非侵襲的方法は脳の活動を読み取れるだけでなく、脳の活動を活性化させることもできる。非侵襲的方法の方が容易だが、新たなブレイクスルーには、脳内のより深いところにあるニューロンとのコミュニケーションの可能性があるとHe氏は語った。
Neuralinkの方法が機能するとしても、すぐにフランス語を話す能力をダウンロードできるようになるわけではない。同社の最初の目標はかなり野心的なものだし、Neuralinkの信号を脳が理解するよう訓練するのは簡単ではないと、同社の共同創業者で社長のMax Hodak氏は語った。「学習には時間がかかる。タッチタイピングやピアノ演奏を習得するようなものだ」という。
著者名が「Elon MuskとNeuralink」となっている研究論文(査読付きの専門誌に掲載されているものではない)の中で、Neuralinkはネズミを使った技術利用の進歩を紹介した。あるケースでは、導線をネズミの脳に埋め、それをUSB-Cポートに接続することで、センサーのデータをモニタリングした。「このシステムが最先端の研究プラットフォームとしての機能を果たし、完全に移植可能な人間向けBMIに向けたプロトタイプになった」と論文に書かれている。
Neuralinkのアプローチでは、太さが人間の毛髪の4分の1のスレッドをロボットが脳に挿入する。「スレッドのサイズはニューロンと同じだ。脳に何かを刺すなら、小さい方がいいだろう。例えば既に脳内にあるものと同じくらいのサイズとか」とMusk氏は語った。
1024本のスレッドの束が小型チップに接続し、そのうちの最大10本が人間の皮下に埋め込まれる。各スレッドは耳の後ろに装着した着脱可能、アップグレード可能な端末と無線接続する。「チップへのインタフェースは無線なので、頭からワイヤーが突き出したりはしない。基本的にはチップはBluetooth経由でスマートフォンと接続する」とMusk氏は語った。
チップの専有面積は直径2mmほどで、埋め込む際に一時的に8mmの穴を開け、設置後にこの穴を塞ぐとMusk氏は説明した。同社にとっての課題の1つは、「何十年も」持続するスレッドを開発することだが、「適切なコーティング素材をみつけるのは難しい科学的な問題だ」。人間の脳内は異物にとって適した環境ではない。
Neuralinkは、スレッドが脳内で起きていることをニューロンから「読み取る」だけでなく、脳にシグナルを「書き込む」ように設計している。「この技術を使って、脳内に触覚や視覚を復元できる」とNeuralinkの科学者、Philip Sabes氏は語った。
Sabes氏によると、脳の運動制御部位への接続も、脳障害を持つ人を助けるという。
Sabes氏は「人は走ったり、踊ったり、カンフーの動きを想像したりすることで」、デジタル空間の3DアバターをNeuralinkの接続経由でコントロールできると語った。「脊髄神経や筋肉の刺激のための技術が十分進歩すれば、最終的には自分自身の体をコントロールするためにも使えるようになるかもしれない」(Sabes氏)
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