ソフトバンクはなぜ、わずか4年で「Arm」を手放したのか--買収するNVIDIAの思惑は? - (page 2)

資金確保だけでなくNVIDIAの「株式取得」も狙いか

 なぜ、ソフトバンクグループが、再上場を検討していた時期よりもかなり早いタイミングでArmを売却する必要があったのかといえば、1つにはやはり手元資金確保のためだろう。ソフトバンクグループは現在投資会社としての側面を大きく高めており、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を設立して多くのAI関連企業に投資をして事業拡大を進めてきた。

 だが、WeWorkに関する一連の問題や、コロナ禍での投資先企業の株価下落などによって業績が急速に悪化。その防衛策として、T-Mobileの米国法人やアリババ、ソフトバンクなど、同社が持つ株式の一部を売却するなどして現金の確保を積極化していた。Armの売却を急いだのも、上場より多く利益が出せる可能性のある買い取り手が現れたことで、早いうちに売却した方が得策と判断したといえそうだ。

ソフトバンクグループはソフトバンク・ビジョン・ファンドの業績悪化を受けて防衛策のため保有資産を次々と売却し、手元資金の確保を急いでいる
ソフトバンクグループはソフトバンク・ビジョン・ファンドの業績悪化を受けて防衛策のため保有資産を次々と売却し、手元資金の確保を急いでいる

 ただし、ソフトバンクグループにとって、今回の売却は単に現金を得ることだけが目的ではなさそうだ。発表内容を見ると、売却額のうち現金で支払われるのは120億ドルで、残りの215億ドルがNVIDIAの株式で支払われるとされている。その結果、ソフトバンクグループはNVIDIAの発行済み株式の約6.7〜8.1%を保有する見込みで、NVIDIAの大株主の1社となることに間違いないだろう。

 そのため今回の売却は、Armへの関与を大きく弱めるものの、NVIDIAの株式を取得することで同社に一定の関与をしていく可能性が高いといえる。かつて孫氏は、NVIDIAのCEOであるジェンスン・フアン氏とは友人関係にあり、ビジョンは共有する部分が多いと話すなど、近しい関係にある様子を見せていた。

 また、ArmのCEOであるサイモン・シガース氏も、9月14日に実施されたメディアブリーフィングの中で、「マサ(孫氏)は私たちにビジネスを拡大する能力を与えてくれた。我々はその投資を受けて製品を拡充し、今では非常に強力なポジションにいる」と話したほか、ジェンスン氏も「ソフトバンク(グループ)とマサが主要な投資家の1人であり、大株主であり、偉大なパートナーであることを嬉しく思っている」と話すなど、NVIDIAとArmがソフトバンクグループ、ひいては孫氏と良好な関係を築いていることは確かなようだ。

ソフトバンクグループは2017年にもNVIDIAの株式を取得していたが、2019年の株価急落を受けて売却。孫氏は当時、いかに損をすることなく売却できたかの説明に力を注いでいた
ソフトバンクグループは2017年にもNVIDIAの株式を取得していたが、2019年の株価急落を受けて売却。孫氏は当時、いかに損をすることなく売却できたかの説明に力を注いでいた

 ただ、ソフトバンクグループは2017年にもNVIDIAに出資して4.9%の株式を保有していたことがあるのだが、2019年に株価が大幅に下落したことを受けて全ての株式を売却してしまっている。ソフトバンクグループは投資会社であることを明確に打ち出しているだけに、NVIDIAとの関係を維持できるかは、やはりNVIDIAの業績次第ということになるかもしれない。

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