パナソニックとぴあが、スタジアムの次世代化に乗り出した。9月14日、両社はチケッティングの電子化によるスタジアム・アリーナの体験価値向上の取り組み開始について発表。11月には、パナソニックスタジアム吹田で新たなスタジアムサービスに関する実証実験も実施する。
2019年のラグビーワールドカップから、2020年の東京オリンピック、パラリンピック、2021年の関西ワールドマスターズゲームズ2021まで、日本では大型のスポーツイベントが続く。開催場所となるスタジアムやアリーナは、紙によるチケットで入場する人が多く、スタジアム内での飲食やグッズ購入も現金を利用するケースが大半を占めているという。
しかし、チケットの半券などが必要になる再入場の手間や、グッズや飲食購入時の行列など、現状に対する改善要望は出ているとのこと。一方、スタジアムの運営者や主催者も、集客のための企画力向上や高コストによる新規設備導入の難しさなど、課題が浮き彫りになっている。
今回の取り組みは、来場者、運営者側の要望や課題を、電子化されたチケットを導入することで、解決に結びつけるというもの。「スタジアムサービスプラットフォーム」として、「次世代チケッティングソリューション」のほか、簡単設置、運営ができる「次世代スタジアム端末ソリューション」「キャッシュレスサービス・ソリューション」、「スポンサー、地域連携サービスソリューション」の4つに取り組む。
いずれも、チケットを購入して発券、そして入場するまでの一連の行動を指す「チケッティング」をデジタル化することで、入場時の混雑緩和や来場者の行動履歴把握に結びつける。ぴあ 上席執⾏役員の東出隆幸氏は「チケットは来場者と主催者をつなぐタッチポイント。ここをデジタル化することで、スタジアム来場者のサービスの利用状況などを把握できる。電子化することで、アナログだったチケットサービスの煩雑さを改善できる」と意気込む。
11月24日の実証実験は、Jリーグのガンバ大阪対V・ファーレン長崎戦を開催するパナソニックスタジアム吹田で実施。すべての来場者が電子化したチケットで入場する形を整える。パナソニックとぴあに加え、大日本印刷と三井住友カードがパートナー企業として参加する。
ガンバ大阪戦では、来場者約3万人のうち、半数が紙のチケットで入場しているとのこと。実証実験ではこの1万5000人に非接触型のウェアラブルICを活用した電子チケットを提供する。ウェアラブルICはリストバンド型で、中にプリペイド機能をもったカードを収納。スタジアムでは、紙のチケットを持った来場者に入り口でリストバンドを配布。来場者はスマートフォンなどを使ってウェアラブルICにチャージができ、スタジアム内ではリストバンドをかざすだけで、飲食やグッズの購入が可能になる。
実証実験では、指定席購入者に対し、ウェアラブルIC側に席情報はつけられないが、使用する出入り口などおおまかな方向はわかるとのこと。入場時の情報読み取りには、パナソニックのAndroid端末「タフパッド」を使用。スマートフォンサイズのコンパクトボディのため、設置など大掛かりな設備投資をせずに導入できるほか、1台の端末でICやQRコードなど、マルチデバイスの読み取りができる。
電子チケットの導入により、来場者の購買履歴と来場履歴を紐づけて、より多くの情報をスタジアム運営に活かすことが狙い。将来的には来場回数に応じた特典の提供や、さらにスタジアム周辺の店舗と連携したクーポンの提供など、街全体の活性化を目指す。
パナソニック 執⾏役員の井⼾正弘氏は「スタジアムなどの来場者は混雑緩和やスムーズな運営を望んでいるが、それらの課題を解決するために現状のソリューションでは十分とは言えない。パナソニックは、競技場の映像や音響、照明などの物販型事業を手がけてきたが、今後は盛り上げなどのサービス型事業、コンテンツ型事業、さらにはスタジアムを含むまちづくりへの運営型事業も視野に入れ、事業領域を広げたい」と今後の展開について話した。
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