Mojo Visionのチームは既に、このスマートコンタクトレンズの初期プロトタイプを実際に装着している、とSinclair氏は話す。正常な酸素透過も確認されており、マイクロディスプレイとして装着可能だという。スイートルームのデモでは、装着まではさせてもらえなかったが、同社は、2020年内にはさらにモーショントラッキングとイメージセンサーの機能を追加したうえで、装着できるデモを実施することを予定している。Mojo Lensの現時点のプロトタイプでは、電力は無線で供給される。最終的には、小型のバッテリーをレンズ自体に内蔵し、さらに5GHz無線でデータを送受信できるようにする予定だ。
こんな装置を自分の目に入れるところは想像もできない。体に埋め込むというほどではないが、これまでに試したどのウェアラブルよりも、はるかに人体との接触度は高い。安全性はどうなのだろうか。何か問題が生じたりはしないのだろうか。
Mojo Visionは、医療的に承認された視覚デバイスとしてFDAの認可を受けるべく、準備をすっかり整えている。健康状態の悪化や生命を脅かす疾患に効果的な診断、治療を提供する画期的な支援デバイスに取り組んでいる企業にFDAが与える「Breakthrough Device」指定を既に取得しており、承認に向けて優先的に審査がされることになっている。同社は、黄斑変性症などの視覚障害をもつ人をスマートコンタクトレンズで支援しようとしており、パロアルトの視覚障害者支援団体Vista Center for the Blind and Visually Impairedとも提携している。
Mojo Visionによると、Mojo Lensには今後、文字の拡大や物体の輪郭ハイライト、コントラスト調整などの機能を追加し、さらにはその他の支援(例えば、キャプション表示や翻訳)機能も導入して、コンタクトレンズが真の意味で視覚支援デバイスとなるようにする予定だという。
Mojo Visionは、処方で同社のレンズを提供できるようにすることも計画している。社内に検眼医がおり、そもそもプロジェクト全体の成立には、米国内の他のコンタクトレンズと同様、FDAによるレンズの承認が必要なのだとSinclair氏は認めている。Mojo Visionの医療機器担当バイスプレジデント、Kuang-mon(Ashley)Tuan博士は筆者に対し、製品を研究開発(R&D)を通じて安全な製品にすることが主な目標だと語った。同氏は他の複数の企業で計20年以上にわたりコンタクトレンズ技術を開発してきた人物だ。「私はこれまでに3種類のコンタクトレンズを実現した。当社は社内に3名の検眼医を抱えており、うち2名はコンタクトレンズ分野のベテランだ」と同氏。「これを間違いなく安全なものにする必要がある」と強調した。
筆者の祖父は黄斑変性症を患い、「iPhone」が登場する前の1990年代には、武骨なコンピューターと巨大な拡大用スクリーンを使って文字を読む必要があった。彼がこのようなテクノロジーの構想について知ったら仰天したことだろう。少なくとも私は仰天した。
Mojo Visionによるスマートレンズの長期的な実現可能性については、筆者には判断できない。ラスベガスにあるホテルのスイートルームで1件のデモを体験したにすぎない。しかし、この体験のすべてを消化するのに1週間かかった。これまで体験してきたあらゆるものよりも可能性が大きいと感じたためだ。このレンズをARと呼ぼうとも思わない。どちらかと言うと何かバイオニックなもののように感じられる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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