そのため、個人を特定できる情報はいっさい記録も保存もされず、SLUのチームにも送られない。Echo Dot本体には、1台ごとに寮の部屋番号とMACアドレスが貼られているが、どの部屋からどんな質問があったかというデータは収集されない。
ITチームは、端末のグループ全体に関する基本的な統計を、まとめて見ることはできる。だが、学生ひとりの、それどころか部屋番号の特定につながる情報を見ることはできない。
「私たちが具体的な質問を知ることはない。分かるのはカテゴリーだけ、音楽に関する操作回数とか、一般的な質問の回数だけだ。そういう情報なら、時系列上で確認できるが、夜中の2時にどんな質問があったかということは、決して分からない」(Hakanson氏)
学生のプライバシーを保護することは、確かにEcho Dot導入チームの最優先事項だ。だが、Alexa for Businessプラットフォームでは、SLU独自のAlexaスキルでどんな点に改善が必要かを把握することまで制限されてしまう。
この点について、Hakanson氏はこう指摘している。「どんな質問に答えられなかったかも、私たちには分からない。大学側でも、どんな質問が回答不能だったかは知りたいところだ。それが分かればAlexaスキルに追加できるからだ。それでも、そこは分からないし、その理由は十分に納得している。当然のことだと思う」
IHS MarkitのシニアリサーチアナリストであるDaniel Sutton氏は、サービスプロバイダーや、Alexa for Businessのようなプラットフォームを専門としており、次のように述べている。
「Alexaが基本情報にアクセスできる自動ツールになって、学生からの問い合わせを減らす機会を提供している。音声インターフェースなので、学校の情報にすぐにアクセスでき、面倒なイントラネットサイトや、待ち時間が長くなりがちな学生サポートサービスを使わずに済む」
学生がキャンパスでのイベント、図書館の開館時間、シャトルバスの時刻表といった情報にAlexaスキルでアクセスするには、SLU(「スリュー」と発音する)に確認するようAlexaに伝えないといけないが、コンピューターやスマートフォンで調べようと思ったら、もっと時間がかかるだろう。
6つの市場で1万4000人の消費者を対象に実施した最近の調査でも、プライバシーの心配からスマートスピーカーを買っていない人は15%いることが分かった、ということもSutton氏は指摘している。学生の間で見ても、プライバシーを懸念する傾向は同様だが、実際にはコストの方が制限要因としては大きいという。
学生が自分ではスマートスピーカーにお金を使えない、または使いたがらないとすれば、SLUのEcho Dotは学生に金銭的な負担を増やすことなく学生寮に音声アシスタントを導入する解決策になっている。このプロジェクトは、キャピタルファンドで運用されており、授業料には転嫁されていないからだ。
後編に続く。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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