積水ハウスが、施工現場や工場で、ごみゼロを実現するなど徹底した環境への取り組みを公開した。11月15日、「『積水ハウス エコ・ファーストパーク』4周年 気候危機を考える環境シンポジウム&施設見学」を実施。環境を考えた施工現場、工場、リサイクルの現状などを紹介するとともに、環境先進企業として推進する温暖化対策などについて話した。
積水ハウスは、1999年に「環境未来宣言」、2005年に「サステナブル宣言」を掲げ、資源循環や日本の在来種にこだわり、地域の気候に合わせて樹木を植える庭づくり「5本の樹」など、環境活動を推進。2008年には業界初の「エコ・ファースト企業」に認定されている。
2009年には「CO2 50%以上削減モデル」の販売を開始。2013年にはゼロエネルギー住宅を手掛けるなど、2050年の「脱炭素」に向けた活動も積極的だ。最近では、戸建てにとどまらず、賃貸やマンションのZEHを進めており、2018年1月には、全住戸ZEH賃貸住宅「シャーメゾン ZEH21」を石川県金沢市に、2019年2月には全住戸ZEHマンション「グランメゾン覚王山菊坂町」を愛知県名古屋市に建設した。
積水ハウス 常務執行役員環境推進担当の石田建一氏は「私たちの事業は戸建てだけではない。マンションや賃貸住宅など、事業全体をゼロエネルギー住宅にするのが目標。戸建ての市場はできた。次は賃貸に取り組む」と意欲を見せる。
昨今の自然災害においては「最大雨量や風速の設計値を変更し、台風対策を施している。ただ、今後は洪水リスクを考えないといけない」と次なる取り組みを掲げる。夏に急増する自宅での熱中症については「喫緊の課題。熱中症は高齢者に多く、その理由の一つがエアコンの使用を我慢してしまうため。賃貸でも太陽光発電をつけることで、エアコンを使えるようにしたい」とした。
石田氏は「積水ハウスの環境戦略の特徴は事業戦略と一致していること。2009年にグリーンファーストを開始したがその結果、平均単価は2割増し、お客様満足度も10%上がった。環境に重要なことは、事業にも有効だということが継続できる理由」と戦略を明かした。
シンポジウムでは、環境先進企業である戸田建設 価値創造推進室副室長の樋口正一郎氏とライオン CSV推進部長の小笠原俊史氏を迎え、パネルディスカッションも開かれた。モデレーターはWWFジャパン専門ディレクターの小西雅子氏が務めた。
戸田建設は2010年にエコ・ファースト企業に認定。事業活動で使用する電力を2040年までに50%、2050年までに100%再エネ電力にすることをRE100目標として掲げている。ライオンは、1960年代に世界で初めて生分解性構造の洗浄成分AOSの工業化に成功したことをはじめ、リンに替わる洗浄助剤を配合した無リン洗剤の開発など、エコな洗剤の開発に取り組んでおり「エコへの取り組みはライオンのDNA」とする。
小西氏が「なぜ環境活動への取り組みが早くできたのか」と聞くと、石田氏は「正しく未来を予測して人より早くやるということ。どうせやらなくてはいけないのであれば、率先してやっていこうと思っている。それが企業評価につながる。ただ、環境面だけよくて売上がついてこないのではだめ。例えばCO2の排出権を買ってくることもできるが、それでは事業が苦しくなったときにやめられてしまう。ZEH事業であれば、事業が悪くなってもっと販売に力を入れろということになる。環境と事業を一体化することで環境貢献も社会貢献もできる」と、理由を話した。
樋口氏は「社内を説得するのは大変だった。しかし2010年にエコ・ファースト企業の認定を受けたところから社内の雰囲気が変わった。社内議論を繰り返し、説得は地道にやり続けた。時間をかけ、財務リスクも含めた上で説明している」と経験談を披露した。
2050年までに事業所活動におけるCO2排出量ゼロを目指すことを含めた「LION Eco Challenge 2050」を発表したライオンは、ここに至るまでの経緯を「何度も経営と話し合いをしながら進めた。その中には心痛めたり、バトルをしたこともあった」と小笠原氏が説明。「植物原料を使った環境向けの洗剤を四半世紀前に発売したが、売れなかった。ただこの25年間に社会の目も変わり、選択基準も変わった。それを受け前に進んだ」とし、現在発売中の洗剤「スーパーNANOX」は植物由来の洗浄成分を使っているとした。
パネルディスカッションのテーマは「1.5度目標達成に向けた企業の取り組み」。気温上昇を2度ではなく、1.5度に抑えるための取り組みについては、石田氏は「すでにZEHが85%になっており、開発費はあまりかからない。工場転換の必要もなく、移行リスクはないと思っている。マーケットにあわせていくかが重要」とコメント。小笠原氏も「お客様にとっての価値を事業の根幹にして、お客様が使うと自然とエコになる設計が必要」と話した。
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