野村不動産が不動産売買契約手続きの電子化に乗り出す。契約関連書類の電子化を9月上旬に開始し、冬には、契約手続きの電子化、非対面(オンライン)化までを目指す。電子化の作業を担うのはデジタルガレージが提供する不動産契約一元管理サービス「Musubell(ムスベル)」だ。
不動産の売買の契約は、取引が高額のため、デジタル化が遅れている分野の1つ。賃貸に比べ、体験する回数が少ないことも、紙、署名捺印といった従来のやり方を変えられていない要因だ。この部分にメスを入れるのはなぜか。そして、なぜ、このタイミングで実現できたのかを野村不動産 住宅営業本部契約営業部契約営業二課課長の伊藤祐一氏とデジタルガレージ オープンネットワークラボ推進部エグゼクティブマネージャー Resi-Tech担当の執行健司氏に聞いた。
――新型コロナウイルス感染拡大を受け、不動産の営業も非対面化が進められています。今回の売買契約時の電子化もそうした動きを受けてのことでしょうか。
伊藤氏 実際に動き始めたのは約1年前。新型コロナウイルスの感染拡大以前です。不動産売買に関連する契約書類は実は100種類程度あり、とにかく種類が多い。すべてのお客様が100種類を使うわけではないのですが、お借入の金額が変わったり、引き渡しまでの条件変更があったりすると、それに応じた書類がそれぞれ必要ですので、あらゆる条件を満たすために膨大な数の関連書類が存在しています。
ただ、これだけの書類をすべて把握するのも時間がかかりますし、その都度契約内容に沿った書類を用意し、お客様に署名捺印をいただくのでは、お客様の手間もかかります。ペーパーレス化とお客様のサービス向上、この2点を実現するために電子化への取り組みを開始しました。
――賃貸不動産における電子契約を取り入れる会社も増えてきましたが、売買ではやはりハードルが高いのでしょうか。
伊藤氏 非対面でのオンライン接客は、コロナ禍後に当社でも取り入れ、徐々に対応物件を増やしています。ただ、販売から売買契約まですべてをリモートで完結させるのは、金額が大きいこと、家を買うという人生でも転機となる出来事であること、などから、現時点で完全非対面に切り替えるのは難しいと考えています。一方、各種書類への署名捺印はお客様の手間がかかる。この部分の負担軽減は売買でも迅速に進めるべきだと考えています。
また、現在、書面交付が義務付けられている重要事項説明の電子化に係る法整備を進めば、不動産業界としてのやり方も変わってくると思います。
――実際、電子化する流れはどうなっているのでしょうか。
執行氏 Musubellの導入にあたり、多岐にわたる必要な契約書類の雛形を登録いただきました。それらの書類と不動産契約時のお客様情報を自動的につなぎ込んでいます。お客様ごとに異なる必要書類の自動選別や、書類の自動生成、それぞれの契約ステータスをオンラインで一元管理できることがMusubellの特長です。
加えて、弁護士ドットコムが提供する電子契約サービス「クラウドサイン」とAPI連携することで、契約書の署名や押印、郵送などの手間を省き売買契約全体を電子化しています。
伊藤氏 通常ですと、野村不動産では「契約会」を開き、お客様に会場までお越しいただいて、署名捺印をお願いしていました。この時に記載いただく書類は多数あり、その1枚1枚に捺印をいただいていることを考えるとお客様の負担はかなり軽減できます。
執行氏 そのほかにも、印鑑の押し忘れなど書類に不備があると、再度書類を送付して、お客様に署名捺印していただいてと、その都度出し戻しが必要でしたが、一元管理しているためそういうこともなくなる。お客様のメリットは大きいと思います。
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