WealthPark、スペースリー、イタンジの不動産テック3社が、不動産会社のリモートワークについてオンラインセミナー「ロックダウンへの備え 不動産会社のリモートワークについて」を開催した。今回は「360度パノラマVRを活用した仲介業務支援、“遠隔接客”のご紹介」としたスペースリーのセミナー内容を紹介する。
スペースリーは、2013年に設立。VRクラウドソフト「スペースリー」など、VRを活用した事業を推進している。独自特許技術をいかした直感的な操作とURLを使った遠隔接客ができる同期システムを採用していることが特徴だ。現在、不動産業界を中心に3000社以上が導入している。
スペースリー 営業企画シニアマネージャーの岡田拡才氏は「市販の360度カメラで撮影した写真からVRコンテンツを自動制作し、効果的な活用ができるクラウドサービス」とスペースリーについて紹介する。「目指す世界観は、簡単にVRコンテンツを作って共有できる新たなコミュニケーションの構築。業務の効率化、自動化に結びつけているが、直近はリモートワーク推進の1つとして、非対面の営業活動の提供を目指す」と現状を話す。
スペースリーの社内では、2月20日からリモートワークが推奨になり、3月に入ってからは原則リモートワークへと切り換えた。社内会議は、Googleのコミュニケーションサービス「ハングアウト」を使用し、オンラインに置き換えて運用している。チャットは「Slack」、社外との打ち合わせと社外セミナーには「Zoom」を使用する。
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、対面接客や現地に赴いての内見が難しくなる中、スペースリーが推進するVR内見は不動産テックの中でも注目株の1つだ。しかし導入検討が高まる一方で、まだ実際に見たことがないという人もいるのが現状だという。
スペースリーでは、ブラウザ上からアクセスができ、情報をパノラマ画像内に埋め込んで表示。画面に出てくる矢印をクリックすることで、部屋間を移動できるなど、操作が簡単なVRコンテンツに仕上げている。さらにクリックひとつで部屋からの眺望が昼間から夜間に切り替わるなど、画面内に多くの情報を埋め込むことで、VR内からさまざまな部屋に関する情報を受け取れる仕組みになっている。
独自機能として提供するのが「閲覧者の興味分析」だ。VRコンテンツ内のクリックや滞在時間を集計し、どの部屋、写真、コメントにユーザーが興味を持ったかをグラフ化して一覧表示。VR化と分析をワンセットとして打ち出す。
「一般的には、VRを活用することで退去前物件の成約率を上げたり、部屋に対する反響を増やしたりすることが目的。新型コロナウイルス感染拡大の影響が出ている現在では、リモートで遠隔接客をして成約率を高める、今すぐできる問題対策と位置づけている。VRを活用することでこの状況においても事業を継続し、売上も確保できる」と岡田氏は話す。
今すぐできるコロナ問題対策の4つのポイントとして岡田氏は
岡田氏は「新型コロナウイルス感染拡大の影響で来店が減っていると聞くが、物件へのアクセス数は増えている。VRを活用すればユーザーが物件を検索するときに多くの情報が提供でき、より興味を持って問い合わせをいただける」と協調する。
実際、VRのサイト内活用により、問い合わせ率が1.5倍以上になったとの声があるほか、メールなど、お客様とのコミュニケーション内にVRのURLを貼り付けることで、反響反応率も10%以上にアップできたとのこと。「濃厚接触を避ける以外にも遠方のお客様とのやりとりにもVRは使える。すでにオンライン内見をして遠方のお客様と成約したケースもある」と事業継続にも高い貢献度を示す。
スペースリーが実施したアンケートによると、不動産事業者の3分の2が新型コロナウイルス感染拡大による「悪影響を実感している」と解答しており、今後の長期化により影響範囲の拡大が懸念されている。岡田氏は「内見数、来店数の減少は3月中旬時点で影響として出ている。今後の対策として遠隔接客のニーズが高まり、ウェブやITを活用するニーズが高まってくるだろう」と予想する。
「VRは物件詳細ページに簡単に組み込める。スマートフォンからのアクセスが増えている現在、PCでもスマホでもマルチに対応することで、問い合わせを増やせる。興味分析も同時にできるため、問い合わせから、見込み客を見極められる」(岡田氏)と問い合わせ率アップに貢献できるとのこと。
さらに反響反応率アップには、お客様ごとに専用のURLを発行する「セールスVR」を紹介。お客様の閲覧時間、アクセス日時、再生時の動きなどから、ベストなタイミングでお客様に連絡ができるとのこと。「クローゼットをクリックしているなということがわかれば、その情報をフォローしながら見込み客として判断できる」など活用法は幅広い。
「新型コロナウイルス感染拡大の影響で、お客様の来店は難しいが、物件に興味を示していただいているのであれば遠隔接客が有効。営業担当者とお客様が1対1で同じVRをみながら接客もでき、対面接客に近いコミュニケーションもとれる。ブラウザのあるデバイスで簡単に連動できるので、今すぐにでも始められる。5月からは複数人で画面を同期でき、双方向のアクション伝達も可能な『Web会議システム』のベータ版を提供開始する予定」とした。
さらに、VR上で部屋のサイズやカーテンレール、窓サイズなどを測定できる「AIサイズ推定」のベータ版も4月から提供する予定。ソファが入るか、冷蔵庫が置けるかといった問い合わせにいつでも対応可能となっている。
岡田氏は「VRがどのように使えるのか不安な人、疑問を抱く人は多いと思う。スペースリーでは、専任のカスタマーサポートチームを設け、導入支援から運営フォロー、電話、メールによるサポート対応を実施している。来店客数は減少傾向にあるが、オンラインでの情報を増やし、情報を分析することで見込み客を判断し、リモート接客につなげられる。業務全体の効率をあげながら、新型コロナウイルス感染拡大の影響がある現在でも、さらにその先の営業支援としてもVRは活用できる」とした。
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