ドコモ吉澤社長、菅官房長官の再び「料金値下げ」発言に反論--5Gや楽天モバイルにも言及 - (page 2)

楽天モバイルは様子見、サブブランド戦略は否定

——国内での新たな動きとしては、楽天モバイルの本格参入が挙げられると思います。現在の楽天モバイルに関する動きをどう見ていますか。

 基地局建設がもっと進捗すると思っていましたが、基盤の確保や労力がかかるということがあって(サービス提供が)後ろ倒しになっていますし、コロナ禍の影響もあり予定通りにいかない部分もあったと思います。ただ、通話無制限がアプリ経由とはいえ、2980円で無制限という料金プランはものすごいインパクトがありますし、それを引っ提げてきたことは相当な覚悟があるのではないでしょうか。

 ただ契約数が100万人に達したと言っても、300万人までは1年間無料ですし、「Rakuten Mini」の1円キャンペーンなどを実施していることから、新規で2台目として契約している人が多いのが現状ではないでしょうか。弊社から楽天モバイルに転出する人は非常に少ないですし、MVNOとしての楽天モバイルの契約者が移行した比率も高くないと見ています。

2020年3月に本格サービスを開始した楽天モバイルは100万契約を突破したが、そこには300万人に1年間無料でサービスを提供する、「Rakuten Mini」などを1円で販売するなどのキャンペーン施策が大きく影響している
2020年3月に本格サービスを開始した楽天モバイルは100万契約を突破したが、そこには300万人に1年間無料でサービスを提供する、「Rakuten Mini」などを1円で販売するなどのキャンペーン施策が大きく影響している

 1年後にエリアが拡充して多くの顧客が残り、使い続けるなら本当に大きなインパクトがありますし、「楽天市場」などで大きな会員基盤を持っていることから、それを融合させれば強いものがあると思います。ですが2台目・新規で、しかも現在無料でサービスを使っているという人たちが、1年後にどの程度残るかは分からないので、当面は様子見かなと考えています。

——楽天モバイルの本格参入を受け、KDDIがUQコミュニケーションズから「UQ mobile」の譲渡を受けるなど、サブブランド戦略を強化しています。御社はサブブランドに否定的な見解を示していましたが、考えは変わっていませんか。

 サブブランドに対する考えは今も変わっていません。サブブランドがMVNOを意識し、低廉であまり使わない人向けのプランというのであれば、弊社でも低容量のプランをチューニングして戦えるんじゃないかなと思っています。サブブランドの意味をどう定義づけ、サブブランド展開でどういう動き方をするのか見極めないと難しいのではないでしょうか。

楽天モバイルの参入を受けてKDDIは「UQ mobile」を自社に統合すると発表。サブブランド戦略を強化する動きに出ている
楽天モバイルの参入を受けてKDDIは「UQ mobile」を自社に統合すると発表。サブブランド戦略を強化する動きに出ている

ドコモの料金は高い?菅官房長官発言に反論

——菅義偉官房長官が6月30日に、再び「携帯料金は大幅な引き下げの余地がある」と発言しています。この動きをどう見ていますか?

 シェア1位のNTTドコモの料金が高いと言われても、KDDIやソフトバンクのメインブランドと料金差はほとんどありませんし、サブブランドもあって顧客が選択することもできる。また楽天モバイルの料金は世界的に見ても相当安いので、そうしたものをしっかり出せば内外格差は問題ないはずです。それにもかかわらず、メインブランドもサブブランドも下げないといけないというのはどうなのでしょうか。

 今回、総務省の「電気通信サービスに係る内外価格差調査」の対象となったプランは、いずれも1回線のみで使った時の価格で、「ファミリー割引」などは加味されていません。ギガホ単体での料金を見れば高いように見えますが、その利用者は15%のみ。残りの人はもっと安い料金で使ってもらっているのに、そうした実態が考慮されていないのです。

菅官房長官の携帯電話料金引き下げ発言の根拠とされる、総務省の「電気通信サービスに係る内外価格差調査」。「ギガホ」「ギガライト」の割引サービス適用前の料金が比較対象となっているという
菅官房長官の携帯電話料金引き下げ発言の根拠とされる、総務省の「電気通信サービスに係る内外価格差調査」。「ギガホ」「ギガライト」の割引サービス適用前の料金が比較対象となっているという

 また携帯電話料金は、ネットワークの信頼性やカバーエリア、通信速度、アフターサポート、さらには「スマホ教室」や災害対策などの環境を含めて決めているものであり、そのことを顧客に評価していただいた上で、支払っていただいているものと捉えています。

 先の調査には料金の裏にある環境が全く表に出てきていません。そうした部分をもっと顧客にアピールしないといけないという反省はありますが、(内外価格差調査は)そうした部分をもっと考慮すべきではないのでしょうか。

——現在はコロナ禍の影響を受けているドコモショップですが、1月の不適切メモ問題をはじめとして、最近問題が起きるケースが増えているように感じます。ドコモショップや代理店の今後のあり方について、どのように考えていますか。

ドコモショップもコロナ禍で営業時間短縮など影響を大きく受けたが、現在はさまざまな対策を施した上で通常営業に戻っている
ドコモショップもコロナ禍で営業時間短縮など影響を大きく受けたが、現在はさまざまな対策を施した上で通常営業に戻っている

 ドコモショップは契約や端末の購入だけでなく、顧客に直接コンタクトして弊社が提供する新しいサービスなどを提案できる、とても重要な場所です。ただ、かつての「レ点商法」のように手数料のためにサービスを契約させるのではなく、顧客の趣向や要望などを聞いて潜在的な要望を見極めながら、その人に役立つ、メリットのあるサービスを提案してもらわないといけないと考えています。

 一方、ショップだけでそれを実現するのには限りもあることから、オンラインを活用したデジタルマーケティングにも力を入れていきます。弊社では「d払い」や「dカード」などの利用で発生したトランザクションのデータを持っていることから、それらを活用して顧客の関心や興味を探り、ウェブやメールなどでアプローチしていきます。

 ただ、オンラインでの提案を理解する人もいれば、そうでない人もいます。ドコモショップを活用したスマホ教室や、スマートフォン決済などを経験してもらうなどして、シニア顧客を中心にリテラシーを上げていかなければいけない。それがドコモショップの存在意義だと考えていますし、5Gの体験ができる拠点という意味でも、ドコモショップの役割は絶対残したいと思うので、現在の約2300という店舗数は維持していきたいですね。

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