ときには未来的な戦闘機のパイロット、ときにはテレポートの呪文を唱えようとしている魔法使い。どんな気分でも味わえる。ヘッドセットをひっつかんで頭に装着し、手首にコントローラーをはめる。まわりのスペースを確認し、長い魔法の円弧を描いてプレイエリアを示す。現実の世界が消えて、いざ、仮想の世界に入り込む。
現実から仮想現実(VR)の世界に入り込むまでの時間が、「Oculus Quest」の場合、驚くほど短い。筆者がいつもOculus Questをお気に入りのVRヘッドセットに選ぶ決め手は、この点だ。1年前に筆者がレビューしたとき、Oculus Questは米CNETの「Editors' Choice」賞に輝き、同じく米CNETによる2019年の最も革新的な製品のひとつにも選ばれた。
2020年になった今も、どちらの評価も間違っていなかったと思っている。最初にOculus Questをレビューしたときから、世界は大きく変わってしまったが、このヘッドセットは今でも、常に手元にある。「Altspace VR」の世界に入ってライブインタビューを受けるときにも使ったし、どこか離れたところにいる役者たちのバーチャルな演技で上演中の演劇を見ることも、VRで簡単な打ち合わせに参加したりすることもできる。トライベッカ映画祭の動画を見たり、フィットネスゲームに打ち込んだりすることも可能だ。PCに接続すればアプリを確認できる。魔法の世界を探検したり、脱出ゲームを体験したりするのもいい。SFドラマ「スタートレック」に登場する、シミュレーテッドリアリティの世界を作り出す架空の装置、「ホロデッキ」を強化するための水中マスクのようなものだ。今のところ、没入体験を味わうにはトータルで最高のデバイスである。
Oculus Questが素晴らしかった、そして今も変わらず素晴らしいのは、そのシンプルさだ。オールインワンで、ほかのツールは全く不要。VRの世界に入りたいと思ったら、いつでも装着できる。ほかのVRヘッドセットは、今でもケーブルやコンソール、PCが必要なのに加えて、ドライバやらアップデートやらと煩わしい問題もある。
Oculus Questを持ってアルバ島へ休暇に行ってから、1年と1カ月が経つ。そんなライフスタイルがあったなんて、まるで1000年も昔のことのように感じられる。このときは、携帯性のことを考えていた。リリースの1カ月前にレビューしていたところで、ちょうど家族旅行の機会があったので、どのくらいコンパクトにまとめられるか気になったのだ。携帯用のハードケースにしまうと、大ぶりのヘッドホンという感じだった。荷物にはなるが、何とかなる。もちろん、休暇の間ずっと使っていたわけではない。何しろ、海があって砂浜があって、家族がいるのだから。それでも、使ってみるのは楽しかった。ヘッドセット内側のフォーム生地には、その後も何カ月間か、日焼け止めの匂いが残ったものだ。
それ以来、VRを使うときには休暇を連想するようになった。「Beat Saber」のようなゲームに入り込むと、アルバ島滞在のことを思い出し、ヘッドセットを取り外すとまたそこにいるような気がする。本当にテレポートさせてくれる、魔法のゴーグルのようになった。
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