GAテクノロジーズが不動産売却でのスマート化に乗り出した。6月にサービスをリニューアルした「RENOSY スマート売却」は、売却活動の透明性をシステムで担保することで、オープンな売却活動を実現。売却を考えるユーザーが抱える「もっと高く買ってくれる人がいるのではないか」「本当に売却して大丈夫だろうか」という不安を減らし、不動産流通の活性化に結びつける。
不動産売買は、契約締結までの手順が多く、時間もかかるため、賃貸契約以上にスマート化が難しい領域。一般的な不動産仲介会社では、担当者が査定から販売、契約書作成、決済まで一連の作業を1人で担っており、進捗がわかりづらく、分業化が進んでいないこともデジタル化を阻む要因の1つだった。
「不動産売買契約を成立させるまでには多岐に渡る業務があり、それを一通りできないと業界では一人前とは認めてもらえない。一通り経験するまで約2年、戸建てに関する土地や敷地の問題など、イレギュラーな取引にも精通するまでには10年程度かかるとも言われる。しかし、アポイント取りから決済までの多岐に渡る業務を、すべて一人の担当者が担うと、書類作成や販売準備などに時間をとられ、肝心なお客様と向き合う時間が限られてしまう」とGAテクノロジーズ 執行役員の川崎総一郎氏は現状を説明する。
GAテクノロジーズでは、不動産仲介業務の効率化を見据え、RENOSY スマート売却でデジタル化と分業化を促進。契約書作成や重要事項説明、集客や販売ツールの作成等を専門性の高い部門が担うことで、営業担当者がお客様と向き合う時間を確保する。
デジタル化、分業化により、不動産売却の「わかりづらい」「不安」といったイメージ払拭に取り組むGAテクノロジーズが、新たにRENOSY スマート売却に取り入れたのが媒介契約時の電子契約だ。
「不動産売却において契約書締結が必要な場面は、媒介契約時と売買契約締結時の2回。売買契約書締結における重要事項説明は対面でのやりとりが定められているため、電子契約を用いて媒介契約時の非対面化を実現した」とGAテクノロジーズ LIFE-DESIGN Division IIIの田中一成氏は話す。
この背景には、新型コロナ感染拡大を受け、4月に発令された緊急事態宣言が大きく関わる。対面でのやりとりが制限される中、対面を基準としていた不動産売買は取引数で落ち込みを見せるケースが出てきた。その中で、いかに対面を減らし、成約まで結びつけるかのポイントになったのがオンラインでやり取りができる電子契約だった。
GAテクノロジーズでは、こうした状況を踏まえ、約3週間という短い期間で電子契約のオペレーションを構築。5月初旬から稼働を開始した。
「ここまでスピード感を持って開発できたのは、弁護士ドットコムが手掛ける電子契約サービス『クラウドサイン』を活用しているため。それをベースに自社の顧客管理システムと連携させたオペレーションを構築していった」と田中氏は開発の裏側を話す。
デジタルと実業の2つを持つGAテクノロジーズでは、社内にエンジニアを抱え、営業担当者とエンジニアが密にやりとりしながら、サービスを構築できることが特徴。RENOSYスマート売却における電子契約の導入も、そうした密のやりとりから、短時間で精度の高いものを作り上げたという。
導入から約2カ月が経過しているが、すでに8割の取引で電子契約を導入。「残りの2割はお客様の環境などを考えた上で、紙が良いと判断した場合。紙がやりやすいと感じるのは、従来のやり方に慣れ親しんでいるため。長年親しんだ業務フローを変えることは大変だが、電子化するメリットは大きい」と田中氏は強調する。
紙での媒介契約では、手書きで契約書を作成し、押印が必要になるなど、時間や場所が制限される。また書類に不備があると再度作り直して、お客様に郵送したり、持参したりと時間もかかる。この部分を電子化することは、かなりの工数削減につながる。
実際の開発においては「営業担当者やお客様が使うことを想定し、手数を少なくすることを心がけた。現場を知らないエンジニア主導で開発を進めるとどうしても、システムに当てはめたものになってしまうが、使いやすさを追求した」(田中氏)と営業部隊とエンジニアがともに働くGAテクノロジーズの環境を最大限にいかす。
「導入後、お客様からは時間が取られずにいいという意見が相次いだ。なかでも過去に不動産売買を経験した人からは、以前の契約時に比べてスムーズに進められることに驚かれる方が多かった」(川崎氏)と評判は上々だ。
「ITを活用した重要事項説明は社会実験も開始されており、デジタル化される日は必ずやってくる。それまでにほかのプロセスもデジタル化していく。不動産取引におけるDXは、売買契約の非対面化部分にフォーカスがあたりがちだが、不動産取引のプロセスは多岐に渡り、契約以外にもデジタル化すべきアナログ作業はまだ数多く存在する。そうした部分のデジタル化を進めておけば、売買契約の非対面化が可能になった時、一連のプロセスをDXすることができる。できるところからデジタル化を進めることで、業界のDXと何よりお客様の体験価値の向上に貢献していきたい」と川崎氏は今後について話した。
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