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「自販機」を日本から世界へ--サントリービバレッジソリューション森氏の想いと挑戦 - (page 2)

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2020年10月30日 09時00分
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 近くに食べ物を買ったり食べたりするところが少ない場所だと頻繁に利用していただけて、そうでない場合は利用頻度が高くないという結果でした。

 たとえば高層ビルにお勤めのお客様だと、オフィスからコンビニまで行こうと思うとエレベーターを待たなければいけなかったり、コンビニでも列ができて待つ必要があったりして、お昼休憩の可処分時間が実際にはほとんどないといったお客様もいました。

——そういった新しいチャレンジをしたことで、何か気付きみたいなものは得られましたか。

 初期仮説の通り、飲料の売り上げが一定の割合で伸びましたね。自販機という小売店の前にお客様に立っていただける回数が変わると、それにともなって飲み物を買っていただける回数も増える。飲料の売上が上がるのは我々としては一番うれしいし、お客様に新しい付加価値を提供できているのではとも感じています。

——まさに自販機の価値を再構築していますよね。

 そうですね。お客様にお借りしているスペースはそのままで、新しい価値を提供できている気がしますし、今後もそういう価値を深掘りしていきたいなと思います。今は他に新しいプロジェクトを3つぐらい仕込んでいるところで、基本的に2人で担当しているのですごく大変ですが、仕事はめちゃくちゃ面白いですね。

「やってみなはれ」--“驚くほど”風通しのいい社内風土

——社内には新規事業のアイデアを募集して、チームをどのように作って、どういう基準で評価するか、といったような決まった制度や仕組みはあったりするのでしょうか。

 結論としては、仕組みはありません。以前、有志で経営に答申して、新規事業等の提案制度(i-one grand prix)作ったんですが、残念ながら、今は継続をしていません。仕組みとして継続して持つべきではないか、という議論もありましたが、様々なことが多様化する時代の中、スピーディにお客様のニーズ変化を捉えて価値を提供していくことが最優先と考えました。

 新しいことを思いついたときに、次年度の提案制度のプロジェクトのスタートまで待とうとか、そういうことではないんですよね。たくさんの人に「サントリーはいつでも新しいチャレンジを許容できる会社でありたい」と言われましたし、その通りだなと。

 だから新しい事業を始めたいときは、とにかくまずはアジャイルで動く。お客様目線での価値を確認して、投資が必要なときに経営陣に許可をもらう。都度都度「チャレンジさせてください」と経営陣に言いに行きます。

——経営陣に直接言いに行けるんですか?風通しがものすごくいいんですね。

 私見ですが、サントリーの風通し、めちゃくちゃいいと思います。私はプライベートでいろいろな法人様のオフィスに訪問して、講演させて頂くこともありますが、そういうときによく感じるのですが、サントリーの風通しの良さは非常に良いと思っています。

 もちろん、なんでもすぐに経営陣に相談するわけではありません。新規事業を考える時は、そこにお客様のニーズ(ペインポイント)がしっかりあって、我々サントリーとしてやる意義があるかどうかしっかり確認します。PoC(プルーフ・オブ・コンセプト)ですね。お客様にご迷惑をかけない範囲で多面検証して、本当にニーズがあるのか、お客様がそれでハッピーになるのかを確認してから、経営陣に相談しに行きます。

 今度チャレンジする新規事業も、経営陣に提案したときに、その場でとある人がいきなり「バンッ」と机を叩いたので、「ああ、怒られるのかな……」と思ったら、「やったらええがな!」って。きっとご本人の腹に落ちたんでしょうね。本当はそこは「やってみなはれ」だったら良かったんですけど(笑)。でも、あの瞬間はものすごく鮮明に覚えてます。「やったらええがな!」って言われたとき、背中がぶるっと震えたんですよね。

 サントリーという会社は、強い覚悟と意思があれば、そんな風に「やってみなはれ」で本当にチャレンジさせてもらえると思っています。実際にチャレンジして、だからこそ見えてくる課題もいくつかあって、先ほどの宅弁についてもそこで見つかった課題を解決するべくピボットして、また改めて別の座組みと別のスキーム・商材として、再チャレンジしたいと思っています。

「同調圧力に屈しない人生」を小学生の時に決めた

——新規事業のアイデアはどうやって出しているのでしょうか。ブレストの時間を定期的に設けていたりするのでしょうか。

新規事業の「アイデアメモ」はスマホのメモにびっしり
新規事業の「アイデアメモ」はスマホのメモにびっしり

 いえ、もう24時間体制で考えてます(笑)。私、仕事が大好きなので、思いついたことを新規事業の「アイデアメモ」として常に書き込んでいるんです。その中で光るものがあったら、ぱぱっと検証して、お客様に価値を確認して、社内提案する。その繰り返しです。

——仕事でも遊びでも突き抜けている人と出会うと、起きている時間がすべてアイデアを考える時間になっていると言われることが少なくありません。その原動力はどこにあるんだろうといつも気になるのですが、森さんの場合はどうでしょう。

 自分で言うのもなんですが、昔からすごく変な子どもで、社会に対して反発してたんですよね。今も覚えてるのは、小学生のときに冬に半ズボンで登校した時のことです。クラスメイトから「なんでお前、冬なのに半ズボンなんだよ」と言われたわけです。

 この、同調圧力みたいなものを押し付けられることに強烈に嫌悪感を覚えました。新しい道を切り拓くことってこんなにつらいことなのかと。でも、自分の切り拓いた道をデファクトスタンダードにするのも面白いだろうなと思い、逆張りというか、同調圧力に屈しない人生を小学生の時に決めたんですよ(笑)。

——小学生の時にですか!?ちょっと早くないですか(笑)。

 もう1つは家族の影響ですね。ハンディキャップを背負って生まれた兄弟がいるのですが、ダイバーシティの理解はまだ社会は道半ばであるため、兄が壮絶な苦労をしながらも、前をしっかり見て生きていくそんな姿を幼いころから、一番近くで見てきました。社会に強い嫌悪を感じた時期がありましたが、その嫌悪感の正体である課題を見つけ、それを自らで変える力を身に着けることこそが、自分のミッションなんじゃないか、そんな思いと共に生きてきました。その延長に、新規事業があったんです。

 新規事業といっても、BtoBのサービスだと一般の消費者にはなかなか見えにくいですから、社会全体に届けるならBtoC、消費財などがハブの新規事業じゃないといけない。だからこそ、サントリーにいながら社会に新しいサービスを提供したり、喜ぶ人を増やすことができると、ぐるりとまわって兄にも届くのかな……ということを思っていたりします。『これは俺の弟がつくったサービスなんだ、自慢の弟だ』そんな言葉を求めているのかもしれません。

——思いがけず、いいお話を聞くことができました……。ところで、サントリーのこういうところがいいな、と思うところはありますか。

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