Dan Schawbel氏は、書籍「Back to Human: How Great Leaders Create Connection in the Age of Isolation」の著者であり、Workplace Intelligenceという企業のマネージングパートナーの立場から、現在の傾向について各種職場に助言を与えている。
同氏は、ユーザーが離れられなくなるようなデバイスやアプリ、サービスを作ることにテクノロジー業界が注力していることは認めている。一方、デジタルの策略を前にして私たちは無力ではないとも強調している。
「それは私たちのせいでもあるし、テクノロジーのせいでもある。大手テクノロジー企業が中毒性のあるデバイスを作るのは、それが彼らのビジネスモデルだからだ。(中略)だが、そのデバイスを使うのをやめて、電源を切ることもできるのだから、私たちも同罪だ。自分で選んで決められる」
Instagramの「いいね」やTwitterのリツイートが登場するずっと前から、テクノロジーは感情や習慣を形作っていた。
例えば、19世紀後半に鏡が手頃に手に入るようになったとき、「自分は他人にどのように見えているのか、ということを人々は以前よりも考えるようになった」と歴史学教授のMatt氏は指摘する。同様に、写真の登場によって肖像画が富裕層以外にも普及し、誰でも自分自身を画像で表現できるようになったと同時に、人々は以前に増して、自分のことを省みるようになった。
その後、1920年代と1930年代には、スイッチをひねるだけで一瞬にして沈黙を埋められるテクノロジーが登場した。ラジオだ。家族でリビングルームに集まって、Orson Wellesのおなじみの、(ある批評家の言葉を借りると)「力強いオルガンのような声」を聴いているときに、孤独を感じるのは難しかった。
私たちは、家でユーチューバーの動画を視聴することに慣れているが、当時、「電波を通して、離れた場所にいる人があたかも家に一緒にいるかのような体験をするという概念は、驚くべきものだった」とMatt氏は話す。同氏によると、そのせいで、孤独に耐えられないという感覚も生まれたという。多くの人が、スマートフォンやインターネットが原因でその感覚が生じたと考えているのと同じだ。
ロックダウン中に、生活を充実させるために「Zoom」を使ったさまざまなアクティビティーが次から次へと行われていたことだけを見ても、多くの人が孤独な状態を避けたいと考えていることが分かる。
「しかし、部屋が最も空虚に感じられるのは、誰かがここにいてくれたらいいのに、と考えているときだ」と詩人のCalla Quinn氏は綴っている。
Cignaの調査によると、他人と対面で交流することがほとんどない人と比較すると、対面での有意義な交流を頻繁に行っている人の方が孤独感のスコアが低く、健康状態も良好だという。孤独を専門とする研究者たちは、テクノロジーは、有意義なつながりを築き、それを深めるのに役立つとしている。だが、テクノロジーが有意義なつながりに取って代わることはできない。
Schawbel氏が引用したオックスフォード大学の調査結果によると、Facebookの150人の友達のうち、本当の友達が必要なときに頼れるのは平均で4人だけだという。本当の友達とは、手術の後に病院まで迎えに来てくれる友人や、引っ越しのときに荷造りを手伝ってくれる友人、恋人と別れた後、気持ちを整理する必要があるからもう1度だけ聞いてほしいと言う自分の話を、16回も聞いてくれる友人のことだ。
「こうしたすべての調査から、幸せの根源は人間関係であることが分かっているにもかかわらず、私たちはなぜ、テクノロジーによって自分は実際よりも多くのものを持っているかのようにだまされてしまうのだろうか」(Schawbel氏)
Zoom疲れという現象も発生し、話題になっている。このことは、Facebookの誕生日メッセージといった既存の手段を越える、新たなつながりの手段が登場するきっかけになるかもしれない。
「私たちがコロナウイルスから学んだのは、テクノロジーを使用すればするほど、実際には、ほかの人と対面してつながりたい気持ちが強くなるということだ。私たちがもっと人間らしくなるよう、後押ししている」(Schawbel氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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