パナソニック、スポーツ事業推進部が実践する“儲かる”スポーツビジネス--集客前年比18%増

 パナソニックは、スポーツビジネスイノベーション「Keep Fresh」の提案を本格化させる。Keep Freshは、パナソニックが打ち出した「スポーツ現場を常に新鮮であり続ける」というコンセプトを実現するもので、映像・音響、省人化、デジタル、案内、コミュニケーション、移動といった領域で同社が提供するハードウェアやソフトウェアを組み合わせて提案する。

 来場者とつながる「ファンエンゲージソリューション」、雑務を軽減する「スマートバックオフィスソリューション」、快適に楽しむ「ベニューUXソリューション」の3つのソリューションを提供。従来の物販型事業スタイルから、ICTを活用したチケッティングサービスやデジタルマーケティングによって快適な競技場、観戦サービスを提供する「サービス型事業」、スポーツ解析による競技力強化や観戦を盛り上げる「コンテンツ型事業」へと展開。さらに、保有サポート資産を生かし、スポーツチームの組織運営やクラブ、スタジアムの運営といったスポーツ事業者をサポートする「運営型事業」へと広げることになる。

パナソニックのスタジアム・アリーナソリューション
パナソニックのスタジアム・アリーナソリューション

 すでに、運営型事業では、サッカーJリーグのガンバ大阪をモデルケースに、デジタルマーケティングと最新ICT技術によって、前年比18%増の集客アップという実績を達成している。

 パナソニック 東京オリンピック・パラリンピック推進本部スポーツ事業推進部部長の笹木秀一氏は、「ガンバ大阪は、2016年に、サッカー専用スタジアムである吹田スタジアムをオープンし、集客数が大幅に増加したものの、その後、新スタジアム効果がなくなり、2年連続で集客数が減少。危機的状況に陥っていた。パナソニックでは、2018年4月からガンバ大阪と協業を開始したところ、2018年度下期から成果が生まれはじめている。2019年度のガンバ大阪の成績は、残念ながら7位となったが、過去最高となる2万7708人が来場した。会員データや購入データ、入場データなどから顧客を分析し、来場者に対しては楽しいイベントを用意したり、コアのファンにはチームの内情を伝えるような情報を発信したりといったことを行った。勝っても負けても、楽しめるスタジアムを作り、また行きたいと思ってもらえるサービスを提供することで、戦績だけに左右されない集客を進めることができた」とする。

パナソニック 東京オリンピック・パラリンピック推進本部スポーツ事業推進部部長の笹木秀一氏
パナソニック 東京オリンピック・パラリンピック推進本部スポーツ事業推進部部長の笹木秀一氏
LinkRayを活用して、スマホに各種情報を提供する
LinkRayを活用して、スマホに各種情報を提供する

ガンバ大阪で実証した、心理的要因を探り来場客増に結びつける力

 ガンバ大阪が持つデータと、Jリーグで管理するデータを結びつけ、来場動向などを独自に見える化し、顧客ターゲットを設定。そこに向けたマーケティング施策を展開するとともに、随時検証を行いながら、改善を加えることで、設定した目標の達成を目指したという。

 当初は、パナソニックから10人規模のデータアナリティストが現場で支援をしたが、徐々に現場スタッフに引き継ぎ、現在は、ガンバ大阪のスタッフがツールを活用して、分析し、サービスを行っているという。「この成果は、サッカー以外のプロスポーツなどにも横展開をしていく考えであり、すでに提案を開始している」という。

映像を活用して来場者の盛り上がりを分析できる
映像を活用して来場者の盛り上がりを分析できる

 また、吹田スタジアムでは、344席用意されている車いす席の稼働が、100席程度に留まっていることに着目し、ロボット電動車いすを利用した実証実験を実施。搬入用に利用していたスロープを使って観戦席までの追従走行を行ったり、万博公園などの周辺施設を散策し、砂利道などでもスムーズに走行できることを体験したりといった取り組みのほか、スマホアプリを使って手伝いが必要なときに手助けを呼ぶといった実験も行った。

ロボット車いすは観戦時の心理的負担や物理的ハードルを減らすソリューションにつながる
ロボット車いすは観戦時の心理的負担や物理的ハードルを減らすソリューションにつながる

 「サッカー観戦をしたいが、雑踏での移動などに心理的負担や物理的ハードルがあるために、観戦できないという人たちに対して、安心して楽しんでもらえることを狙った。今後の高齢化社会にも対応していくことができるソリューションになる」(笹木氏)としている。

 また、地元ファン獲得を図るエリアマーケティングの実証実験も行っており、ガンバ大阪が保有するホームタウン会員データと、人口密度、世帯構成、推計消費額などの国勢調査情報を活用したほか、各世帯から最寄駅までの距離、最寄駅からスタジアムまでの乗り換え回数などの鉄道データを組み合わせ、ポスティングを行う配布エリアを選定。4試合で行ったところ、847人新規ホームタウン会員の獲得と、1564人の集客効果があったという。

 世帯数に対して、ホームタウン会員が少なく、スポーツ観戦料消費が高く、スタジアムへのアクセスが良好なエリアへのポスティングが効果的であるという結果が得られたという。

 これは、会員データとオープンデータとの組み合わせによって分析を行った成果であるが、とくに、距離や乗り換え回数などの心理的要因となるデータをスポーツ分野に活用した例は、これまでにないとしている。

 笹木氏は、「スポーツは、人口減少時代における成長産業のひとつであるとともに、世代間をつなぐコミュニティとなり、新たな結びつきを生み出すハブになる可能性を持っている。家電事業などを通じて、人に寄り添ってきたパナソニックにとっては、同じ意図を持った親和性の高いビジネスになる」と分析した。

デジタルチケッティングサービスにより、来場者の入場時間などを集計できる
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スマホを利用して入退場管理を手軽に行える
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