苦境が続いた「楽天」の2019年--携帯参入で相次ぐトラブル、ヤフー・LINE統合の脅威も - (page 3)

統合するヤフーとLINEへの対抗策は?

 モバイル以外に関しても、2019年は楽天にとって難しい課題がいくつか浮上してきている。その1つは投資事業、具体的に言えば楽天が出資する米ライドシェア大手Lyftの評価損である。楽天は2019年12月期第2四半期決算で、Lyftの会計処理を変更して持ち分法適用としたことで284億円の評価損を計上。また第3四半期決算では、Lyftの株価急落によって約1030億円の減損損失を発生させている。

楽天はLyftへの投資に関して、持ち分法適用による投資評価損、株価急落による減損などが相次いでおり、投資事業に対する疑問の目が向けられている
楽天はLyftへの投資に関して、持ち分法適用による投資評価損、株価急落による減損などが相次いでおり、投資事業に対する疑問の目が向けられている

 同時期にソフトバンクグループが、米国でシェアオフィス事業を手がけるWeWorkに関する一連の問題で営業赤字に転落するなど、最近ユニコーン企業への過剰評価による損失が問題視され始めている。楽天は海外事業拡大のため出資やM&Aを多く実施しているが、Lyftでの損失を早期に解消できる策が打ち出せなければ、その路線も縮小せざるを得ないだろう。

 2つ目は、行政によるプラットフォーマーへの規制だ。日本政府はGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)などの巨大IT企業に対して、市場の独占を防ぐための規制に関する議論を進めているが、その規制の一部は、楽天など国内のインターネット大手企業にも適用される公算が高まってる。

 そこで気になるのが、楽天市場での送料に関する動向である。楽天は2019年にAmazonに対抗するべく、2020年3月より楽天市場で3980円以上購入した顧客の送料を無料にする方針を打ち出しているが、一方的なルール変更に出店者から大きな反発を招いており、独占禁止法違反との見方も出てきている。もし独占禁止法違反と判断されてしまえば、主軸となるEコマース事業での戦略の練り直しは避けられない。

 そして3つ目は、2019年11月に発表された「Yahoo! Japan」を運営するヤフーを傘下に持つZホールディングスと、メッセージアプリ「LINE」を運営するLINEの経営統合である。ともに日本を中心に事業展開している両社の経営統合は、GAFAなどよりも、同じく日本市場を中心に事業展開している楽天に大きな影響を与える可能性が非常に高いと考えられるのだ。

ヤフーの親会社であるZホールディングスとLINEは、2019年11月18日に経営統合を発表。2社と同様、日本での事業が主体となる楽天には特に大きな影響を与えると考えられる
ヤフーの親会社であるZホールディングスとLINEは、2019年11月18日に経営統合を発表。2社と同様、日本での事業が主体となる楽天には特に大きな影響を与えると考えられる

 国内のポータルサイト最大手と、メッセンジャーアプリ最大手が経営統合すれば、より一層大きな顧客基盤が生まれることは必至だが、それに加えて両社はソフトバンクの連結対象となる。そのため、今後はYahoo! JapanだけでなくLINEも、ソフトバンクの携帯電話事業との密接な連携が図られる可能性が高く、Eコマースや決済・金融など、楽天の主力事業を脅かす存在になると考えられるのだ。

 もっとも、ヤフーとLINEの経営統合完了は2020年10月を予定しているため、2020年中に大きな動きが起きるとは考えにくい。しかし、LINE Payがメルペイなどと共同で加盟店開拓を進めるべく設立したMobile Payment Alliance(MoPA)が、この経営統合の余波を受ける形で連合を解消するなど、徐々に影響が出始めていることから、楽天が対抗策を打つための時間はあまり残されていないのかもしれない。

 楽天は携帯電話事業の立て直しが急務だが、ヤフー・LINE連合に対抗するための一手も求められ、プラットフォーマーとして行政の影響なども考慮しなければいけない状況にある。それだけに同社にとっては、2020年も課題多き1年になりそうだ。

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