅弁を利用される方はどれくらいいたのでしょうか。

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