来店、書面、対面と手間と時間を要するアナログのステップが必要だった不動産の賃貸契約が変わろうとしている。国土交通省は、書面による交付を義務付けていた「重要事項説明」の電磁的方法による交付を認める社会実験を10月にスタート。契約時に不動産会社の店頭に訪れるステップをなくし、オンライン上で完結する環境整備を進める。
2017年に運用を開始したIT重説だが、今回大きく動き出した背景には、電子契約サービスの普及がある。電子契約サービス「クラウドサイン」を2015年に開始し、証券や金融、EC業界などで、すでに多くの実績を持つ弁護士ドットコム 取締役クラウドサイン事業長の橘大地氏に、IT重説と電子契約サービスの関係性や、賃貸契約の電子化がもたらす、不動産業界の変化などについて聞いた。
現在の不動産における賃貸契約は、内見時と契約時の少なくとも2回、不動産会社の店頭に訪れる必要があります。引越し先が今の自宅や職場に近ければ別ですが、2回の来店時間を確保するために、会社を休んだり、休日をつぶしたりと、お客様は思わぬ負担を抱えています。
こうした現状に比べ、もっと利便性の高い不動産仲介ができるように考え、開始されたのがIT重説です。しかし重要事項説明を、パソコンやテレビなどのオンラインを介して受けられても、最終的に契約の書類を記入するために来店しなければならず、これだけでは、来店回数は減りません。この書類の記入部分をデジタル化し、来店回数を減らすために必要なのが、クラウドサインをはじめとする電子契約サービスです。
――契約時の書類記入もオンライン上でできるということですね。クラウドサインは、ウェブ完結型の電子契約サービスです。今まで使っていた紙と印鑑をクラウドに置き換え、すべての契約作業をパソコンだけで完結できます。クラウドサイン上で押印もでき、収入印紙も不要。発注書、請書、納品書、検収書、請求書、領収書などにも活用されています。
オンラインで完結するため、お客様は契約書を記入するために来店する必要がなくなります。今までは、大阪から東京への引っ越しなど、遠隔地でも契約書の署名や保証審査のために再度訪店する必要がありました。IT重説と電子契約サービスが普及すれば、この2度目の訪店の必要がなくなります。これは、日本全体の業務生産性向上にもつながると思っています。
――お客様もそうですが、不動産仲介会社の業務も変わりそうですね。店舗も大きく変わると思います。今までは宅建士の資格を持ったスタッフが店舗内に常駐している必要がありました。しかし、IT重説が本格始動すれば、オンラインで働けますから、自宅から仕事をすることも可能です。さらに、店舗の近くにいる必要がなくなりますから、地方に専用のコールセンターを設けてもいい。ネットがつながる環境さえ確保できればよくなりますから、さまざまな働き方改革がなされます。
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