楽天と東急がデータマーケティングの新会社--長年の関係から共同設立へ発展

 楽天と東急は8月31日、データマーケティングに特化した新会社「楽天東急プランニング」を共同出資会社として設立したと発表した。同社の代表取締役社長には楽天の常務執行役員である笠原和彦氏、代表取締役副社長には東急の経営企画室マーケティング・IT推進グループ 統括部長の日野健氏が就任する。

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(左から)楽天東急プランニング代表取締役副社長の日野健氏、楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏、東急取締役社長の高橋和夫氏、楽天東急プランニング代表取締役社長の笠原和彦氏

 新会社では、会員数1億人を超える楽天会員がもたらすオンラインデータと、東急電鉄をはじめ、東急百貨店、東急ストア、東急ホテルズ、二子玉川ライズといった交通や不動産、商業施設などを抱える東急のオフラインデータを活用することで、デジタルマーケティングを強化。「データマーケティング」、「広告」、「OMO」の3事業を柱に、利用者ごとへのパーソナライズな情報発信、品ぞろえ、購買体験などを提供するという。なお、東急は新会社設立でOMOを本格化させる。

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楽天が持つオンラインデータと東急が持つオフラインデータを組み合わせる
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楽天東急プランニングの主な事業

 データマーケティング領域では、楽天のデータ分析技術を用いて東急沿線ユーザーを“より深く理解”することで、東急グループの店舗マーチャンダイジングに活用。ユーザーにとって最適な情報を、アプリや店内告知、価格設定などに適用する。同社では実証実験として、10月から東急ストアで顧客ごとへの情報配信と、それによる購買変化の検証を実施。東急ストアの商圏見込み客と潜在需要を把握し、楽天のアプリを通して情報配信するという。

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 広告領域では、両社のデータを軸に広告パフォーマンスを最大化。これまで計測が難しかったオンラインからオフラインまでの一貫した広告効果を、購買評価まで通して測定することができ、東急グループの取引先企業を中心に、データをターゲティングや購買計測に活用したウェブ広告や、広告接触から購買までを計測できるデジタルサイネージなどの広告媒体を販売する。また、こちらも11月より、ウェブ広告媒体の実験販売、二子玉川駅や東急ストア二子玉川ライズ店内のデジタルサイネージを使った実験販売を開始する予定という。

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 OMO事業では、オンラインとオフラインの垣根をなくした購買体験を提供。まだ検討段階ではあるが、例えば商品・企画のレイヤーにおいて、東急ストアや東急百貨店のバイヤーによるリアルの目利き力と楽天ECのトレンドを組み合わせることで、より顧客ニーズにマッチした提案が可能になるほか、流通・購買面では、楽天のレコメンドに加えて、オフラインならではの試着といった実物の体験を組み合わせた買い方などを提案するようだ。

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 また、新会社設立にあわせて、東急ストア全店で楽天ポイントカードを導入。東急百貨店や東急ホテルズ、二子玉川ライズ・ショッピングセンターなど、東急グループの実店舗決済システムにも、楽天ポイントカードと楽天ペイの導入を進めるとしている。なお、東急グループでは、「東急ポイント」という独自のポイントシステムを持っているが、楽天ポイントとは役割や会員層が異なるため併用を続ける予定。東急ストアなどでは、両ポイントを二重で付与し、購買データからそれぞれのポイント会員層の共通項や違いを探るとしている。

 なお、個人情報の取り扱いについては、楽天の個人情報保護規定に準拠。6月に可決された改正個人情報保護法の施行にも対応していくという。

楽天と東急の関わりは1997年から

 楽天と東急の関わりは、1997年5月の「楽天市場」開設時に、東急百貨店が出店したところから始まる。「海のものとも山のものともわからない我々に出店していただき、支えてもらった」と楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は語る。その後、少し期間を開けて、2015年8月の二子玉川ライズへの楽天本社移転、2019年2月の物流領域での業務提携と続き、2020年8月にはUGV(無人地上車両)による商品配送サービスの実証実験など、関係を強化している。

 新会社設立は、こうした長年の関係から発展したものだという。笠原氏は、「いろいろな仕事を楽天と東急でやってきたので、将来を話すうちに具体化してきたように思う」と語る。日野氏も、「楽天ポイント加盟店に加わることで、新規送客やO2O的な送客効果が間違いなく見込めるが、それだけで止まってしまうのか。より相互のアセットやデータを使うことで、もっとできることはないかという話を楽天からも頂いた中で、『ぜひ』と話が進んでいったと思う」としており、楽天ポイントの導入がきっかけの一つとなったようだ。

 また、コロナ禍も追い風となった。日野氏は、「オフラインだけでは、買い物一つとっても簡単ではなくなった。オンラインを取り込んだOMOなどにしっかり取り組むのが今の時代必要」としており、ウィズコロナ時代にマッチした新しい顧客体験を、実証実験を通して進めるとみられる。

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キャッシュレス決済やニューノーマルに対応した購買を支援する

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