世界190カ国以上、1億5100万人のユーザーに映像配信サービスを届けるNetflixが、レコメンデーション、ユーザーインターフェース、パートナーシップなど、独自の取り組みの一部を紹介した。「NETFLIX HOUSE:TOKYO2019」と題し、最高の視聴体験の実現に向け、努力している裏側を明かした。
1997年にオンラインでの映画レンタルサービスとして創業したNetflixは、2007年にストリーミングサービスを導入。2010年のカナダを皮切りに、海外進出を果たし、日本では2015年からサービスを提供し、現在約300万の会員がいる。
Netflixプロダクト最高責任者のグレッグ・ピーターズ氏は「Netflix成功要因の1つはオリジナル作品の配信。日本におけるサービススタート時にも、日本でのオリジナル作品を作ろうと考えていた。サービススタート前にコンテンツの制作を決めたのは、日本が初めてだった」と当時を振り返る。
日本のオリジナル作品は海外でも配信されており、特にアニメ作品は高い人気を得ているとのこと。最近では「全裸監督」が好評を得ており、「インド、台湾、シンガポールなどでトップ10に入る大成功の事例」(ピーターズ氏)と評した。
人気コンテンツを生み出す一方で「いつでもどこでもコンテンツが見られることが重要」(ピーターズ氏)と、バックグラウンドのシステムに触れ、「Netflixでは、移動中での視聴を考慮し、KDDIとの提携を発表、自宅での視聴デバイスの中心となるテレビは、ソニーと10年以上パートナーを組んでいる。さらにコンテンツをより簡単に提供できるセットトップボックスも素晴らしいデバイス。パートナーとの協業により、快適な視聴体験をユーザーに提供できる」と訴えた。
NETFLIX HOUSE:TOKYO2019では
オリジナル作品のほか、数多くのライセンス契約作品も提供するNetflixでは、ユーザーの好みを類推し、お薦めをする「レコメンデーション」が重要だ。サービス登録時に好みの作品を3つ選ぶことで、ユーザーの好みを類推。その後、視聴時間が増えるに従って、レコメンデーションはどんどん好みにあったものになっていくという。
この際、視聴リストへの作品追加、高評価、視聴時間帯なども加味しているとのこと。トップページに掲載されるおすすめコンテンツは、これらの視聴情報を分析し、表示する作品、さらに掲載する順番なども変えているという。
また、各作品にはタグ付けをすることで分類。例えば「ULTRAMAN」であれば「アニメーション」「カーチェイス」「Sci-Fi」といったジャンル的ものから、「ナイーブ」「才能のある」「父子の絆」など作品の内容を落とし込んだものまであり、数千タグを用意しているとのことだ。
1つの作品を多様な方法で届けることも重視しており、アートビジュアルも数多く用意するという。「全裸監督」では「犯罪」「パワー」「富」というテーマに加え、「ロマンス」といった切り口まで複数のビジュアルをそろえる。タグ付けやレコメンデーションの機能を強化することで、検索時間を短くし、本編を見せることを重視する。
映像配信サービスの弱点の1つは、不安定な環境による視聴の制限だ。Netflixでは「作品をきちんと提供することを保証している」としており、その実現のため、努力を重ねている。
作品を配信するには、符号化、ネットへの展開、ストリーミングなどの工程がある。符号化においては、2015年以前はすべてのコンテンツを1つのエンコードで圧縮していたという。しかしコンテンツによっては色味の少ないもの、動きが多いものなど、特徴が異なるため、2015年以降はタイトルごとにエンコードを変更。異なった符号化を適用することで、ビット数の低減に成功したという。現在は、この概念をさらに発展させ、シーンごとの符号化を実現している。
ネットワーク環境の改善にも取り組んでいる。2015年以前は1GBのデータで可能な視聴時間は1.5時間だったが、2015年以降は2.5時間へと長時間化。現在では6.5時間へと伸ばしており、この計算だと全裸監督は1GBのデータ量で8エピソードが見られる。
ネットへの展開は「視聴者の近くに置く」ことを前提にしており、日本にもローカルサーバーを設置。これにより低遅延、ネットワークの輻輳低減にもつなげている。
エンコード方式の改善、ローカルサーバーの設置に加え、ユーザーの通信環境にも踏み込む。Netflixでは「高画質」「中画質」「低画質」と3つの動画品質を持ち、状況の変化に応じて、適応しているとのこと。通信環境に応じて画質を変化させることで、素晴らしい視聴体験を提供しているという。
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