国内最大のクラウドファンディングサービス「Makuake」を運営するマクアケは6月、Makuake発の製品を展示・販売する「Makuake SHOP」が10店舗を超えたことを明らかにした。伊勢丹と期間限定で実施した日本酒バー「Makuake×ISETAN 日本酒BAR」などのコラボレーションも増えているという。
オンライン、それもクラウドファンディングからリアルへと販路を拡大していくユニークな事例と言えるが、なぜ同社はあえて実店舗を設けるのかーー。マクアケ共同創業者/取締役の坊垣佳奈氏に狙いを聞いた。
ーー現在、Makuakeにはどのようなプロジェクト実行者が集まっていますか。
Makuakeの仕組みを活用しているのは、プロダクト(製品)領域のメーカーさんですね。もちろん製品といっても幅広く、たとえば日本酒も100蔵を超えています。
他のクラウドファンディングサイトは個人の活動支援が多いですが、Makuakeは産業支援からスタートしているので、考え方からサイト運営が異なります。個人活動支援では当人が頑張ることになりますが、製品中心の産業支援では、我々に集客力やコンバージョンするコンサルティング力が求められます。現在のMakuakeは他サイトよりも集客力があり、(プロジェクトの)ページ構成力を備えていると思っています。なので、産業領域でもご活用いただいているのだと思います。
ーー近年はクラウドファンディングという考え方も世の中に徐々に浸透し、プロジェクト実行者も増えているように感じます。Makuakeをローンチした当初と比べて、何か変化を感じますか。
大企業が参加されるケースもありますが、やはり地方に実行者が広がっていますね。また、クラウドファンディングの利用方法が正しく理解され始めていると感じます。従来は「クラファンって資金調達ツールだよね」とか「寄付活動のお金集めだよね」と思っている人が多かったのではないでしょうか。それは1つの方法でしかなく、Makuakeは前述したように産業支援が核にあります。
ですが、(お金集めという)イメージが浸透していたのも事実ですから、そこを塗り替えるのは大変でした。最近はようやく実行者の実績も広まるようになり、「新製品開発」「マーケティングやプロモーション」「予約先行販売に近い」といった理解が広まったように感じます。この時点で大企業でも話が通りやすくなり、地方事業者も進んで使ってくださるようになりました。また、銀行との連携もスムーズになっています。
ーー地方企業からすると、クラウドファンディングによって販路が全国規模に広がっていると思います。
地方企業に限りませんが、Makuakeは基本的に持ち出しがかからない仕組みなので、スタートラインが低くなります。さらに使ってみると実行者さんは予見していなかったメリットを感じられているのではないでしょうか。酒蔵さんなどは「直接ユーザーと関わる」ことを実体験されたと思います。
あとは予期しない反応や新しいユーザー層を得られるなど、Makuakeの利用前と利用後のサービスイメージが異なるそうで、そこを喜んでいただける実行者さんが多いですね。また、リアル店舗と異なりMakuakeは一気にブレイクする傾向が強いので、次のステージにも進みやすくなると思います。
ーークラウドファンディングサイトであるMakuakeがリアル店舗にも取り組む狙いを教えてください。これまでに伊勢丹、東急ハンズ、ドコモショップなどで展開していますね。
基本的にMakuakeは製品が「生まれる場」であり、「広がるきっかけを作る場」でありたいと思っています。そのため、製品販売後のサポートを担う事後サポートという部署を用意しました。現在の店舗運営もこの部署が中心になって取り組んでいます。
リアル店舗によって、これまで(オンラインの)Makuake経由でしか手に入らなかった製品が、街中で購入できるようになる。一種のハブですね。たとえば、伊勢丹さんには展示ブースを設けていますが、日本酒売り場の隣にあるバーで、Makuakeから生まれた製品やクラウドファンディング実施中の日本酒を試飲できるイベントを開催しました。
Makuakeの店舗展開も多種多様で、同じ座組みを用意することに価値は感じていません。たとえば「変なホテル」さんと実施したのは、生活に近い空間で製品を体験し、興味を持ってもらいながら支援者につなげる仕組みです。また、「北海道くらし百貨店」さんとは、北海道物品だけを取り扱うご当地ブースを用意しました。
流通各社もECが浸透する中で次のアクションを求められているタイミングではないでしょうか。新しいモノが生まれるMakuakeとコラボレーションする価値を感じていただければ、マクアケにとってもブランド構築や認知度を高めるチャンスにつながります。お互いに新しい流通の形を作っていけたらと考えています。
ーー単に店舗という“スペース”で販売するのではなく、プロジェクト実行者の価値観とマッチする形でリアル店舗を展開されていると。伊勢丹との取り組みを始めたのが2015年8月なので、4年で10店舗は少ないのではと感じていましたが、1店舗ずつこだわりをもって展開されているからこそ、この数なのですね。そうすると、コラボレーションの問い合わせは多いのではないでしょうか。
はい、(現店舗数の)10倍以上のお問い合わせをいただきますが、ほとんどお断りさせていただいています。リアル店舗はプラスアルファの事業なので、店舗の設置には条件を設けてきました。1つ1つの店舗に弊社の社員を配置することは不可能なため、提携販路側で人をご用意いただくか、無人販売が可能でなければ成立しません。そのため「テナントを持ってくれ」となると難しいですね。
マクアケはクラウドファンディングが事業の主軸ですから、そこに人を割り当てたいんです。可能性によっては(リアル店舗の)事業拡大も検討しますが、今のフェーズでは社員を配置するのは難しいですね。また、マクアケが販売の主体になると、実行者に対する中立性を保てません。プラットフォーマーとしては、どの実行者も大事な存在ですから、我々で目利きをすることは避けるべきです。
あくまでもリアル店舗に対するマクアケの立ち位置は“仲介”であり、流通さんの目で製品を選択してほしいですね。たとえば、伊勢丹さんの服飾エリアに店舗があるからといって、服飾関係の製品だけを置くのではなく、Makuake発の製品であればガジェットも含めて扱っていただくようにしています。
ーーMakuakeから生まれた400以上の製品のうち、10%以上の製品がリアル店舗にも展示されているそうですが、店舗とオンラインで売れる製品の傾向に違いはありますか。
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