地方の中小企業と業務委託契約を結んだ副業人材の業務時間の平均は、週にすると8時間程度。毎週平日定例ウェブ会議などで1.5〜2時間程度、平日に毎日1時間程度、週末に2時間程度を使い作業する人が多い。リモートワークがメインで、現地への訪問は業務始めや、工場や商品の確認が必要な場合、社内スタッフとの交流などのために1〜2カ月に1回程度が平均的となっている。
報酬は時間給の平均が約3500円で平均月額約10万円。企業側も個人側もお互いが毎月解約可能な契約条件としているが、平均契約期間は8カ月程度となっている。毎月解約する機会があるにもかかわらず更新し続けている企業が多いことから、企業側はある程度成果が出ていると判断しているようだ。
現在、地方企業と契約を結びオンライン副業をしている人は、ヤフー、ソフトバンク、アクセンチュア、楽天、サイバーエージェント、アマゾンジャパン、LINEなど大手IT企業に勤める30〜40代前半と、キヤノン、村田製作所、トヨタ自動車、東レ、ファイザー、花王、小松製作所、パナソニックなど大手グローバル製造業に勤める50代の2つのグループに分かれている。この2つのグループがボリュームゾーンとなっている理由は、地方の中小企業でニーズが高い業務内容によるようだ。
EC・ネット集客やデジタル化改善は、前者の大手IT企業の30〜40代前半の方のマッチング率が高く、製造業のデジタル化改善や人事、海外や首都圏営業などの業務は、大手グローバル製造業の50代の方が選ばれて契約している傾向がある。
地方の中小企業では、いわずもがな労働人口不足の減少により慢性的に人手不足。社員のほとんどは日々の現業を回すことに手一杯で、上記のような改善業務をやりたくてもそこに時間を割くことができない。ただ、地方の中小企業に今、必要なのは地道なPDCA改善の実行なのだ。だからこそ、この行き届かない部分に、都市部のオンライン副業の人材がうまくはまり、実際に成果が出始めているということだと言っていいのではないだろうか。
これに関しては、企業再生のスペシャリストで多くの地方企業の再生を手掛けている冨山和彦氏の著作「IGPI流 ローカル企業復活のリアル・ノウハウ」(PHPビジネス新書)に以下のような記述がある。
『多くのローカル企業の再生と再成長にとって重要なのは、しっかりと地に足を着けた、地味な努力の積み重ねである。「分ける化」「見える化」して、業務、事業、商品ごとの収支の改善努力を行い、儲かることを一生懸命やり、儲からないことは儲かるように改善するか、それが難しければやめる──。緻密に地道にPDCA(Plan〈計画〉、Do〈実行〉、Check〈検証〉、Action〈対策〉)を回し続けることが、ローカル企業の経営の基本なのだ。だから、ハーバードだのスタンフォードだのという類のMBAを持っているグローバルエリートはまったく不要だし、派手なスーパーカリスマ経営者もいらない。それなりの資質を持っている人が、正しく努力し経験を積めば、かなりの確率で到達できるであろうレベルの実務的な経営人材こそが求められている。』
オンライン副業は、在宅勤務などで生まれたスキマ時間を有効活用して月に10万円程度の報酬が増え、加えて自分自身の個人としての市場価値を確かめられ、地方とのつながりが生まれ多拠点生活のきっかけを得られるなどのメリットがある。
その一方で気を付けるべき落とし穴は、つい働き過ぎとなることだ。期待されることがうれしくて副業の仕事を受けすぎてしまい、そこに本業である雇用先の会社の業務で緊急を要する突発的な業務などが重なると、働く時間が長くなり過ぎてしまうことが出てくる。
雇用契約を結んで働く場合には、企業側に労働法に基づいて社員の労働時間を管理する義務がある。一方で、業務委託契約を結んで働く場合は労働法の範囲外となり、副業先の企業側には労働時間を管理する義務がなくなる。
副業先の業務での過労などで倒れてもその責任は全て自分自身で負うこととなる。余裕を持って仕事を受けることに気をつけられれば、「場所や時間から解き放たれた」新しい働き方ができるオンライン副業は、貴重な経験となるだろう。
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