筆者が今持っているクリップオン式のプラスチック製ビューアーは、米国ではまだAmazonのサードパーティー業者から購入でき、本稿執筆時点では8ドル(約860円)程度だった。あらゆる種類のビューアーを注文して試したわけではないが、このようなタイプの製品は確かに存在し、段ボール製やプラスチック製のゴーグルも多数販売されている。こうした製品は何年もの間、店の在庫として残り、VRの本来あるべき品質レベルを下げた、がらくたのようなものだ。そう思っていた。
だが、自分でも驚くほどその見方はすぐに変わった。溺れる者は藁をも掴む、とはよく言ったもので、簡素なゴーグルも、つかの間の現実逃避や、新しいものを発見する機会を提供できるかもしれない。
任天堂が2019年、「Nintendo Switch」で遊べる「Nintendo Labo VR Kit」でGoogle Cardboard風のアイデアを試したことは、評価したい。VR Kitはスターターキット(ちょびっと版)が39.99ドル(日本では税込4378円)で、より多くの付属品が含まれる標準パッケージだともっと高くなる。Google Cardboardと同様、VR Kitにもさまざまな魅力があるが、視覚的な品質はやや劣る(とはいえ、ちょっと変わった素晴らしい工作キットが含まれる)。
Google DaydreamとサムスンのGear VRは、さらに優れていた。多くの点で、このヘッドセットでプレイできるゲームやアプリは、部屋全体を動き回る体験ができないことを除けば、Oculus Questが提供する品質に迫っていた。筆者はGear VRやGoogle Daydreamを何年も使っていないが、これらのヘッドセットの片手で操作可能なリモコンと、座って周りを見渡すスタイルは、使いやすくて、子供や祖父母に教えるのも簡単だった。ゴーグルは100ドル以下で入手でき、新しいスマートフォンの購入者に無料で提供されることもあった。今、これらのゴーグルを最近のスマートフォンでも使用できるように改良して、こうしたヘッドセットで利用できる動画や体験を増やすという取り組みを始めてみてはどうだろうか。あるいは、せめて、既存のコンテンツを探し出して、スマートフォンのプラットフォームに移植してみてはどうだろう。
Oculus Questの前に登場したVRヘッドセット「Oculus Go」は、それと同じアイデアを採用したスタンドアロン版だった。ユーザーの体の動きは反映されず、頭の回転の動きだけが反映され、魔法の杖のようなコントローラーを操作する。Oculus Goはそれでも相当素晴らしいことが分かった。筆者は先頃、いくつかのゲームを試してみたのだが、子供たちも短時間だが楽しい時間を過ごせた。トライベッカ映画祭のVR作品のような360度動画に関して言えば、Oculus Goは素晴らしいポータブルの没入型映画館のようになる。解像度は大画面テレビほど鮮明ではないが、悪くはない。
最高のVRを体験したければ、Oculus Questのようなヘッドセットが必要だ。Oculus Questはポータブルゲーム機のように感じられ、フィットネスにも使用できる。だが、(たとえ見つけることができたとしても)価格が399ドル(日本では税込4万9800円)からなので、ほとんどの人が購入を検討できるというものではない。筆者は現在の最高のVRゲームや最高のVRヘッドセットを推奨してはいるが、そうした現状も認識している。
だが、10ドル程度でちょっとした楽しい時間を過ごし、新しい世界への扉を開くことができるのなら、今こそ、いやせめて今だけでもVRを少し昔の精神に戻すべきなのではないだろうか。将来的には、スマートフォンに直接接続できる低価格のヘッドセットが登場するかもしれないが、現時点では実現していない。それまでの間は、今あるもので間に合わせなければならないが、VRに関して言えば、大多数の人はほとんど何も持っていないだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス