パナソニック津賀社長「赤字事業は完全になくす」--ソリューション型へビジネスモデルをシフト - (page 3)

「テスラ向けの電池工場を中国に構える計画はない」

 ここでは自由度の高いブランド戦略についても言及。「2008年にパナソニックに社名を変え、商品ブランドについて、ナショナルをやめ、パナソニックに一本化してきた。パナソニックというブランドは、社名、商品ブランドであり、部品などのBtoBをやる上でも大きな価値を生んでいる」と前置きし、「今までは、資本比率が5割を切った企業の製品には、ブランドを使わないとしてきたが、その制約を緩めて、ブランド価値の向上と競争力の向上を両立することを決定した。ブランドの源泉にあるのは、くらしにお役立ちするということから生み出された価値である。資本が過半を持たなくても、ある一定の条件を満たせば、そのブランドを大事にしたい。資本が5割を持たなくても事業を続けるのは、競争力を高めてお役立ちするのが目的であり、それによってブランド力が落ちるのが目的ではない」などとした。

 さらに、再挑戦事業においては、強みを活かせる領域に絞り込み、徹底して収益性の改善に取り組む姿勢をみせた。

 再挑戦事業に含まれる車載電池については、「テスラ向けの電池工場を中国に構える計画はない。中国市場は特殊性もある。テスラが中国生産の電池を採用するのか、米国ギガファクトリーから運ぶのかはテスラが決めることである」とし、「パナソニックが取り組んでいるのは、ギガファクトリーの生産性向上である。35GWhを生産する電池工場を目指してきたが、そこにはまだ少し届いていない。これを早期に実現するとともに、電池の中身を変えていくことで、大きな追加投資なく、生産性をあげることがファーストプライオリティである。今後、採算性が改善し、キャパシティが不足するということになれば、テスラとの話し合いで、どのようにしていくのかを協議していく」と語った。

 今回発表した施策について津賀社長は、「これまでの取り組みは、プラズマパネルなどの収益性の悪い事業に対して、止血的な措置をし、既存事業が安定的に成長することを前提に、車載などの成長事業によって、売上げと利益の上積みを図ろうとした。だが、既存事業の上に成長事業を乗せていくという考え方だけでは、2030年に向けた絵が描けない。それは社会の変化が、既存事業をそのままでは残させてくれないということであり、社会変化にあわせて全体を変えなくてはならないということである。2018年、100周年を迎えて、再スタートを切るという思いに至り、今回の発表につながっている」と位置づけた。

 一方、津賀社長は、パナソニックの基本姿勢についても改めて言及し、「パナソニックは、家電を中心に、人に寄り添い、モノづくりを通じてお役立ちを果たしてきた会社である。この強みを時代の進化に合わせて磨き上げ、くらしの領域でお役立ちを広げていくことが、当社の価値であると考えている」とコメント。「人の観点では、家の中はもちろん、街全体でのアップデータブルなくらしの実現を目指し、家電などの住空間における提供価値や強みを、公共空間にも広げて進化させることがてきる。また、我々が得意としてきた住空間でも、個々のお客様の求めるものは多様化、複雑化しており、こうした流れに対応すべく、従来の家電ビジネスのあり方を変革し、新たなお役立ちに挑戦する」と述べた。

ハードウェアメーカーにはない「逆の見方」ができる松岡氏を招聘

 2019年10月にGoogleのバイスプレジデントなどを務めた松岡陽子氏がパナソニック入りしたことにも触れた。「AIやロボティクスで世界トップレベルの技術専門性を持つ松岡陽子氏を当社に迎えた。彼女を中心に、人に寄り添う空間を対象として、新たな価値やビジネスモデルの創出を加速することになる」と説明した。

 また、「すべての領域でIoTが重要になっている。耐久消費財は、お客様が一方的に商品を使うだけで、フィードバックがあがってこない状況では、くらしアップデートを支える事業につながらない。空間を考えて、どうやってIoTを使っていくのかを考えるのが空間ソリューションであり、IoTを使って、人やモノの動きを徹底的に見える化し、いい形で制御し、サービスを提供するのが基本の考え方である。松岡氏は、もともとロボティクスをやったり、AIをやったり、技術開発をしてきたが、Google Nestでは、ビジネスモデルを変えるという役割も経験している。私がやりたいことはビジネスモデルを変えていき、これによってお役立ちを拡大していくということである。そして、それを実現するのは技術の役割であると考えている。この点では、意気投合するところがあった」とコメント。

 続けて「家電を変えるには、個々の家電をネットワークにつなぐだけの単純なやり方ではだめで、横串を通して、人のくらしや空間なりを、きっちりとIoTで見て、家電にフィードバックしていかなくては、大きく物事は変わらない。パナソニックは、ハードウェアメーカーでなければできないことがわかっているが、その一方で、ハードウェアでは、価値の訴求が難しいと考えている。だが、松岡氏は、逆の見方ができ、ハードウェア以外のことは私がやるといってくれた。くらしアップデートを一緒にやろうと、意気投合して盛り上がったが、パナソニックに来てもらえるのかが心配だった。しかし、決断して、チームを連れてきてくれた。これからが楽しみである」と述べた。

 また、津賀社長は、「モノの観点では、お客様の嗜好、消費行動が多様化するなか、食品や衣料品業界でも、製造業とくらしの関係は大きく変わっている。ここで、モノづくりの会社としての強みを活かし、工場からお客様に至るまでのモノの流れの効率化を進め、さらには安全、安心といった価値も加えながら、くらしと製造業を最適につなぐことで、より良いくらしの実現に貢献する」とし、「人とモノの2つ視点で絶えずお客様とつながり、一人ひとりのくらしに最適なソリューションを提供する会社。このように自らの姿を再定義し、今後も世の中に求められる、価値ある企業となることを目指す」と述べた。

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