ドローンの“トップガン”を育てる--消防庁が研修強化、全国普及には課題も - (page 2)

 導入に向けた課題もある。消防用ドローンでは、リアルタイム伝送システムや、赤外線カメラなど、多くの機器を搭載するため、コストが上昇傾向にある。また、ドローンの飛行時間は約20分と、ヘリコプターとの比較では大幅に劣る。

ドローンが撮影した映像。消防用ドローンでは、高精細カメラの搭載などによるコスト上昇がネックとなっている(画像:センシンロボティクス)
ドローンが撮影した映像。消防用ドローンでは、高精細カメラの搭載などによるコスト上昇がネックとなっている(画像:センシンロボティクス)

 コスト面については、緊急消防援助隊を所管する消防庁広域応援室が主体となり、全国20の政令指定都市にドローンを無償で貸与。2019年度以降は、政令指定都市を持たない各都道府県でも、最低1基の配備を目指すとの方針を固めている。

 一方、各消防本部を所管し、今回の研修も担当する消防・救急課では、全国へのドローン配備計画は「今のところは無い」(喜多氏)という。消防団を所管する地域防災室でも同様で、総務省から各消防本部・消防団へのドローン導入策については、現時点では各都道府県に設置された消防学校への貸与に留まっているのが実情だ。

ドローンの導入拡大を目指す消防庁
ドローンの導入拡大を目指す消防庁

 このほか、少子化などで各消防本部の充足率が低下するなかで、ドローン運用のために部隊を編成することもネックとなる。

 消防庁が2018年に定めたガイドライン「消防防災分野における無人航空機の活用の手引き」では、ドローンの運用について、操縦者と安全管理者の最低2人、映像の中継が必要な場合にはさらに1人を追加した3人を確保することが望ましいとしている。

 喜多氏は、「ドローンの専属部隊を運用している本部もあれば、兼務している本部もある」と説明。今後はこの点についての意見交換を進め、運用方針を検討していくと語った。

ドローンの「トップガン」を育てる

 センシンロボティクスが今回の研修に参画した理由は何か。

 センシンロボティクス 代表取締役社長の北村卓也氏は、同社が注力するのは「災害対策」「設備点検」「警備・監視」の3領域だと説明。「全て日本の社会課題となる領域で、いずれもリスクが高い現場での作業。また、少子高齢化が進むために作業員のなり手もいない。しかも災害は増える一方だ」(北村氏)。これらは可能な限りロボットに担わせることで、人が現地に行かずにミッションが達成できる世界の実現を目指すと、北村氏は語った。

センシンロボティクス 代表取締役社長の北村卓也氏
センシンロボティクス 代表取締役社長の北村卓也氏

 同社では、Jアラートの受信でドローンが自動離陸し、状況を確認できる完全自動化ソリューションなどの実証実験を、仙台市と共同で進めてきた経緯がある。

 しかし北村氏は、「一足飛びに全自動化は無理」と、ステップを踏む必要があると説明。「自動化実現のためには、ドローンの『トップガン』を育て、それらが知識を広めていくといった活動が大事」と述べた。

 政府では、2022年を目処に、ドローンの目視外飛行を実現する目標を立てている。現状では視認範囲内のみに限られるドローンの飛行範囲が広がれば、消防分野でもさらなる活用が見込まれる。空の産業革命の時代、防災分野でも、さらなるドローンの活用が期待されている。

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