ミズーリ州セントルイスのダウンタウンのすぐ西側、「ゲートウェイアーチ」からもほど近いところに位置するセントルイス大学(SLU)。1818年創立の、伝統と格式を誇るカトリック系私立大学だ。だが、2世紀の歴史をもち、ミシシッピ川以西では最古の大学でありながら、同大学はこのほど、大学として初めて学生寮にスマートスピーカーを導入した。
たいていの大学と同様、SLUでも新しい構想は毎日のように生まれている。技術の進化と時代の変遷は、学内の多彩な建築をざっと見渡しただけでも、すぐに見てとれる。
19世紀に当地の実業家Samuel Cupplesが建てた堂々たるロマネスク建築の邸宅のすぐ隣には、1959年に建てられたピウス12世記念図書館がある。同図書館には最近、3Dプリンターやロボット、さらにタッチスクリーン式のテーブルやホワイトボードの壁を備える共同スペースが導入されたばかりだ。
遊歩道を挟んだところに、最新の学生寮Grand Hallがある。2017年のオープンで、1年生と2年生528人が寄宿できるが、そんな新しい建物よりさらに新しく導入されたのが、各部屋に設置された小さい円筒形のルームメイト、Amazonの「Echo Dot」だ。
導入から2年目を迎え、この「Alexa at SLU」の取り組みが、今では寮生の生活文化の一部になっている。各部屋に、SLUの紋章が入った第2世代のEcho Dotが設置され、使用方法や、学生がどんなことを聞けるか、技術的な問題があったときはどうするかといった説明も掲示してある。
2300台のEcho Dotは、Amazonの「Alexa for Business」プラットフォームで稼働する。各Echo Dotでは、Amazon Web Services(AWS)を通じて開発されたSLU独自の「Alexa」スキルが使える。そのスキルで、学内のイベントや建物の営業時間から、近所の飲食店情報まで135種類以上の質問に答えてくれるのだ。
学生は、「iHeartRadio」で音楽やポッドキャスト、ラジオ放送を流せるし、大学の学生サービス窓口も含めてどこにでも電話をかけられる。
なぜ、大学にAlexaを導入することになったのか。その道のりは、2013年にSLUに赴任したDavid Hakanson氏から始まった。同氏は現在、副学長を務めるとともに、最高情報責任者および最高イノベーション責任者として、同大学のIT部門を管轄している。
Hakanson氏は、自宅にもスマートホーム技術を導入しており、また高等教育は技術開拓の場であるという信念から、技術愛好家であれば、次なる大きな計画を考えるときに誰もがとるであろう行動に出た。ラスベガスで開催されるコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)の展示会場を訪れることにしたのである。
「毎年の恒例行事のひとつとして、CESにチームを派遣している。あの場で披露される技術の多くは、やがて私たちの家庭に入ってくる。つまり、大学側からすると、学生たちの生活にも入ってくるということだ」と、Hakanson氏は説明する。
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