食のデータ化で超未来型の食生活に--産業の垣根を超えたOPEN MEALSの取り組み

 10月30日、東京ベルサール御成門タワーで行なわれた「CNET Japan FoodTech Festival 2019 “食”の新世界に挑戦するイノベーターたち」では、食の世界で起きているさまざまな課題に対し、最新テクノロジーを駆使して新たな食を生み出そうとしている挑戦者たちが集結。各種講演が行なわれた。

 講演のなかで注目されたもののひとつに、2018年のSXSW(South by Southwest)に「寿司を転送する3Dプリンター(寿司テレポーテーション)」を出展し話題を集めた、電通の榊良祐氏の講演があった。「食のシンギュラリティ!?共創が生みだすフードテック産業」をテーマに、未来のフードテック産業の共創と、その最前線について語った。

電通 第3CRプランニング局 アートディレクター 榊良祐氏
電通 第3CRプランニング局 アートディレクター 榊良祐氏

 榊氏は2004年に電通へ入社以降、主にアートディレクターとしてさまざまな企業の広告やキャンペーンを担当してきた。それが4年前にフード×テクノロジーのプロジェクトに携わるようになり、OPEN MEALSプロジェクトを立ち上げ、現在に至っている。

 OPEN MEALSプロジェクトとは、あらゆる料理をデータ化し、インターネットを介して転送し、それを3Dプリンターやフードマシンで出力するという、データ食革命を起こすフードクリエイティブチームである。

 これまでに6つぐらいプロジェクトを立ち上げており、その中でいちばん注目を集めたのが、冒頭のSXSWに出展した「寿司テレポーテーション」だ。これにより、世界各国のメディアで取り上げられ、一躍有名になった。

OPEN MEALSが注目するフードテックの潮流

 農林水産省の2015年のデータによると、世界の飲食料マーケット規模は890兆円にも上る。そのうち4.8%が毎日の食事に満足している人(食ラボ2018年調べ)。つまり、ほとんどの人が食に満足しておらず、よりいい食を求めている市場が広がっていることを意味する。

世界の飲食料マーケット規模。でも食に満足している人は4.8%と非常に少ない
世界の飲食料マーケット規模。でも食に満足している人は4.8%と非常に少ない

 さらに農林水産省の予測では、2030年世界の飲食料マーケット規模は1360兆円になるという。いい食を摂りたいという市場は莫大に広がっていくため、それをどうテクノロジーによって改善していくのか。そこに、ビジネスチャンスを感じた人たちが、どんどん入ってきて、フードテックという産業が広がってきている。

 米国では、2014年ぐらいからフードテックへの投資が増えてきている。フードテックのカンファレンスもここ3、4年で増えてきており、注目度は高いという。OPEN MEALSが注目するフードテックのキーワードは、

1.Sustainability(持続可能性)
2.Personalizing(個人最適化)
3.Automatizing(自動化)

 の3つ。1つ目の持続可能性は、食はいろいろな所に影響力があるので、たとえばCO2の削減や食糧不足、フードロスなど、課題が山積している。持続可能な未来を実現するフードテックとして、今投資が集中しているのが代替肉。畜産業はCO2排出量が全世界の18%と言われていて、非効率的なのではという声があがっており、健康志向もあって注目度は高い。

 またAI×農業も注目されている。気温や水などITで制御し、それをAIに学ばせて、最適なアルゴリズムを導きだして成長させ生産性の向上を図っている。さらに昆虫食も、将来宇宙などでタンパク源の不足を補うために、期待されている分野だ。

OPENMEALS製100%ブランとベースのメニュー。まだまだ味的には発展途上だが、卵は本物に近い味を実現しているという
OPENMEALS製100%ブランとベースのメニュー。まだまだ味的には発展途上だが、卵は本物に近い味を実現しているという

 2つ目の個人最適化は、健康意識の高まりや食のニーズ、ライフスタイルの多様化などにより、超・個人最適化を実現するフードテックだ。たとえば、尿を採取し不足栄養検査から最適なサプリを提供したり、DNAや血液から最適な栄養バランスのレシピを提案してくれるサービス。さらに、完全栄養主食として、忙しい現代人に最適化した栄養オールインワンの食事も増えてきている。

 今後、DNAデータや栄養状態データ、嗜好性データ、運動データなどをHealth IDとして登録しておくと、デリバリサービスがHealth IDを元に個人最適化された食事が提供されるようになるという。 

 3つ目の自動化とは、人材不足や家事の効率化の時短として始まったもの。料理をもっと楽しくやろうという試みで、たとえば「ロボットサラダバー」などロボットを使って自動化しようとするレストランが急増。現在はエンターテイメント寄りだが、今後は人材不足を補うものだ。

 また、「3Dプリンターレストラン」はコースの一部に3Dプリント食を取り入れたり、「IoT調味料マシン」はネットと連携し、調味料の調合してくれるキッチンツール。料理のめんどうなところを助けるサービスがどんどんでできている。

調理の自動化vs主婦の罪悪感。すべてを自動化してしまっては、食を楽しむという点ではだめで、めんどうなところだけをサポートしていくということをふまえて進めていかなければならない
調理の自動化vs主婦の罪悪感。すべてを自動化してしまっては、食を楽しむという点ではだめで、めんどうなところだけをサポートしていくということをふまえて進めていかなければならない

 これら3点を踏まえて、進化させていったとき、どういう未来があるのか。それを実践しているのがOPEN MEALSである。

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