スマートロックを開発するスタートアップのPacPortは9月12日、同社が開発したIoT宅配ボックス「PacPort」を発表し、同日からクラウドファンディングサイト「Makuake」で先行販売の予約受付を開始した。宅配物を受け取る際の手続きをAIなどを活用してフルデジタル化し、不在時の荷物の受け取りや発送を少ない手間で、安全、確実に行えるのが特徴。Makuakeでの購入受付は11月29日に締め切られ、12月1日以降の商品発送を予定している。価格は3万9800円。
PacPortは、Wi-Fi接続でクラウド連携する電子錠を内蔵した宅配ボックス。雨や攻撃に耐える金属製の外装に、電源ボタンとプッシュ式のダイヤルボタンに加え、外側と内側にカメラを搭載した電子錠が取り付けられている。サイズは幅400×高さ600×奥行500mm。宅配業者が生成する荷物の追跡番号を元にしたQRコードやバーコードを外側のカメラに読み取らせることで解錠する仕組みで、荷物の追跡番号をいわば鍵にして手間の軽減や安全性向上などを実現している点が新しい。
たとえば現在、多くのECサイトでは商品を購入すると、その商品を配達する宅配業者が生成した追跡番号がメールなどで通知され、この追跡番号を宅配業者のウェブサイトで検索すると、その時点の荷物の場所・ステータスがわかるようになっている。PacPortではこの追跡番号を宅配ボックスに活用するため、通知メール内の追跡番号をAI処理によって自動抽出し、ユーザーのPacPortにひもづける形でクラウドに保管する。
その後、宅配業者が配達時に、伝票に記載されている追跡番号を元にしたバーコードをPacPortのカメラにかざすか、ダイヤルボタンで追跡番号を入力すると、クラウド上で追跡番号を照合し、解錠する。荷物を入れて扉を閉じると自動で施錠される。
一方、ユーザーは専用アプリ上で荷物の発送や配達のステータスを確認できる。配達が完了となった後は、追跡番号を元にしたQRコードを専用アプリで表示し、その画面をPacPortにかざすだけで解錠して荷物を受け取れる。もちろんダイヤルボタンで追跡番号を入力し解錠してもよい。本来の配達先と異なる人の宅配ボックスは解錠できず、受け取る側も自分宛てに送られてきた荷物が入った宅配ボックス以外は開けられないため、誤配送の防止につながるとしている。
この仕組みによって、従来型のダイヤル錠タイプの宅配ボックスのように「宅配ボックスに1つにつき荷物1つ」という制限もなくなる。PacPortでは現在のところ最大3つまでの宅配物を1つのボックスで受け取ることができ、オンラインショッピングやフリマアプリを頻繁に利用するようなユーザーであっても宅配ボックスを最大限に活用できるとしている。2個目以降の配達時に、すでに入っている荷物が盗難される恐れもあるが、これについては内側にあるカメラで開閉の都度撮影し、クラウドに保管することで原因追跡を可能にしている。
メールからの追跡番号の抽出が必要となるため、システム側ではECサイトや宅配事業者ごとに個別の対応が必要となるが、すでに荷物の受け取りは43社のECサイト事業者と14社の宅配事業者に対応。さらに自宅からの荷物の発送も可能となっている(現在のところ、実質的には個人宅の宅配ボックスからの発送サービスを提供しているヤマト運輸のみ)。
PacPortを解錠するための一時的なキーを他人と共有する機能もあり、荷物の代理受け取りや、友人との個人的な荷物の受け渡しに利用することもできる。近所に住んでいる友人から借りているもの、預かっているものを自分が不在の時にやりとりしたいときに使うことが考えられる。将来的にはフリマアプリと連携し、容易に荷物の発送ができる仕組みの提供も視野に入れているという。
宅配事業者や物件オーナーに向けた機能・サービスも展開する。まず宅配事業者向けには、解錠・施錠のタイミングや配達物の内容を投函記録として残した「投函証明」をウェブサイトやアプリから発行できるようにする。宅配事業者の考え方次第ではあるが、これをユーザーの捺印や署名代わりに用いることが可能だ。複数台のPacPortを一括管理できる仕組みも用意し、マンション・アパートへの設置にも対応する。
PacPortは自宅にある既存のWi-Fiでクラウドに接続することから、LANケーブルの敷設は不要。さらに電子錠部分は単三電池6本で最大1年間動作するため、別途電源を用意する必要もなく、設置場所の自由度は高い。当初は戸建て物件での利用を想定して商品展開するが、集合住宅やコワーキングスペースでのニーズも高いと見込んでおり、すでに試験運用を進めているところだ。
ECサイトの普及に加え、フリマアプリやネットオークションの利用拡大により、不在時の荷物受け取りや発送が可能な宅配ボックスのニーズが高まっている。発送にも対応する宅配ボックスは、これまで限られた種類の製品か高価な製品しかなかったが、PacPortは比較的リーズナブルな価格設定ながら、本格的な電子錠と多数の機能を備え、安全性にも配慮した。発表会で登壇したPacPort 代表取締役社長の沈燁(ちん・よう)氏は、2019年度中の販売目標に1万台を掲げ、将来的には宅配ボックスの市場シェア2割を目指すとした。
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