「産業づくりは映画づくりのようなもの」--SUNDRED CEO、留目真伸氏ロングインタビュー - (page 2)

経営のトップは、とっくにマインドチェンジができている

――日本で成長領域にリソースが集約されない、最大の理由はどこにあるのでしょう。なぜ人が動かないと思いますか?

 日本の就職市場を見ればわかりますが、就職ランキングには大企業の名前がずらっと並んでいて、昔から大きく変わっていません。大企業に入ったら入ったで、保守本流のやっぱり一番稼いでいる部門に行きたいというのが日本人のメンタリティですよね。そこからはみ出すと、ちょっと居心地が悪くなってしまうというのが、日本の大企業の姿です。これは個社の問題ではなくて、そういう社会性だということですね。

 保守本流が産業を作っていくパワーを持っていた高度成長期なら、それでも良かったのかもしれませんが、今は変化が求められている時代。もちろん変えていくべきですが、社会性というものはそう簡単に変わらないので、結局はみ出せない。

 先ほどの海の家の話もそうですが、たとえばPCの会社でPCとは違うバリューチェーンを作っていくような仕事をしようとすると、社内にはその知見がないので外に行って違う会社の人に会ったり、スタートアップの人に会ったりすることになります。

 そうすると今までネクタイをしていた人が、いつのまにかTシャツとジャケットになっていたり、話す言葉も変わってきたりして、どんどん会社の中で異質な存在になってしまう。これを皆嫌うのです。

「経営のトップは、実はもうとっくにマインドチェンジができている」と留目氏
「経営のトップは、実はもうとっくにマインドチェンジができている」と留目氏

 一方で経営のトップは、実はもうとっくにマインドチェンジができていて、イノベーション経営だ、変革だ、となっているわけです。新規事業も各社やりたくて仕方ない。現場の人達も会社を離れて腹を割って話すと、みんなすごく危機意識を持っていて、新しい挑戦をしなければいけないとわかっている。自分でそれをやりたいと思っている人もいる。

 それなのになぜできないのかというと、そこはカルチャーの問題であり、空気の問題なのだと思います。本気で新しいことをやろうとしたら、本気で変人にならなきゃいけない。そこを周りも本人も踏み切れないのが、日本の大企業の今の姿だと思います。

――そうした現状の中で、具体的にはどのように、新しい産業のグランドデザインを描いていこうとしているのでしょうか。

 産業というのは、プラットフォーム型のビジネスとアプリケーション型のビジネスの組み合わせだと思っています。プラットフォーマーがいて、アプリケーション型のビジネスをやっていく人たちがいて、これが相互に良い関係で作用して、自律的に成長していくのが、産業のあるべき姿だと思います。

 ただこの良い相互関係というのは、そう簡単には出来上がらない。プラットフォームをやりたいと手を挙げる大企業がいても、キラーアプリケーションがなければ、そのプラットフォームは使われないで終わってしまうかもしれません。逆にスタートアップが手掛けるすごくおもしろい事業があって、その中にはプラットフォーム化した方がいい要素があるのだけれど、それをやるためのリソースがないということもあります。

 だから成長領域に対して、どんなプラットフォームがあってどんなアプリケーション事業が出来上がってくると産業化するのか、そのイメージというかグランドデザインを描くことがとても重要です。その領域にアプリケーションが足りないなら、アプリケーションを作り、プラットフォームが出来上がっていないならプラットフォームを作らなければならない。両方ないなら、両方とも作る必要があります。そのためにはまず、トリガーになるような事業体を見つけ出すか、作り出して支援し、成長させていくことです。その上でステークホルダーになる会社だとか、キーとなる人にグランドデザインを共有した上で、一緒にやりましょうと声をかけ、リソースを集めるということをやっていこうと思っています。

――新しい産業を創り出す中で、SUNDREDとしてどのようなビジネスモデルを考えているのですか。

 全体のプロジェクトをマネジメントしていくというのもそうですし、トリガーとなる事業体を育てていくというところでは、その設立からやっていくにあたってエクイティ(equity)を持って、あるいはストックオプションをもらいながらやっていくというビジネスモデルを考えています。ナレッジやリソースをどう集約していくか、そのためのコーディネーションをどうするかというプロセスについては、自分なりに持っている仮説もありますし、周囲の方の力も借りながら体系化をしていきたいと思っています。

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