パナソニック津賀社長「赤字事業は完全になくす」--ソリューション型へビジネスモデルをシフト - (page 2)

聖域のない拠点集約で無駄を省く経営に

 今回の会見では、1000億円の利益貢献の内訳について明らかにした。1点目は、退職および採用差で、300億円の人件費削減を図るという。津賀社長は、「競争力を維持するための人員を確保する」としながら、「2021年度に向けては、定年退職などでの退職人員が、採用予定数を上回ることから、トータルでは人員が減少となる見込みだ」とした。

 2点目として、間接業務の削減や、拠点集約などの効率化によって、300億円の固定費削減を目指すとした。「依然として多い内向き仕事や、重複業務などの無駄を省くとともに、拠点を集約し、一層の間接業務の効率化を進める」と述べた。

 拠点集約については、「どんどんやっていく」と述べ、「中南米では、メキシコ工場でのテレビやAV機器の生産を終了。今後、多くの拠点が点在するアジアや欧州などでも聖域なく拠点集約を行っていく。中国は全体では強化するが、拠点が分散しており、地域ごとにできるだけ集約する必要がある。日本においても、液晶を生産していた姫路工場は、将来的には車載用角形電池の工場に変えることになる。事業を変えていくことで拠点の集約も実施できる。ただ、1カ所で大きな効果が得られるものではなく、比較的小さなものを積み上げていくことになる。300億円の削減効果では3分の1程度である」と語った。

 3点目は、構造的赤字事業への対策であり、これらが生み出している400億円の赤字を縮小する点だ。「すでに、具体的な施策を定めつつあり、着実に実行していく」と述べた。

 低収益体質からの脱却に向けて津賀社長は、3つの基本方針を掲げた。1つめは、基幹事業での利益成長だ。「競争力のある基幹事業で、将来に向けたビジネスモデル変革を進め、強固な利益の柱へと育てる」とする。2つめは、外部パートナーとの共創による新たな価値創造。「自社の力だけでは難しい価値の創造に挑戦し、競争力を強化、収益性の向上を図る」とした。そして、3つ目が構造改革の断行。「構造的赤字事業の撲滅は、この中期戦略において、最低限必要なことだと考えている」とした。

 津賀社長は、「これらの取り組みにより、収益体質を徹底して強化するとともに、個々の事業の競争力向上に取り組んでいく。また、2030年までの長期的視点においては、『くらしアップデート』を通じ、人のくらしにフォーカスしたお役立ちを創出し続ける会社を目指す」と、2018年9月の創業100周年にあわせて発表した方針を改めて強調した。

売り切り型からソリューション型へビジネスモデルの軸足をシフト

 津賀社長は、5月の中期戦略の発表時に、空間ソリューション、現場プロセス、インダストリアルソリューションの3つの事業を「基幹事業」に、家電、住宅を「共創事業」に、車載機器、車載電池を「再挑戦事業」に区分したことに触れながら、それぞれの事業の取り組みについても説明した。

 基幹事業は、これまで培ってきた技術力やモノづくり力などの強みが活かすことができ、現在も、営業利益率7%の高収益な領域であり、さらには「市場成長性」、「ビジネスモデル変革の可能性」の観点でも優れている事業であることを示したほか、将来の「くらしアップデート」の実現にも、くらしの「インフラ」的存在として不可欠な領域と定義。EBITDAを高めるべくリソースを集中し、企業価値向上を目指す姿勢を示した。

 「基幹事業は、いずれの事業も、単品売り切り型から、ソリューション型のビジネスモデルへと軸足をシフトすることが基本的な方向性となる。海外電材やデバイスなどはオーガニックな成長が見込まれることから、強みのある領域でしっかり稼ぎながら、既存の製造設備にソフトやデータ活用を掛け合わせた『ファインプロセス』や、デバイスだけでなく、モジュールパッケージとしてソリューションを提供する『システム』領域を成長させ、収益性を高める。その上で、新たな空間価値の創造やサプライチェーンにおけるプロセス革新など、より複雑で、中長期的に大きな変革が見込まれる領域への投資を進める。さらなる投資とビジネスモデルの変革により、成長させながら、営業利益率7%をさらに持ち上げたい」とした。

 ここでは、空間ソリューションについて時間を割いて説明。「空間ソリューションは、くらしアップデートに最も近い事業」とし、「この領域では、当社が家電や電材を中心に、人に寄り添う事業で培ってきた健康や快適といった利用者の感性に訴える価値提供を、オフィスや商業施設といった非住宅の空間にも広げていくことになる。だが、単にパナソニック製品だけでそろえる『まるごと』的な発想ではなく、ライフソリューションズ社の電材商品と、アプライアンス社の空調、空質や、コネクティッドソリューションズ社の映像、音響など、カンパニーを超えた技術、商材を連携させるとともに、AIやIoT、センシングによるデータ分析の活用によって空間全体を制御して、人起点での最適な空間価値の創出に挑む」とした。さらには、「『HomeX』との連携によって、住空間も含めて人を取り巻く空間全体でのソリューションの提供にも挑戦していく」と述べた。

 津賀社長は、サービスを重視する姿勢についても説明。「これまでのメーカーか、サービス業かという区分けは、単に作業を分担してきたにすぎなかったといえる。今までのメーカーは大量生産で、多くの人に同じものを提供し、お役立ちを果たしてきたが、これが変わってきた。絶えず新しいものを求めたり、ネットで商品を購入したり、高齢者と若者のニーズが大きく変化するなど、ニーズを見ると、大量生産、大量販売では対応できなくなってきた。単にモノを所有するのが過去の価値観であり、これも変わってきている。こうした変化を捉えれば、メーカーもサービス業とパートナーシップを組みやすくなってくる。また、サービス業もメーカーと手を組まないとできることが限られるという理解も進んでいる。サービスを重視するのは時代の流れにあわせたものである」と説明。

 さらに「工場を起点にして、モノを作ったり、大量に売りさばくための商品企画をしたり、それに最適な販売プラットフォームはどうかという姿ではお役立ちができない。できる形に組織を変え、できるようなパートナーシップをとっていくということが大切であり、そこに対しては自然体で臨みたい」などとした。

 一方、共創事業は、地域での協業や他社協業で競争力を強化。戦略をスムーズに進めるため、従来のやり方を抜本的に見直し、自社リソースだけを前提としない柔軟な資本政策や、より自由度の高いブランド政策の導入を進めるとした。

中期戦略のポイント
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