大阪商工会議所は9月3日、シンポジウム「動き出すスーパーシティ構想 挑戦と課題 ~ニューノーマルのその先へ~」を開催した。大阪では2024年にうめきた2期、2025年に大阪・関西万博(万博)といった大型開発プロジェクトが進行しており、多様化する価値観やライフスタイルに対応するスマートな街づくりを目指している。また、政府が9月から公募を開始する「スーパーシティ」構想を進める地方自治体への応募を決めており、そうした動きに関する情報共有の機会として本シンポジウムが開催された。
冒頭のあいさつで大阪商工会議所会頭の尾崎裕氏は、スーパーシティの活用に向けて進行するさまざまなプロジェクトを紹介。未来のウエルネスビジネスの可能性を探るプラットフォーム「ウエルネス未来社会デザイン共創ネットワーク」の設立により、スマートヘルスケアシティの実現を目指すこと。人とロボットが共通認識を持つ未来社会に向けて異業種が集まる世界初の実証ラボ「コモングラウンド・リビングラボ」を年内オープンすることなどを紹介した。
最初の特別プレゼンテーションは、内閣府地方創生推進事務局審議官(国家戦略特区担当)の佐藤朋哉氏がオンラインで登壇し、スーパーシティ構想について紹介した。内閣府は5月27日にスーパーシティ構想の実現に向けた制度の整備などを盛り込んだ「国家戦略特別区域法」を成立。構想の内容についてはサイトで詳しく解説しており、佐藤氏は「スーパーシティは具体的な実施の段階に入った」と言う。「個別分野での実証実験で技術はそろったが、まとめて実践する場がないという課題があった。これからはサプライヤーやメーカーだけでなく住民も参画し、2030年の実現に向けて生活全般に跨がる先端的サービスを提供し、未来社会を先取りして実践することを目指す」とし、構想の実現に向けた重要ポイントを解説した。
たとえば、スーパーシティの条件として、都市OSとも呼ばれるデータ連携基盤の整備事業が核になり、自治体が事業主体として整備すること。また、さまざまな提供者から集められたデータを集約し、先端的サービスに活用できるようにするため、データをやりとりするルールをAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)として開示することなどが説明された。これらを実現するにあたり、複数の特例措置を一括で迅速に実現する「スーパーシティ法」を9月1日に強化しており、3年後を目途に施策の過不足を検証し、見直すとしている。
自治体と企業や事業者との橋渡しをSNS上への出展という形で行うコミュニティ「スーパーシティ・オープンラボ」には、8月末時点で174の団体が登録している。ここでも技術ありきではなく、各地域の具体的な課題解決のために必要な先端技術を選択し、導入に必要な条例改正があれば対応するという順番で実施することが強調された。
6月1日時点で56の自治体がアイデアを提出している。「スーパーシティは長期的な取り組みであり、それぞれのフェーズで住民や参加企業へ丁寧に説明し、理解と応援を求めることが必要だ」と佐藤氏は言う。「取り組みを進める間にも状況は変化し、柔軟な見直しが必要となる。自治体には明確で柔軟なリーダーシップが求められるだろう。世界に先駆けて世界に通用するジャパンモデルの実現に向けて、国と地域が一丸となって取り組んでいきたい」と発表を締め括った。
続いて、大阪府スマートシティ戦略部スマートシティ戦略推進監の吉田真治氏が「スマートシティからスーパーシティへ」と題し、大阪府と大阪市が共同で進める取り組みについて説明した。
大阪府では2019年4月に大阪府知事の吉村洋文氏が就任記者会見でスマートシティの実現を発表し、同年7月に大阪スマートシティ戦略の準備室を立ち上げ議論を重ねてきた。組織トップの部長は民間から公募し、日本IBM執行役員の坪田知巳氏が2020年3月に就任した。同月に「大阪スマートシティ戦略ver1.0(案)」が決定し、4月から正式に戦略部を設置している。
取り組みは大きく2つあり、一つは市町村ごとでは進めにくい課題解決に持続可能な形で取り組み、大阪府域全体のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高めること。もう一つは、万博に向けて大胆な世界最先端の実験を夢洲(ゆめしま)地域で取り組み、延長する形でスマートシティを実現することである。
スーパーシティ構想については大阪府と市が共同で、政府の規制緩和を利用した大胆な戦略をさまざまな分野で取り組むとしている。対象エリアはうめきた、万博、夢洲の3カ所で、そこでは自動運転や空飛ぶクルマ(タクシー)の運用、ローカル5G基地局などICTインフラの運用に関する規制緩和も計画されている。スケジュールは2021年2~3月にかけて提案と公募を行い、春頃に実施エリアなどを決定する。
「空飛ぶクルマの実現では規制緩和だけでなく新しいルールを作り、標準化に向けて議論する。健康医療への取り組みも大きな柱で、パーソナルデータの取り扱いの話では『データ民主主義』の発想が必要となるだろう。それらに向けては大阪府と市、さまざまな団体や企業が地域と一緒にエコシステムを構築し、これからの大阪づくりを進めたい」(吉田氏)。
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