新型コロナウイルス関連

アルヒ、投資用マンションローンから完全撤退--新型コロナ影響で業績見通しは未定

 アルヒは5月12日、2020年3月期通期業績を発表した。営業収益は262億200万円となり、過去最高益を達成。年間融資額は約8000億円で、住宅ローン市場シェアは4%近くに達した。業績見込みに対し、すべての項目でプラスで着地したが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、「事業環境の先行きは不透明」とし、2021年3月期の業績見通しについては未定とした。

 税引前利益は、73億1500万円、当期利益は49億7200万円。2月時点で税引前利益は71億2000万円、当期利益は49億円へと上方修正したが、それを上回る結果となった。独自商品である「スーパーフラット6/7」が高成長したほか、「auじぶん銀行」の商品などが順調に伸びた。アルヒ 代表取締役会長兼社長CEO兼COOの浜田宏氏は「銀行代理として変動商品の取り扱いを開始した。これはいずれ主力商品になると考えている」とした。

2020年3月期決算ハイライト
2020年3月期決算ハイライト
アルヒ 代表取締役会長兼社長CEO兼COOの浜田宏氏。会見は新型コロナウイルス感染拡大防止のためオンラインで実施した
アルヒ 代表取締役会長兼社長CEO兼COOの浜田宏氏。会見は新型コロナウイルス感染拡大防止のためオンラインで実施した

 融資実行件数は、銀行代理の商品入れ替えと消費増税の反動による伸び悩みがあったものの、前期比7.7%の増加。また、不正使用疑惑が報じられた投資用マンションローンについては「完全に撤退した」(浜田氏)と断言した。

 浜田氏は「今まで直接説明する機会がなかった」とし、投資用マンションの不正使用報道について言及。1月下旬に収入証明書類の偽造に関与したとの報道があり、1月27日には、西村あさひ法律事務所に調査指導を受けながら特別調査チームが計325件を調査したという。

 その結果、アルヒあるいはフランチャイズ店の担当者が書類の改ざん、あるいはそれを指南していた事実は確認されなかったとのこと。アプラスの調査では、収入証明書類の改ざんはアルヒよりも前の段階でなされたとした。

 浜田氏は「改ざんには関与していなかったが、疑義を受けること自体、アルヒとして隙きがあったと反省している。もともと投資用マンションローンが売上にしめる割合は0.6%と小さい。このビジネスのために自分たちを危機に陥れることはない」と明言した。

 さらに今後の不正案件撲滅に向けた取り組みとして、住宅ローン業界のリーディングカンパニーとして、総力をあげて不正案件撲滅に取り組むと発表。アルヒが中心となり、モーゲージバンク業界で横断的な不正利用撲滅のための活動をすでにスタートしているほか、AIを活用した不正申込人、不正事業者の検知システム「Hawkeye 1.0」を紹介。2019年12月から稼働しているが、2021年3月期中に不適切な物件価格の検知までできる「Hawkeye 2.0」を稼働予定であることも明らかにした。浜田氏は「不正を働く者に対しては、訴訟も辞さない」を強い姿勢を示す。

 居住用住宅ローンビジネスに集中していく方針を強く打ち出したアルヒだが、強みは「中古住宅マーケットに強いこと」(浜田氏)と分析する。「東日本大震災や消費増税など住宅着工件数が減少する危機もあったが、首都圏・近畿圏の中古物件市場の下げ幅は限定的で翌年以降回復を見せた。中古住宅は安定的でブレない市場。今後も着実に伸びる」と、屋台骨に位置づける。

過去の新築・中古物件市場推移
過去の新築・中古物件市場推移

コロナ対策で8割がリモートワーク「この状況は常態化したい」

 足元の危機は新型コロナウイルスだ。2020年4月の融資実行件数は前年同期と同程度としたが、「4月以降は対前年比で2~3割落ちている。この状況でも顧客ファーストを貫き、できる限りお客様のサポートをしたい。オンラインを使ったリモート接客なども取り入れている」(浜田氏)と現状を説明する。

 また、コロナ対策としてリモートワークも推進しており、「現在は8割がリモートワークになっている。ただ、アフターコロナ後も会社にくるのは週2~3回、自宅あるいは自宅近くで働けるリモートワークを常態化させたい。毎日満員電車に乗るようなライフスタイルはもはやおかしい。社員にはそういう辛い生活を送らせたくない。リモートワークは余計なものを削ぎ落とし、効率を上げられる。言葉は適切ではないかもしれないが、今回がいいチャンスと捉えている」と、今後の働き方を描く。

 ただし「アルヒの競争優位性の1つである審査スピードは、リモートワークでも維持できている。PCやスマートフォンを配布し、自宅でも一部の審査業務ができる体制を整えた。これによりクレームはほとんどきていない」(浜田氏)とした。

 2021年3月期の通期業績見通しについては「経済活動が低迷しており、見通しは成り立たない。予測ができる段階になったら、できるかぎり早く発表する。業績はどうなるかわからないが、株主にきちんと還元する方針はブレない」(浜田氏)とコメントした。

 先行き不透明な中、今後は住宅ローン事業への集中を掲げ、黒字化までに時間を要する新規事業は一時的に凍結もしくは延期する方針を示す。「従業員を重視し、雇用を維持する。困難な時期だからこそ、本業に集中していく。ただし、プラットフォームビジネスやすぐに収益があがるようなビジネスについては、粛々と開発を継続する予定。今回のことを機にテレワークしやすい街、家探しなどの情報をお客さまに提供するようなサービスもやっていきたいと思っている」(浜田氏)とした。

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