「産業づくりは映画づくりのようなもの」--SUNDRED CEO、留目真伸氏ロングインタビュー - (page 4)

日本が一気に変わって行くきっかけに

――新規産業を100個創出するという目標の達成には、同じように個社に閉じこもらない考え方ができる経営者をもっと増やしていく必要がありますね。

 流れは来ていると思っていますし、この流れは変えられないと思っています。日本の場合は特に過去に成長できなかったこともあるし、少子高齢化など大きな課題もあって沸点が近づいていますので、他国よりも早く新しい価値創造のしくみが作れるのではないかと思っています。今あるインキュベーションだとかアクセラレーションだとか、スタートアップエコノミーのほとんどは米国から来ているわけですが、それが必ずしも美しくはない。

 情報格差の中に出来上がっている社会であって、一部の投資家と一部の起業家、儲かる人は儲かるけれど、ほとんどの人は儲からないという世界じゃないですか。確かに経済成長はしているかもしれないけど、それで良かったのか?という話だと思うのです。

 日本はみんなで栄えていこう、いいと思うものを実現していこうという国民性。それは悪いことではないと思います。今はやり方がわからなくなってしまっているので、みんなで抜け駆けしないでやろうよという、どちらかというとネガティブなマインドになっているけれど、そうじゃないポジティブな方向に転換できれば、日本が一気に変わって行くのではないかと思っています。

 皆で新しい産業をデザインし、良い未来を実現するために汗をかいていこうよというのは、一部の人が総取りするより美しく日本的だと思いますし、人々が望む未来はその方向ではないかと思っています。

「良い未来を実現するために汗をかいていこうよというのは、一部の人が総取りするより美しく日本的だと思う」
「良い未来を実現するために汗をかいていこうよというのは、一部の人が総取りするより美しく日本的だと思う」

 会社の立ち上げにあたっても、最初はnoteに構想を書いてSNSで発信して、それに対してさまざまな方がアドバイスをくださったという経緯もありますし、またこの構想を発表してからも、すでに老若男女いろいろな人や企業から、本当にたくさんのコンタクトをいただいています。やはりこういう取り組みを皆も望んでいたのだと感じますし、実際に毎日のように新しいメンバーが話を聞きに来て、ミーティングしているような状況です。

――2019年内に7つの産業をスタートさせる計画ということですが、今後のプランを教えてください。たとえば成長領域はどのように選んでいくのでしょうか。

 そこがまさにフレームワークの重要な部分だと思っていて、もう少し体系化していきたいと思っているところです。たとえばプラットフォームがあってアプリケーションがない分野、あるいはアプリケーションがあってプラットフォームがない分野など、産業化していく可能性があるけれど順序がうまくいっていない、あるいはコーディネーションが足りてない分野に対してアプローチしていきたいと思っています。

 どんなアプリケーションがあったらプラットフォームが生きるのか、どんなアプリケーション事業からプラットフォームのネタを持ってくるのか、そういうノウハウというか事例が積み重なっていけば、新しい産業を作るなんて、今は夢物語に聞こえるかもしれませんが、「ああなるほど、産業を作るってそうだよね」って理解されるようになるのではないかと思っています。

――8月1日にVAIOのチーフイノベーションオフィサー(CINO)への就任が発表されました。VAIOのCINO就任とSUNDREDでの取り組みはどのように関係しているのでしょうか。SUNDREDの取り組みだけでも相当なチャレンジのように思いますが、VAIOの業務とどう両立させていくのでしょうか。

 “会社”で区切ると一見複雑に見えますが、自分のやりたいことは、本当はとてもシンプルですべてつながっているんです。成長領域にリソースを集約して新産業を共創していく仕組みをつくり、実際の新産業共創を通じた経済成長と“実現すべき未来”を実現すること。それに加えてこの新しい時代の価値創造のパラダイムにおいて自在に活躍していく人材を育成し、同時に彼らが存分に活躍できる場を提供していくこと。これだけ。これしかありません。

 ハードウェアは多くの新産業の領域においても欠かせないパートですし、既にロボットやドローン等多くの領域においても活用されているVAIOのケイパビリティとアセットがもっとオープンにフレキシブルに活用されるようになってくれば、もっと大きな新産業の可能性が見えてくると思っています。日本の産業の一丁目一番地である“ものづくり”の強みは、実は今でも世界に誇れるもので、活用の仕方次第でいくらでも輝かせていくことができるのは、これまでの経験からも検証済みですから。

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