Matt氏とFernandez氏が書籍の取材でインタビューした人の多くは、ある種のFOMO(fear of missing out:取り残されることへの不安)について語ったという。「ソーシャルメディアは人々の不安を顕在化させ、何か重要なことが起きているのに自分は取り残されているような感覚、自分は無視されている、あるいは見捨てられているという感覚」を人々に与える、とMatt氏。
新型コロナウイルスによって一段と明確になったように、テクノロジーは、これまでになかった素晴らしい方法で人々を結び付けることができる。地理的な境界を越え、コミュニティーを拡大し、アクセスが制限されている人々の世界を開く。だが、これらの利点には代償も伴う。「(テクノロジーは)無限の活動によって私たちの精神的なスペースを占拠して気を紛らわし、私たちの社会生活を決定づけているとも言える、本当の人間関係が欠落していることを気付かなくさせてしまう可能性がある」(Aboujaoude博士)
孤独とそれに近い「退屈」によって得られるものもあるが、テクノロジーはそれも妨げてしまうおそれがある。孤独と退屈は、少なくともある程度までは、自己認識と創造性、そして有意義な人間関係のありがたさを感じることにつながる。
一方、孤独は破壊的で、非常に恐ろしい敵になることもある。暗いベールであり、心にのしかかる重しだ。
「Virtually You: The Dangerous Powers of the E-Personality」などの書籍も執筆したAboujaoude博士は、次のように語った。「孤独と、私たちが今暮らしているような危険な世界が組み合わされば、倒し難い敵になる。精神的なもろさを生み出し、セーフティネットやライフラインがないように感じさせてしまう。それらを認識して対処しなければ、うつやほかのネガティブな感情を引き起こすおそれもある」
孤独感はほかの健康面にも影響を及ぼす。研究によると、孤独感は心臓病や糖尿病、認知症、免疫低下と関連があり、早死にの強力な予測因子と呼ばれているという。
医療サービス会社のCignaが実施した2018年の調査では、ソーシャルメディアを使うこと自体は孤独感の強さの指標ではないものの、対象の米国人のほぼ半数が時々または常に孤独感や疎外感を覚えると回答していた。研究者は、定評のある「UCLA孤独感尺度」(主観的な孤独と社会的孤立の感情を評価するために開発された20項目のアンケート)を使用して、18歳以上の2万人を対象に調査を実施した。
ジャーナリストで作家のNorman Cousinsは、「個々の人間が永遠に探し求めているのは、孤独を打ち砕くことである」と書いている。人間は本質的に社交的な生き物であり、人類学者によると、社会的な交流は種としての進化に大きな役割を果たしてきたのだという。
孤独が時に耐えがたい苦しみをもたらすことを考えると、すぐにつながれることを約束するハードウェアやソフトウェアがこれほど多くの人を惹きつけていることは、驚くに値しない。
無限のつながりを売りにしている企業について、Fernandez氏は、「彼らは孤独の癒しを販売することに専心しているのだ」と話す。「それこそがソーシャルメディアの本質の1つであり、孤独を商品化して病的なものとみなし、それを癒す方法を私たちに提供しているのだ。孤独が蔓延しているとしたら、それは資本主義の必要性と密接に関連している」(同氏)
Fernandez氏はそれを「孤独産業」と呼んでいる。
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