朝日インタラクティブは、2020年2月18〜19日、「CNET Japan live 2020 企業成長に欠かせないイノベーションの起こし方」と題したイベントを開催し、どうしたら新規事業を生み出せるか、いかに新規事業人材を育てるかについて議論した。本稿では、新規事業を生み出したあとの「事業と人材の評価」をテーマにしたパネルディスカッションをレポートする
ディスカッションのタイトルは、「その新規事業は成功?失敗? 事業、人材評価の要」。パネリストには、セブン銀行 セブン・ラボ専務執行役員の松橋正明氏、三越伊勢丹 デジタル事業部事業企画・管理ディビジョン長 兼 IMDigitalLab(アイムデジタルラボ)取締役の北川竜也氏、LIXIL 理事LIXIL WATER TECHNOLOGY JAPAN新規事業推進部部長の浅野靖司氏、3名が登壇。モデレーターは、朝日インタラクティブ編集統括の別井貴志が務めた。
別井氏は冒頭、「このセッションは、ぜひ自分でやりたいと思って盛り込んだ」と話し、「その新規事業は、うまくいっているのか否か。新規事業に取り組んだ人の評価は、どのようにするべきか。新規事業を生み出したあと、事業の評価、人材の評価の悩みが、必ず出てくる。今日は、失敗談も含めて、ディスカッションしていければ」と挨拶した。
松橋氏は4年前から、セブン銀行で新規事業を担う「セブン・ラボ」で、自らを新規事業に振り切って邁進してきた。過去には「CNET Japan live 2018」基調講演に登壇し、同ラボの取り組みを語った。現在は、Dreming(ドレミング)との協業事業「即払い給与サービス」をはじめ、すでに20社のスタートアップと事業を開始したという。
「直近で大きく変化したのは、スマホATMだ。PayPayなど新たな金融サービス事業者とATMでつながる動きや、セキュリティでは不正検知プラットフォーム事業を子会社化して加速させる取り組みもある。今は、基幹事業と新規事業の両方を見ているが、人材やカルチャーが変わって、既存事業の中から新規へのチャレンジが出てくることが、私にとっては評価だなと思っている」(松橋氏)。
北川氏が三越伊勢丹に入社したのは、2013年。スタートアップ参画や新規事業創出支援に携わった経験を生かし、340年の歴史を持つ老舗でのDXに挑む。ドレスレンタルサービス「CARITE(カリテ)」、化粧品総合ECサイト「meeco(ミーコ)」、ワイシャツのオンラインカスタムオーダーサービス「HiTAILOR(ハイ・テーラー)」など数々の新規事業を、2018年度から矢継ぎ早にリリース。その狙いや詳しい取組内容は、2019年末のインタビューでも伺ったばかりだ。
「百貨店の顧客接点を平均すると、多い方でも年間7回、百貨店を取り巻く環境は非常に厳しい。DX推進で、接客の質の向上、顧客接点の拡大、オンラインとオフラインのシームレスな接続を目指している。我々は、出島のような形を取らず、既存事業とかなり連携して新規事業に取り組んでいる。組織を分け、別の評価軸で進めているが、その難しさや工夫について話せれば」(北川氏)。
LIXILの浅野氏は、新規事業推進部の責任者だ。3年間で2つの商品をリリースした。2018年秋には、調湿機能がありニオイを脱臭・軽減できるインテリアタイル「オンデマンドエコカラット」を発売。LIXILの既存建材を活用した企画だが、ユーザーがオリジナルで好きなデザインを作れ、自分で貼れるマグネット式にした点が新しい。消防機器メーカーと共同開発した、トリートメント泡シャワー「KINUAMI」は、美容という異業界への参入を視野に入れたという。
過去にCNET Japanのインタビューで浅野氏は、「ユーザーの価値に寄り添える製品開発をするために、LIXILが最もやっていないことに取り組みたい」と語った。あれから2年。ちょうど事業評価・人材評価に直面する。
「住設建材業界は、テクノロジーが進化しても、新たな製品は生まれにくい。このままでいいのかという健全な危機感のもと、新規事業をやってきたが、業界への良い刺激になる反面、既存事業の新たな競争相手になるという側面もある。そうした部署をいかに評価するかについて話したい」(浅野氏)
セブン・ラボの松橋氏、三越伊勢丹の北川氏、LIXILの浅野氏の自己紹介に続き、別井氏からの質問に回答する形でディスカッションに入った。まずは「事業の評価」について。
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