スーパーシティに向け動き出す大阪--未来社会を先取りする取り組みとは - (page 2)

大阪府特別参与が話す「データを活用した健康環境づくり」

 ショート・プレゼンテーションでは、市民の健康管理データの活用を実践してきた大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学特任准教授の野口緑氏、パーソナルモビリティの自動運転実証を行うWHILL 取締役兼CTOの福岡宗明氏、7月に大阪に進出した世界的なアクセラレータのPlug and Play Japan Director, Osakaの安藤慎吾氏が登壇した。

 注目が集まったのは、スマートシティ推進におけるヘルスケア分野の専門家として、4月から大阪府の特別参与に就任した野口氏のプレゼンだ。「健康寿命の延伸を実現するためのスマートヘルス~データを活用した健康環境づくり」と題し、スマートシティのヘルスケア分野の共通課題として健康寿命(社会寿命)を挙げ、健康データの分析や活用の必要性を説明した。

大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学特任准教授の野口緑氏
大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学特任准教授の野口緑氏
大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学特任准教授の野口緑氏はスマートヘルスシティについて解説した
大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学特任准教授の野口緑氏はスマートヘルスシティについて解説した

 野口氏は2000年度から実施した、尼崎市職員の生活習慣改善対策で成果を上げた実績などを紹介し、膨大なデータを元に予防に必要なエビデンスを確立してきたことを紹介した。「糖尿病や認知症など日本人の病気の多くは血管の病気で、特にリスクとなる肥満は生活習慣の改善で予防できる。携帯電話に健康リスクを通知するだけで改善できるなど、改善には行動が必要なことがわかっている。スマートシティでは何をどのようにするかを明確にし、自分ごととして理解してもえるよう情報提供することで、住民の行動スイッチを押すことができるのではないかと考えている」と話す。

 スマートヘルスに対する個人のアイデアとして、クラウドで共有された医療データと自治体が保有する住民の健康データを連携し、環境要因や社会経済要因を含む集団データをあわせて、なぜ地域によって健康状態が異なるかを分析することで、社会寿命が延伸できるのではないかとも提案している。「これまでは発見した課題に対処するモグラたたき型だったが、10年先の健康を守る予防型に変えていく必要がある。自治体には対策に必要なデータがバラバラだが豊富にある。スマートシティではそうしたデータを元に予防ターゲットの絞り込みや、地域や個人にカスタマイズされた健康情報の提供など、ライフステージを横断するアプローチが重要になるだろう」(野口氏)。

社会寿命を伸ばすために必要な考え方などが説明された
社会寿命を伸ばすために必要な考え方などが説明された

ニューノーマルの先を見据えた新たな課題も

 最後にプログラムのまとめとして、ショート・プレゼンに登壇した、大阪大学の野口緑氏、WHILLの福岡宗明氏、Plug and Play Japanの安藤慎吾氏、3名によるパネルディスカッションが、日本経済新聞社 大阪本社編集局経済部長の黒沢裕氏をコーディネーターに行われた。

パネルディスカッション
パネルディスカッション

 野口氏は大阪府民の平均寿命と健康寿命がともに全国平均を大幅に下回っていることを指摘しながらも、「だからこそスマートシティでの取り組みは意義がある」とコメント。「国が主導する健康医療の制度はインセンティブによって推進することが多く、健康行動を起こしている人しか動いてくれない。ヘルスケアを成功させるには学習と選択をキーワードにデータを連携し、地域や産業、景気にも関係するという認識し、つなげる仕組みを定義することが必要だ。予防領域としては世界的にもまだどこもやっていない取り組みなので、大阪が最先端になれる可能性がある」と言う。

 そのためのハードルになるのは個人情報で、「活用することを一般に理解してもらうには、何を解決しようとしているかメッセージとして伝え、必要な人だけでなく将来的に全体のメリットになる仕組みと動かし方を考える必要がある」と述べた。

 福岡氏は「すべての人の移動を楽しくスマートに」することを提案しており、自社で開発中の電動車椅子を近距離モビリティと称し、車椅子に対するネガティブなイメージそのものを変えようとしている。「今後はモビリティと医療連携も期待しており、今はエビデンスが無いが健康との関連データを評価できるようにしたい。運用のための法整備もまだこれからなので、新たに都市開発から進めるグリーンフィールドを活用できるのではないか。大阪出身なので大阪でいろいろ面白い取り組みをやりたい」とした。

WHILL 取締役兼CTOの福岡宗明氏
WHILL 取締役兼CTOの福岡宗明氏
近距離モビリティについて発表するWHILL
近距離モビリティについて発表するWHILL

 安藤氏はスマートシティの定義は都市生活を改善する技術によって再定義され続け、投資額も大きくなっていると話す。「大阪では産官学連携で市民一人一人の生活を向上するウェルビーイングなスマートシティを目指し、同社のグローバルなスマートシティのネットワークを通じて世界と大阪をつなげ、課題解決に向けたイノベーションを促進したい」と言う。

 また、「トロントでは政府主導のスマートシティ計画が予算の問題で突然ストップしたことから、国に頼り過ぎない街づくりが必要。政府の戦略と結びつけながらも、耐久性を上げた動きをするべき」と述べた。

Plug and Play Japan Director, Osakaの安藤慎吾氏
Plug and Play Japan Director, Osakaの安藤慎吾氏
Plug and Play Japanは大阪のスマートシティ実現に積極的に参加すると発表
Plug and Play Japanは大阪のスマートシティ実現に積極的に参加すると発表

 これまで計画されていたスーパーシティおよびスマートシティ戦略は、新型コロナウイルスの影響で見直しが必要な部分も出ている。今回のシンポジウムではまだ具体的な提案はなかったが、ニューノーマルの先を見据えた新たな課題に、住民の目線で柔軟に取り組もうと意識していることが伺えた。大阪ならではのユニークな取り組みに期待する声もあり、今後の動きにも注目していきたい。

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